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お兄様から聞いていたアドレアン様の誕生日が迫ってきた。ここで問題が発覚した。この誕生日プレゼント、アドレアン様にどう渡そう。学園で直接手渡すべきか、屋敷に送るべきか。
アドレアン様の誕生日はちょうど学園の休日にあたるので、屋敷に送ってもいいかもしれない。手渡すとなると小説の数も多く、重いしかさばる。それに手作りのブックカバーやしおりを顔を見て渡すのは、ちょっと恥ずかしい。私は誕生日プレゼントはカタル侯爵家の屋敷に送ることにした。今回のプレゼントに関しては、お母様に相談もしているし、知られているのでこそこそする必要はない。正面からカタル家に送ってもらうことにした。当日に届けてもらえるように、プレゼントをレベッカではなく執事に託した。
アドレアン様の誕生日はおそらくパーティーのようなものは開いていないと思う。なぜならばその日はレイナルド殿下とのお茶会の予定が入っているからだ。
前回約束したように、オレンジや紫が差し色として散りばめられた愛らしいデザインのワンピースが送られてきた。そのデザインに合わせて室内の装飾を考える。お母様の許可が下りたので、サロンのカーテンやじゅうたんなどもそれにふさわしい色合いのものに変えることにした。
カーテンをオレンジのものに、じゅうたんを紫をベースにしたものに変える。テーブルクロスは真っ黒いものを用意させた。ランチョンマットはオレンジと紫だ。食器は白いものを選んだが、シンプルなものではなくどこか豪奢なつくりのものにした。
当日に出してもらうお茶やお菓子、セイボリーにもこだわった。お茶はメープルシロップを入れたミルクティー。お菓子は精霊や野菜をモチーフにしたデザインにして、甘みのある野菜のペーストを使ってもらうことにした。スコーンに使うジャムは野菜のジャムだし、クリームも野菜のピュレを混ぜ込んでもらう。セイボリーでもお菓子に使ったのと同じ野菜を、こちらは甘みをださずに使ってもらうことにした。サンドウィッチにも野菜のペーストが塗られているし、サンドウィッチに使うパンは白いパンではなく穀物を混ぜた茶色いパンにしてもらった。
なかなかいい出来ではないだろうか。当日が楽しみだ。
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お茶会当日、私はレイナルド殿下から贈られたワンピースに着替えてレイナルド殿下の到着を今か今かと待ちわびていた。
今日のワンピースは白いAラインのシルエットに胸元から斜めに切り替えが入っており、切り替えの腰の部分からフレアスカートのように広がっている。切り替えごとに布の色も変わって、ベースの白の上に黒、オレンジ、紫の色が交互に配置されている。アクセサリーは野菜のモチーフのついたチョーカー、バングル、ヘッドドレスだ。耳飾りだけは青い薔薇だけれど。
ヘッドドレスに合わせて髪はサイドを編み込むだけにしておろしてもらった。サイドを編みこんでいるので、耳の青い薔薇が目立つ。メイクもオレンジのチークにと紫のアイシャドウ、黒のアイラインといつもの私とは違った装いだ。
先ほど顔を合わせたお兄様からはいつものように、妖精のようだと褒めていただいた。今日の姿を絵姿に残したいとも言われ、内心結構嬉しかった。いつもはしない格好をしているので、私も今日のファッションは実は気に入っている。早くレイナルド殿下に見てもらいたいと気持ちがはやるくらいだ。
(本当に絵姿に残してもらおうかな。)
ふと思った。絵姿に残してもらってそれをアドレアン様に送りたい気持ちがふっと湧いてきたのだ。それに普段はこんな格好しないし。今日だけで終わりにしてしまうのはなんとなくもったいない気がした。
絵姿のことを相談しにお母様に会いに行くか悩んでいるところに、レイナルド殿下の来訪を告げる報せが届いた。普段だったら玄関ホールまでお出迎えに行って一緒にサロンに向かうところだが、今日はせっかくめかしこんでいるので驚かせたい。だから今日のお出迎えはお母様と使用人達に任せて、直接サロンに向かうことにした。
レイナルド殿下がサロンに着いた頃を見計らってサロンに向かう。レイナルド殿下がどんな反応をくれるか考えると、胸がドキドキしてきて顔がにやけてしまう。サロンの扉の前に着き、深呼吸をする。ノックをすると中から「はい。」と返事があった。静かにドアを開け中へ入ると優雅にカーテシーをした。
「レイナルド殿下。本日はよくぞお越しくださいました。」
「ごきげんよう、ルーチェリア嬢。今日は玄関ホールに君の姿が見えなかったから、少し期待していたんだ。どんな姿で私を驚かせてくれるんだろうって。
可愛いよ。今日の君はすごく愛らしい。いたずらな妖精のようだね。こんな妖精にだったら、いくらでもいたずらされてみたいな。」
レイナルド殿下は野菜より、メープルシロップより甘い笑顔で私を見つめて綺麗なウインクをくれた。




