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 この一か月、特別室でも平民向けのメニューを出してもらったりしていたから、この食事自体は久しぶりではない。しかし食べる場所が違うからか、すごく久しぶりのように感じられた。

 私は何となくBランチ、クレアはAランチ。アドレアン様にはオススメを聞かれたので私と同じBランチを勧めてみた。こんなところ(食堂)でまで腕を組んで、同じものを注文して食べている私達はさぞ仲がよさそうに見えることだろう。一歩間違えればバカップルだ。

 そんな私達を見て、食堂中がざわついている。主な理由は普段見かけることのないアドレアン様がここで食べているからだが、私達の様子を見て驚いている人もいるのだろう。泣きそうな顔をしている女子生徒もいれば、私を射殺しそうな目で見てくる女子生徒もいた。



 そういえばこのアドレアン・カタル様という人は平民女子から圧倒的な人気があった、ということを思い出す。貴族令嬢からももちろん人気なのだが、平民女子の方がファンに多いと思う。それが武術大会での活躍ぶりから平民女子と言わず平民男性にまで人気が広がった。やはり騎士団長子息という肩書もあるのだろう。騎士様達は街の治安を守ってくれる身近な存在だ。そこに王家に仕えるか、貴族に仕えるか等の違いは存在するが、守られる側の感覚としては些細な違いだ。しかも給料は良くてたくましい。どうしたって人気は出る。レイナルド殿下は言わずもがな王子様なので眺める分にはいいが、その先を求めるのはあまりに現実的ではない。だがお兄様とかが平民女子からそこまで人気じゃないことを鑑みるにやっぱり騎士様ブランドが強いのだろう。

 お兄様もアドレアン様も同じ侯爵子息だ。平民と結婚しようとするにはだいぶ身分が高い。だからこそお兄様は遠巻きにされている部分もあるようなのだが、アドレアン様は違う。()()()()()狙われている。普通に考えれば無理だと諦めてしまいそうなところ、そんなことになっているのはやはりアドレアン様が騎士団長子息だからだろう。

 巷では多くの恋愛小説が出版されている。つまり私達が好んで読んでいるアレである。中でも騎士様モノは人気が高い。特に平民には王子様との話より騎士様との話が人気があるとヘンリー様が言っていた。無理もない。王子様相手なんて言うのは、現実的にはただの夢物語だ。出会うことだってまずないし、話しかけることだってできない。一生分の運を注ぎ込んだんじゃないかってくらいに運よく恋人になれたとしたって、結婚は難しい。身分の問題もあれば、教養や血筋の問題も生じてくる。結婚できたとしても側室どまりだ。

 しかも王はここ数代側室を設けていない。数代前の王が多くの側室や愛人を持っており、崩御した時にその多くの息子達の間で壮絶な世継ぎ争いが起こったためだ。多くの犠牲を払い、ようやくその諍いが収まったかと思えば今度は貴族達が主体となって、王があちこちに作っていた愛人達の子、つまり自称王のご落胤達を旗印にクーデターを起こし始め、なんとか治めたものの王国中が血の海になるという惨状だった。せめてもの救いと言えるのが、この戦いを勝ち抜き次代の王となったのが王妃腹の()()()王子だったということだ。自称ご落胤なんかが勝っていた日には擁護していた貴族の傀儡にされ、国を乗っ取られていただろう。だから現在は王は側室をとらなくなっている。もちろん望めば側室をとることは可能だが、あの事件以降王に子どもができなかった場合には血筋の明らかな親縁者から王を決める、と法律が作られている。そういう経緯で我が国では王家も高位貴族もあまり多くの子を持たないのが主流だ。

 唯一の例外は辺境伯くらいだろう。辺境伯はその責務上子ども一人ではまわせないのだ。せめて二人。できれば三人以上が好ましい。一人は領地の管理、もう一人は辺境騎士を率いる立場に、それ以降の子は領地を守護する騎士になったり、辺境騎士になったりして二人を補佐する。有事の際のスペアでもある。

 辺境伯家は古く王弟たる王子が臣籍降下してできた、由緒正しい王家の血筋である。今となってはだいぶ昔の話であるが、それでも王女の降嫁先にも選ばれるくらいには王家と縁が深い。王子が生まれなかった場合、辺境伯家から次代の王を選ぶ可能性もある。そんな家系だ。

 ともかく、レイナルド殿下との結婚なんてそんな夢物語に地に足をつけてしっかりと現実を生きている平民女子が憧れることはそうそうないのだ。

 しかし相手が騎士様となれば話は別である。なにせまず出会いの機会が多い。王城勤めの高位の騎士、高位貴族出身の騎士であったってそれは例外ではない。必要があれば街に出てくるし、遠征最中とかに出会うことだってある。そのうえ騎士は成果を上げれば国王陛下から直々に褒賞を与えられることだってある。その時に願い出れば、高位貴族出身でなおかつ高位の騎士であっても平民と結婚することは夢じゃない。しかも過去に例がなかったわけでもない。となれば、平民女子から騎士様達が人気になるのも当然である。





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