第一章16 「都市外戦」
スノーはベルの力を借り、家屋の上を飛び跳ねて移動していた。膝をを曲げて力を溜め、屋根を蹴り上げ一気に跳躍。
一度の跳躍で数軒の家を飛び越し、別の屋根に着地。その勢いを衰えさせることなく、そのまま跳躍を繰り返す。
「……」
神妙な面持ちをして、風を切りながら凄まじい速度で移動しているスノーの胸中を占めるのは、今向かっている戦場の事ではなく、黒髪の少年の事だった。
都市全域に警報が流れた時に、レンに注意を向けていなかったのが悔やまれ、スノーは唇を噛む。
警報の音と指示に気を取られ、一瞬とはいえレンから目を離してしまった。
その後、気づいた時には、彼は既にうずくまっていて……。いったいレンの身に何が起こったのか、分からない。
そうして拳を強く握りしめるスノーの頬に、柔らかく毛深い物が触れた。
「そんな表情をしてたら、折角の可愛い顔が台無しだよ。彼の事が気になるのは分かるけど、今はこっちに集中した方がいいんじゃないかな?」
そう言いながら、スノーの事をリラックスさせようと、彼女の頬をふにふにとつついたのは、銀色の狼精霊。
ベルは頭の上に移動して、そこからスノーを覗き込む。スノーの瞳に逆さに映りこむ小いさな狼の顔。
肌に触れるフワフワの体毛がくすぐったいが、ベルはそのことを気にかけず微かに鼻息を立て、
「ほら、肩にも力が入ってる。もっと力みを取らないと、肝心な時にやられちゃうよ」
「え!? そんなに力入ってた?」
「うん。ほら、吸ってー、吐いてー」
いきなり深呼吸を促してきたベルに、スノーは促されるまま息を吸いこみ、吐いていく。
屋根の上を駆けるエルフと、そのエルフの頭に張り付く小狼で深呼吸を繰り返す。
そうして、スノーの肩からは自然と力が抜けていき、その桜色の唇は少しほころんでいた。
ベルのおかげで自覚できていなかった力は抜け、今自分が一番考えなければならない事へと意識の切り替えもできた。
「ん、ありがとうベル」
「このぐらい普通だよ。それに……そろそろ着くみたいだしね」
顔を上げ、ベルは金の瞳を前に向ける。段々と近づいてきていた魔獣達の大合唱は、いまやハッキリと聞こえていた。
それは人に本能的な忌避感を抱かせ、一瞬とはいえ体を硬直させる。
しかし、スノーはその耳障りな砲声をものともせず、純白のローブの裾をはためかせて進んでいき、やがて都市の外壁の縁に足をかけた。
「凄い数だね、……これは、なかなかに厳しい状況じゃないか?」
「そうね、森の奥からもまだまだこっちに来ているみたいだし」
下に広がる光景を見て、スノーの頭の上に立つベルは現在の状況を端的に述べる。
都市を守る三枚の外壁の外側、密集した木々とその壁には距離があるが、森の木々をへし折り猛烈な勢いで行進する雑多な魔獣達がいる。
その数、規模共に大きく、軽く二百は下らないだろう。対する人間の数はその半分程度。壁の上という安全地帯から弓を射る人もいるが、その壁も魔獣の攻撃を受け揺れている。
一目見て、切迫した状況だと分かるほど、戦っている人達には余裕がない。既に犠牲も出始めている。
そのベルの言葉に対して、スノーは高い位置がゆえに見えた、奥の方から迫る魔獣を確認した。まだその数を増やす魔獣。
数の有利も個々の力も、総じて防衛側に不利な状況。
スノーは見ず知らずの人が血を流している光景に悲痛な顔をしていたが、戦場に立つ覚悟を決めたように表情を引き締め、顔の横に頭を出しているベルに視線を送り、
「ベル、準備は良い?」
「もちろんさ、それじゃあひと暴れしようか」
牙を剥きだし、何とも好戦的な口上と笑みを浮かべたベルにスノーは苦笑いすると、そのまま外壁の上から跳ぶ。
前方にあった二枚の壁をあっという間に乗り越え、上空から地上に蔓延る魔獣に強襲を仕掛けた。
人数が足りず、対処が遅れていた地点に風の魔法を叩きこむ。高高度から放たれた四対の不可視の刃は、群れを切り刻み、魔獣の連携は一気に瓦解。
窮地に陥っていた冒険者は、何が起きたのか理解できないが、それでも九死に一生を得たと言わんばかりに安堵し、それから次の魔獣への対処を進めた。
「よし」
スノーは頷きながらそれを確認すると、空中で体を捻り方向転換。次々と魔法を放ち、魔獣に向かって一方的に攻撃を加えていく。
風が乱舞し、裂傷を生み出し、四肢をも切断する。地上で戦っている者を巻き込まないよう、個々に対象を絞って攻撃しているが、それでも瞬く間に魔獣の屍が積み上げられていった。
『フフ、昨日不発に終わった大魔法、ここで使わせてもらうよ』
スノーが地上で戦っている人に人知れず援護をする傍ら、ベルは大規模な殲滅魔法の準備を終えていた。
姿を見られないようにスノーの白髪に潜り込んだベルは、誰も人がいない森の入口付近、魔獣が出てくるあたりに一切の容赦なく極大の嵐をぶちこむ。
暴風が吹き荒れ、魔獣を根こそぎ周りの樹木ごと吹き飛ばし、森の入口を平にする。
土塊と砂埃がもうもうと巻き上がり、人の悲鳴と驚嘆の声が魔獣の鳴き声に混ざった。
その魔法の余波は、当然多くの二次被害を魔獣にもたらす。
宙を飛ぶ大きな木々、それらはこれから都市へと進行しようとしていた魔獣の頭上に降り注ぎ、小型、中型の個体はそのまま纏めて押しつぶされる。
魔獣達の悲鳴が響き渡るが、しかし土煙が晴れた時、それを上回る歓声が都市と森との間で上がった。
「うおおお! なんだあ今の!!」
「誰があんな魔法を使った!?」
「あの子だ! あの白いローブを着ている少女だ!」
「すげえ! 彼女がいればこのままいけるぞ!」
たった一人と一匹が戦場に加わっただけで、戦況は一気に逆転。緊迫していた空気すらもその風で吹き飛ばし、聖騎士と冒険者を活気づける。
一気呵成に攻め立てる冒険者達を横目に、風を緩衝材にして地面にふわりと着地したスノーは、踏みとどまることなく疾風のように駆けだした。
「――ふっ」
細身を低くし疾走するスノー。正面、猛然と突進してくるのは燃える猛牛。
鋭い角を突き出し、轢き殺そうとしてくるが、その突撃は無意味に終わる。
スノーは地を這うようにさらに姿勢を低くして、ミノタウロスの下に潜り込み突進を躱す。その状態で、身を上げる勢いと共に彼女の細い腕は唸りを上げた。
ミノタウロスの顎に直撃する掌底。重い一撃は顎骨を砕き、歯をへし折り、馬車よりも大きい巨躯が浮かび上がる。
「はあ!」
腹を晒したミノタウロスに、さらに追撃を加えるスノー。二本足で宙を仰ぐミノタウロスの胸に、跳び蹴りをお見舞いする。
魔獣相手に慈悲などない。強化された肉体から放たれる本気の襲撃は、厚い鉄板をも凹ませ、時には切断すらできる威力。
弧を描く足先は分厚い胸板にめり込み、吹き飛ばされ仰向けに倒れる赤気牛。
鈍重な音を立て、背から倒れこんだミノタウロスは、苦鳴の声を上げた。
地に足をつけたスノーは、倒したミノタウロスに接近。掌をミノタウロスに向けて、風の刃を首にめがけて一本飛ばす。
その刃は丸太ほどもある首を切り裂き、あっけなくその首は落とされた。
くるくると宙を回る頭部とどす黒い血しぶき余所に、スノーはミノタウロスの広い腹を踏みつける。
硬い毛皮の下に埋もれている肉が抉られ、太い骨がミシミシと軋む音をたてるほどの強い踏み込み。
文字通り、体がくの字に曲がる威力の死体蹴りで、再び上へと跳躍したスノー。空中に飛び上がり戦場を俯瞰できる上空から、もう一度風の刃を吹き下ろす。
直線状の透明な刃は、魔獣の頭蓋や胴をぶち抜き深紅の雨を降らせ、血の海が広がった。
「っ!」
その状態で再び援護が必要な場所を探し、そこに魔法を放とうとしたスノーだったが、急に自分の上に影ができたことに焦りの表情を浮かべ息を呑んだ。
上を見上げれば、十数体はいる半鳥半馬の魔獣――グリフォン。
さっきまでは見る影もなかったのに、いったい何処から湧いて出てきたのか。
空中での体の制御は出来るが、流石に空を自由に飛ぶことは出来ない。さらに言えば、スノーは下に意識を集中させていたので、グリフォンに対処できない。
宙に身を置き無防備な姿を晒しているスノーを、当然グリフォンの群れは見逃さなかった。
巨大な二組の翼を羽ばたかせ、突風を打ち付けてくる。都合十体から放たれる暴風。
その風はスノーを木の葉のように吹き飛ばし、錐揉み状態になって墜落されせられるのが目に浮かぶ。
だが――、
「ベル!」
『まかされた!』
それはスノーが一人だけだった場合だ。髪の中で待機していたベルは、スノーの呼びかけに応じて腕を突き出し、渦巻く風を生み出す。
その渦はグリフォンの風などたやすく飲み込み、逆に彼等のバランスを崩した。
宙でもがき苦しむグリフォンの群れ。大きな隙を晒した奴らに、ベルは過剰とも思える苛烈な魔法を放つ。
『風でボク達をどうにかしようだなんて、魔獣如きが百年早いわ! 風を司る精霊王をなめるな!』
再び渦状の風を生み出すベル。しかし、その魔法は先程使った物とは訳が違う。
さっきとは打って変わって槍のように細い形状の風。魔法とは自由の象徴。発想力と魔法への理解、そしてマナを操る力があれば、大抵のことは実現可能だ。
ヒュンヒュンと高い音を立て、解放の時を今か今かと待つ荒ぶる風。それがざっと二十本以上。
ベルはスノーの白髪に隠れながら獰猛な笑みを浮かべ、一斉に魔法を解き放った。
初速から最速に達したそれは、瞬く間にグリフォンに到達。魔法を認識すらできなかったグリフォン達は、なすすべもなく風の餌食になる。
一寸の狂いもなく、全てのグリフォンの両翼を貫いた風の槍。大量の羽毛が舞い、羽をばたつかせ絶叫を上げるグリフォンに、ベルは残虐な笑みを深めた。
『これだけじゃ、ないんだよ』
ベルは音の鳴らない手を叩く。それと同時に、澄み切った青空に血色の花が大輪を咲かせた。
翼を両断されたグリフォン。空を飛ぶ器官を失ってしまえば、当然墜落は免れない。全員同時に、真っ逆さまに落ちていく。
そのまま硬い地面や運悪くその場に居合わせた魔獣と衝突。頭は潰れ、首は折れ曲がり、命を散らした。
ベルが使ったのは、ただの貫通式の魔法ではない。敵に当たった後、風の刃が拡散する二段構えの魔法。
二つの効果を一つの術式に纏めるのは、それこそ人間に出来るような技ではなく、ベルが精霊王だからこそ出来た御業。
それを呼吸をするかのように簡単に使ったベルは、金の瞳を輝かせハッハッと舌を出し、
『スノー、今の見た見た!? 凄く綺麗に術式が組めたんだ! 今までの中で最高傑作さ!」
「ごめん、見てなかった。あと、今それどころじゃないし、ベルもはしゃいでないで集中して!」
スノーの叱責を受けたベルは「そんな!」と残念そうに耳を垂れさせる。
ベルはあんなことを言っていたが、恐らくはそこまで美しい術ではなく、いつも通りの力技だろうと、スノーは内心苦笑した。
事実、レンが今の魔法を見て、ベルの発言を聞いたら、間違いなく溜息を吐くレベルだった。
そも、綺麗な術を組もうとすれば、それ相応の時間が掛かるもの。
短時間で今の術を発動させただけで、十分驚嘆に値するのだが。
髪の中から哀愁を感じつつも、スノーは下に視線を向ける。次第に近づいてくる血濡れた地面。
そこには数多の魔獣が待ち構えており、スノーの事を食い殺そうと、狂暴な唸り声を上げてこちらを見上げていた。
しかし、スノーに慌てた様子は一切見られない。落ち着いた態度と口調で、スノーはベルに呼びかけた。
「ほら、まだまだ魔獣はいるし、ベルも手伝って」
『はーい』
若干拗ねたような声が聞こえるも、ベルから強いマナの気配が上がるのをスノーは感じた。
そして、勿論スノーもベルと一緒になってマナを高める。辺り一帯の魔獣全てを屠りうるほどの、莫大な量のマナが一人と一匹から立ち昇る。
あまりにも濃密な魔法力に、大気が歪んでいるような錯覚をスノーを見上げていた冒険者達は抱く。
そして、スノーとベルのマナの気配に怖気着いたのか、殺意を向けられた魔獣達は蜘蛛の子を散らしたように逃げようとするが、それはベルによって妨害された。
『逃げるなよ、極上の魔法を味わわせてやるから、さ!』
ベルは造作もないように四つの魔法を同時に扱い、風の檻を形成。吹きすさぶ風は土砂を巻き込み、そこから出ようとすれば豆腐を切るかのように身を削られる。
それを前にして、魔獣達は本能的に後ずさり弱々しい鳴き声を漏らした。
「ふうー」
その様を上空から鋭い視線で見下ろすスノーは、息を吐きながら、両手を下に向け魔法へと意識を集中させる。ベルの的確な支援にスノーは心の中で称賛を送る。
ベルのサポートがあるからこそ、スノーは目の前の事に全力で集中できるのだ。
マナというのは、操ろうとする量が増えれば増えるほど、それに比例して制御が難しくなる。
故に、多くのマナを扱うには、それに見合った技術を習得しなければならない。
このマナの制御力というのは、後天的に上げる事も可能だが、やはり先天的な才能に大きく左右される。
スノーは後者寄り、ベルは言わずもがな。そもそも彼女の場合、存在そのものがマナであるので、そこはあまり関係ない。
「そのくせ細かい力加減が苦手なのが、玉に瑕なんだけど」
ぽつりとそう愚痴を吐いたスノー。言ってから慌てて口をつぐむが、幸いな事に今の言葉をベルは聞いていなかったので、特に心配する必要はなかった。
そうして余計な事に思考が逸れていたが、スノーの魔法は完成する。
莫大なマナが世界の理に干渉。スノーの美しい相貌からは想像もつかない、暴力の化身が召喚された。
荒れ狂う暴風の塔。内部に刃を持つそれは、巻き込まれれば一瞬で細切れの肉片へと姿を変えさせられる。
凶悪な威力を誇るそれは、風の監獄に囚われた魔獣を吸い込み紅へと色を変貌させた。
赤気牛も真っ青な緋色に染まった竜巻は、その場にいた魔獣全てを取り込んで虐殺してから消失。
肉片の一つすら残らず、それこそ魔法のように、あれだけいた魔獣は姿を消した。
その竜巻のあまりの威容に、周囲の人々は魔獣と共に完全に沈黙する。
すたっと血でぬかるんだ地面に降り立ったスノーは、周囲の人達の無遠慮な視線の波に晒された。
『スノー、今のはちょっとやりすぎたんじゃない? ほら、周りの人達も呆然としちゃってるし』
「う、否定できない」
ひそひそと耳打ちをしてきたベルに、スノーは冷や汗を浮かべて返答する。ついつい感情が昂ぶり、必要以上にマナを使ってしまった。
これではベルの事を言えないと、スノーは深呼吸をしてこの悪い癖は直さなければと自省する。
ここは戦場で、人が傷ついてしまうのは当たり前。その被害を減らすことはできても、完全になくす事は出来ない。
どれだけ優れた人物であろうと、人一人の力には限界があるのだから。だから、自分の手が届く限り、なるべく多くの人を救うのだ。
そう思っていた矢先だった。静まり返った戦場に、誰かの甲高い悲鳴が響いたのは。
「――っ! ベル、探すのを手伝って!」
ベルに協力を要請して慌てて辺りを見渡し、声の主を探すスノー。幸い、先程ベルが使った魔法のおかげで戦場は開けている。
白い髪は宙に乱れ、碧い目は辺りをくまなく探す。そして、声を上げた人を見つけたのは、ベルの方だった。
『スノー、あそこだ!』
肩を叩き、その場所を示すベル。振り返り、スノーはその人の姿を目に映した。
悲鳴を上げていたのは、冒険者に成りたてのような少女だった。彼女は未だに無事な木が生えている所で、尻餅をついている。
その少女の目の前に姿を現したのは、泥猪――カリュドーン。荒い鼻息を立てる大猪は、鋭い眼光で少女睨みつけていた。
少女の周辺に他に人はおらず、完全に孤立している。まだ生き残っている冒険者や聖騎士は、今の悲鳴で再び動き出した魔獣の相手をしており、少女を助ける余裕は無い。
一瞬の判断、スノーは少女に向かって駆けだした。迷う余地など一欠けらもない。
少女がカリュドーンの相手を出来ないのは一目瞭然。取返しのつかない状況になる前に、少女の元にたどり着かねばならない。
――しかし、
「遠すぎるっ……!」
距離が、遠い。ベルから貰っていた強化は既に切れ、今は自前の身体強化しかできていない。
あの強化は日に何度も使えるものではなく、今日の分はもう使えない。
このままでは間に合わないと、スノーは焦燥に駆られ、咄嗟にベルに助けを求めた。
「ベル! 魔法は!?」
『無理だ! この距離だと射程外で届かない! 仮に届いたとしても有効打にはならないよ!』
その答えにスノーは強く唇を噛む。こうしている間にも、怯えている少女の命の灯は消されようとしていて――。
『まずい!』
ベルの叫びがスノーの脳内で木霊した。カリュドーンの体からは、マナの気配が漏れ出ていて、それはスノーにも感じられる。
その気配は段々と大きくなり、少女の命を摘み取ろうと――、
「だめーーー!!」
意味もなく手を伸ばし、その結果を先延ばしにしようとするが、それこそ意味がない。
少女の小さな身体が吹き飛ばされ、ただの肉塊へと成り下がる光景を幻視する。
――が、
「…………ぇ」
次の瞬間、何処からともなく極細の氷柱が飛来。カリュドーンの脳天を貫いた。断末魔を上げ、暴れ回るカリュドーン。
しかし、その氷柱は一本だけではなく、次々と猪の肉体に突き刺さり、蜂の巣にしていく。
やがてその猛攻は収まり、カリュドーンも静かになった。
走る足を止めたスノーは、氷柱が飛んできたであろう方向に顔を向ける。
「……どう、して」
スノーの顔には驚愕が張り付き、か細い疑問の声がその場に響く。
視線の先、スノーの碧い瞳に映ったのは、悠然と歩く未だに顔色の悪い漆黒の少年だった。




