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幕間 スフィアと、アウラの反省会

「今日は疲れたー!!」

なんだか盛りだくさんの一日をようやく終えて、ベッドにたおれこむスフィア。


『ねえ、僕、役に立った? ほめて、ほめて!』

ネックレスからするりと登場したアウラの額に口づけて、スフィアはそのままアウラを優しく抱き締める。

「ありがとう、アウラ。すごく助かったわ。」


リンダにいろいろバレてしまい、ハラハラしたが、それよりもフィリクスとリンダの仲が深まったことを素直に良かった、と思う。


(リンダさん、見逃してくれたし。)


『しかし、まさかフィリクスさんの思い出の本が、『リリーの詩集』だったなんてね。』

「ええ。リリーったらイタズラをしてしまったのよ。」


『恋の精霊、リリー』は、あらゆる恋を愛している。

幸せな思い合う恋も、熱く燃えるような刹那的な恋も、叶わない片想いも、幼い初恋も。

幼かったフィリクスを『精霊の隠し部屋』に招待し、『リリーの詩集』を見せて、彼の初恋を堪能したのだ。

あの詩集の表紙にある女性の挿し絵には、魔法がかけられている。


「幼い男の子って、やっぱりお母様に恋をしちゃうのかな。」


そう。

『リリーの詩集』の挿し絵にかけられたのは、『恋してしまう、理想の女性がうかぶ』魔法。


幼いフィリクスにとって、それは早くに亡くした母の面影だった。

フィリクスは焦がれる思いでその挿し絵を眺めていたはずだ。


『そうかもしれないね。でも、人は成長する。今のフィリクスさんは、リンダさんに恋をしているよ。』


アウラから、隠し部屋でのやり取りは聞いた。

なんだか二人の秘密を覗いてしまったような罪悪感はあるが、やっぱり安心した。


「そうね。幸せそうだったなら、リリーも満足したんじゃないかしら。」


精霊たちは気まぐれで、自分の望みに忠実だ。


幸せな恋も大好きなリリーのことだ。きっと二人を優しく見守ってくれるだろう。


『スフィア。君の番はいつ?』


アウラは無邪気に聞いてくる。

(私の番・・ねえ。)


「出会えると思う?『彼』に。」


『ふふふ。』


スフィアの問いに、アウラが笑う。


『起きる出来事は、ほとんどが『必然』なんだよ、スフィア。』


腕の中から見上げるアウラの目がキラキラと輝く。


『君がここに帰ってきたことには、必ず意味があるんだ。今度こそ君にも、幸せな結末を。』


本当は、スフィアも少しだけ、期待している。

もしかしたら、今度は。


(でも、今は・・。)

スフィアの物語が動き出すのは、まだもう少し先のお話だ。

今は心地よい疲れの中、誘われるままに眠りに落ちよう。


そんなスフィアの様子を察したアウラは、スフィアの腕をするりと抜け、寄り添うように丸くなる。

その小さな温もりに、幸せな眠りに落ちる、スフィアだった。

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