十一、旅たち
エンセスター村は、十五歳を過ぎたら出ないといけないの。
でも、年を取って、心が童心に戻ったら、また入れるんだって。
「その時に、お前さんがここに戻ってきたかったら、迎えに行ってあげるよ」
とオリビアの言葉ね。
私、昨日、十五歳になったわ。
今日をもって、エンセスター村のオリビアさんの家を出て旅人になるの。
私は、マリアママから歌を承継されているから、渡す相手に出会うまで旅を続けないといけないんだって。折角だから、周辺七か国ぐらいはまわるつもり。まずは隣国ランネルに行くわ。
荷物は肩掛けカバンに着替えが一日分。
っていっても、私には薬草畑がついてるから、荷物なんて手持ちで持つ必要はないんだけどね。
昨日の夜は、オリビアさんたちが料理を持ち寄ってくれて誕生日を祝ってくれたの。
オリビアさんのふかふかの白パンに、エイブリーさんの黄金スープ、セオドラさんのカラフルな可愛い花模様のサラダ。三人で作ってくれたオードブルに、シャーロットさんが作ってくれたイチゴのケーキ。
シャーロットさんも料理好きの人たちに囲まれて、料理に目覚めたみたい。デザート作りに日々励んでるわ。
私は、私で、薬草畑でとれた花や草からハーブティを作るのにはまってるの。
カミツレ、カモミール、レモングラスにはとむぎなど、まだまだ種類は少ないけど、自分で飲んで試してる。
「おい。アンナ、俺も一緒に行ってやるぞ」
誕生日のお祝いの会の途中に、久しぶりにリアムがマテオさんと一緒に現れたの。
「おい。アンナ、旅に出るんだってな。 一人では不安だろうから、俺が護衛について行ってやる」
二年ぶりに会うリアムは背が随分のびていたけど、まだ声変わりをしていない少年の声で勇ましい事を言うの。突っ込みたい気持ちがいっぱいあたんだけど、
「反対だろう。お前が着いてきて貰いたいんだろうが」
マテオさんに先につっこまれちゃった。
「お嬢さん、この男はね。妹を可愛がる余り、父親にうざがられて追い出された男です」
リアムって、マテオさんに揶揄われてもまったく気にしてなくて、真顔で答えてる。
「親父って、心狭いよな。 ハルが親父より俺に懐いてるからって焼きもちやきやがってさ、 武者修行に行けって追い出されたんだ。グラハム家の男は十三歳になると武者修行に行く習わしがあるって言いだしてさ」
「妹さん、ハルさんっていうんだ」
「おうよ、とてもプリティな二歳児だ」
「お母様の膝の主ね」
「ああ。だが、母ちゃんだけじゃないぞ。 マーリンもカンナもみんなハルにはメロメロだ。ハルは俺にメロメロなんだけどな。まぁ、俺が強い男になるのは当然だから、追い出されてやったんだけどな」
マーリンさんもカンナさんもリアムのお母様の侍女なんだって。リアムって言葉遣いが乱暴だからそうは見えないけど、結構裕福な家の子供みたい。
「付き合わされる私としては、迷惑なんだけどね」
ってぼやいているマテオさん自体、学者然としていて、雇うにはお金がかかりそう。
「アンナ、俺はこの二年間、剣の修行を頑張ったんだ。心強いだろう」
見ると、腰に二年前にはなかった剣が差してある。
「お嬢さん、この男は貴女の薬草畑が目当てです」
リアムは、胸を張って話していたものの、すかさずマテオさんに秘密をばらされてあたふたしている。
「何で言うんだよ」
「そうなの?」
「おうよ。これからは冒険の旅だからよ。荷物は軽い方が良い。アンナ、お前の薬草畑は、爺ちゃんに頼んで少し大きくしてもらったからよ。俺の荷物も置かせてくれ」
「セオドラさん 私には誰にも言うなって言ってたのに」
「良いじゃないか。 リアムだし」
セオドラさんは笑ってる。
「言っておくけど、黄色いモグラには許可を取ったぞ」
「脅したんでしょうが」
「だって、あのモグラ、美しい物でないとダメ何て言うからさ、ブンを召喚しただけさ」
「ブン?」
「ああ。親父の友だちが飼ってた隼の名前さ。とても奇麗なんだぜ」
「こら、リアム。 それは聞いてないぞ。 わしの可愛い精霊を虐めるのは、たとえお前でも許されんぞ」
「ごめん。 爺ちゃん もう二度としないよ」
この時の会話は、リアムがセオドラさんに叱られることで終わったんだけど、リアムが私の旅についてくることになったの。リアムの旅の予定もアラランド帝国の周辺七か国を周る事なんだって。そこで会わないといけない人たちがいるんだとか。
ブンも紹介して貰ったの。そんなに大きくはなくて、私の右腕でも乗せれるくらい。でも、爪は鋭いから専用の手袋をしないといけないの。私も手袋をして、乗せる真似をしたけれど、残念ながら乗ってくれなかったわ。
「当り前だ。昔から知り合いの俺でさえ一ヶ月練習して、やっと乗ってくれるようになったんだから」
てリアムが胸を張って、見せ付けてくるの。ブンは我関せずという顔をしていたけど、そういう太々しい顔も可愛いわよね。
ブンは自分で餌を捕まえる事が出来るから、ご飯の心配はしなくてもいいみたい。人の言葉も分かってるようで、リアムの言う事はよく聞くの。これ以上もない相棒よね。
そうやって、私はエンセスター村に別れを告げたわ。
エンセスター村の入り口でオリビアさんに送ってもらったら、あの日、マリアママと一緒に入れなかったランネル国側の国境だった。
エスト山脈の上から、故郷を見下ろして、私は故郷に別れを告げたの。
第一章 アマウス国とケセラと竜神との約束 (終)
読んでいただきありがとうございました。
第一章完結です。 第二章以降は、書き溜めを終了し次第再開しますので、一先ず完結設定をします。
また、読んでいただければ幸いです。
本当にありがとうございました。




