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シェリルの願い事(シェリル視点)2

それは、金色の時計だった。

「きれい。だれかのおとしもの?」

落とし物なら、スフィアに届けなければ。

そう思って、その時計に触れた瞬間。


『触っちゃだめーー!』

だれかの声がして、その後景色がぐるんと一回転した。


◇◇◇◇◇◇◇◇


その場所は、一見先程と変わらないように見えた。

けれど、なんだか色んなものが真新しくて、物の配置も微妙に違う。


(おうじさまと、おひめさま?)


そこには、二人の人物。

絵本に良く出てくる王子様とお姫様にみえた。


「やっとできたわね。私たちのお城が。」

「ああ。これで、願いが叶ったよ。」


(おしろ?・・ねがい!!)


二人はとても幸せそうに見えた。


王子様がお姫様に膝をつく。

(ふたりはいつまでもしあわせにすごしました。)


けれど、それは、シェリルが想像した求婚の場面ではない。


そのままふらりと倒れ込む王子様をお姫様が支えて抱きしめた。


「いつか・・。」

お姫様の呟くような声が聞こえる。

「いつか・・必ずまた、巡り合えるわ。その時は、今度こそ・・。」


そのままお姫様が、王子様に優しく口付ける。

二人の体は光に包まれて。


お姫様は、そのまま消えてしまった。


残された王子様の頬を涙が伝う。

「メティ・・・・ラ。」


なんだろう。お腹のあたりがむずむずする。


(なんで、こんなにかなしいの?)


自分が泣いているのに気づいた直後、景色がまた一回転して、目を開けたとき飛び込んできたのは、白い髪の毛の、男の子の顔だった。


◇◇◇◇◇◇◇◇


なぜか分からないけど、そのお兄さんは突然倒れたシェリルを抱き止めて、介抱してくれていたらしい。

「おにいさん、だあれ?」


「・・えっと。ア・・アッシュ、だよ。」


ちょっと視線をずらしながら名乗る姿に、シェリルは

(恥ずかしがり屋さんなのかな?)

と、深入りしないことにする。


「アッシュお兄ちゃん、シェリルを助けてくれて、ありがとうございました。」


丁寧に礼を言うと、


「スフィアが言ってたのはこれか!?これはたしかにおちる・・。」


とぶつぶつ言っていたアッシュだが、優しい笑みで答えてくれた。


「目が覚めて良かった。びっくりしたよ。歩ける?」


「うん!だいじょうぶみたい。」


アッシュは少し迷う素振りを見せたあと、シェリルを見つめた。

「やっぱり心配だ。スフィアお姉ちゃんのところに連れていくよ。」


「!?」


アッシュがシェリルを抱き上げる。

父親以外からのお姫様抱っこに驚いたが、アッシュは意外にも父親と同じくらい安心感があってさらにびっくりした。


「あのさ。さっき何を見たの?・・泣いてた。」


聞かれてシェリルは考える。

あれは一体なんだったのだろう。


答えは分からない。

分からないが、なんだかとても悲しくて、シェリルは何も言わずにアッシュのシャツをぎゅっとにぎった。


◇◇◇◇◇◇◇◇


その夜。

「おかあさん。いっしょにねていい?」

悲しい気持ちが消えてくれなくて、寂しくなって。

シェリルは母のベッドに潜り込んだ。


母はシェリルを抱き締めてくれる。

でも、その腕に力はない。


「シェリル。ごめんね。お母さん、なかなか治らなくて。いっぱい頑張ってるのよね。ごめんね。」

黙って母にくっつくと、かすれた悲しい声で母が言う。


「ううん。だいじょうぶだよ。しょこはたのしい。・・おかあさんもげんきになったら、いっしょにいきたいの。」

「そう。良かった・・。」

「おかあさん、だいすき。」

「お母さんも大好きよ、シェリル。」


母がシェリルの髪を撫でる。

その力が儚すぎて、今日みたお姫様のように消えてしまうのではないかと不安になる。

(おねがい、かみさま。おかあさんをつれていかないで。)


母にぎゅっとだきつきながら、シェリルは不安になって、涙が出てしまう。


母の寝息を聞きながら、シェリルは母に気づかれないように、袖で涙をぬぐった。

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