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ハミルトンのため息2

「今から騎士団にいくんだったね。」


ひとしきりディノス男爵の一件を報告し終わると、ラルフローレンが話題をふった。


「はい。一応、警備の強化について、相談を。」

「そうだね。勘違いした貴族が、わがまま勝手にふるまうのは見苦しい。何か策が考えられるといいね。」


(こういうことが言えるから、離れられないんだよなあ。)

ラルフローレンは、貴族や王族のあり方について、ブレがない。

自分が飛び抜けて優秀だから、言えることだとしても。


怠けない、過信しないこの王子には、隙がない。

一方で、王子の美学に反する「見苦しい」相手には本当に容赦がない。


(たぶん、俺が動く本当の理由もバレてるよなあ。)


フィリクスの存在も、ラルフローレンには知られている。当然、婚約者リンダのことも知っているだろうし、彼女のために、フィリクスがハミルトンにいろいろ頼んだこともお見通しだろう。


「ああ、頼みに行くなら、あと30分ほどあとにするといいよ。副団長の休憩時間だから。」

「・・はい。そうします。」


(これは、何かしら話が付いてるよな。)


ラルフローレンがこういう直接的な誘導のしかたをする時は、100%従った方がいい。

ハミルトンのこの勘の良さが、ラルフローレンに重宝される大きな理由でもあった。


部屋を出ようとした時。


「あ、ハミルトン。君は王宮書庫に行ったことはあるの?」

振り返ると、ラルフローレンが真面目な顔をしていた。

「・・昔は何度か。今はほとんど行きませんが。」


「そうか。・・最近、面白い司書見習いが入ったらしい。もし、行くことがあったら、どんな()なのか、聞かせてくれる?」


「分かりました。騎士団との調整で書庫にも足を運ぶことになるでしょうから、またご報告します。」


(書庫の・・司書見習い?)

王宮書庫に勤める司書は二人いたはずだ。さらに入った見習い、ということは、少なくともフィリクスの婚約者であるリンダではない。


(これは、また、フィリクスからの情報収集だ。)


フィリクスは、平民の視点でしか分からない、色々な情報を入れてくれる。


(最近はリンダさんの話ばかりだけどな。そういえば・・)


ディノス男爵に絡まれた後輩を、リンダが助けた話があった。あの時は男爵の不祥事に関する情報がメインだったのであまり気にしていなかったのだが。


(騎士団との調整がうまくいけば、その報告も兼ねてフィリクスと飲みにでも行くか。)


またどうせ、可愛い婚約者ののろけ話を聞かされるのだが、弟が幸せそうにしているのは、悪くない。


もうすぐ、正式な結婚式なのだ。

リンダが心置きなく、仕事を引き継ぐためにも、もう一仕事をするべく、ハミルトンは気合いをいれて訓練場に向かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



30分後、騎士団を訪れると、予想通り、副団長のヴェゼルが対応してくれた。

彼は、ハミルトンやラルフローレンの学生時代に、派遣講師として教壇に立っていた。

頭が上がらない一方、話を通すときに頼りになる人物だ。


貴族から平民まで幅広く門戸が開かれており、なおかつ実力主義の騎士団の中で、伯爵家の次男でありながら剣のうでも抜群のヴェゼルは、もう何年も副団長の座にいる。

彼が力になってくれれば、これほど力強いことはない。

休憩時間を正確に把握し、引き合わせてくれたことからも、ラルフローレンの書庫への関心の高さが伺えた。


「久しぶりだな。ハミルトン。元気か?」

ヴェゼルは人好きのする笑顔で応じてくれた。

「はい。なんとか勤めています。ヴェゼル先生もお元気そうですね。」

(全く、この人はいくつなんだか。・・ラルフローレン殿下といい、なんでこういう無駄に美形の男が存在するんだか。)


ワイルド系ではあるが、整った容姿のヴェゼルは、学園でも大いに人気をさらっていた。

男子学生の中には、それだけで嫌っていた生徒がいたくらいだ。


(俺なんかはここまでくると一周回って許すしかなくなるけどな。)


しかもこの男は、自他ともに認める愛妻家で、そこがまた、憎たらしい部分でもあった。


「まあな。で?何か依頼があると聞いたんだが。」


休憩時間は限られている。

ハミルトンは早速、現在の王宮書庫の状況と、ディノス男爵の事件のことを切り出した。


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