X-17話 怒りに任せた拳
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この場に来たときには高々と昇っていた太陽は気がつけば陰りを見せ始め、今木材の山から必死にクローゼットを探す人の背中を月明かりが寂しげに照らしていた。コルルに手を引かれて連れてこられた場所を中心に、二人で協力しながら探すも、まだそれは見つかっていなかった。それどころか、一向に目当ての物に近づいている気がしない。
それは、最初この場所を見た時からここの景色はさほど変わっていないことに起因するだろう。汗が滴り落ちるほど力を込めても、重い木材は2人の力では持ち上げることはできない。結局2人集まることによってできるのは可能な限りの範囲で邪魔なものを移動させることだけ。その先にあるのかないのか分からない宝物を探すのはこういう気持ちになるのかと今猛烈に痛感していた。
「コルルー! 今日はこの辺りにしようか。もう前が見づらくなってきた」
呼びかけるが返事は返ってこない。それもそのはず、現在俺の隣にコルルはいない。なぜそうなったのか。それを語るには少し前の時間まで遡る必要がある。
一頻り2人で探索の邪魔になる木材を移動させると、その先に倒れた家具が崩壊した柱の行方を塞ぎ、僅かな空間が作られているのを木材と木材の隙間から確認できた。空間といっても大きなものでもなく、身体をねじ曲げていけば何とか細身の人なら行く事ができるか程度のものだ。もはや、ただ何もない場所と言う表現の方が適しているのかもしれない。
奇跡的な木材同士のバランスでその空間が構成されているので、行くとなれば木材がバランスを失い、空間を埋め尽くす等のそれ相応の危険も伴う。そんなことはお構いなしと言わんばかりに、コルルはそれを目に入れると即座に柔軟体操を始め、頭からその空間めがけて侵入しようとする。もちろん、俺は制止した。それはそれは何度も、最後の方はもしかしたら強い口調になっていたかもしれない。
だが、現実はこれだ。繰り返すようだが、隣に彼女の姿はない。俺の言うことなんて聞く耳も持たずに、
「任せて!」
と、とびきりの笑顔を見せるとそのままスッと入っていってしまった。止めようと手を伸ばしたがそれも空を切ってそれまで。俺の手は彼女に触れることすら叶わなかった。
——かれこれ、彼女が隙間に入って5分ほどは経過しただろうか。何度も先ほどと同様の言葉を繰り返してはいるが呆れるほどに返事は返ってこない。クローゼットを見つけれてるのか、そうでないのか。いや、その程度の問題ではない。そもそも中で何をしているのかと疑問を抱いてしまうほどの時間が流れていた。それに、時間が過ぎるほどに彼女に対しての心配がどんどん胸の奥から込み上げてくる。だが、彼女は俺のそんな気など知る由もないだろう。うん、彼女はそんな人の機微に敏感なタチではない。
俺はふぅーと長いため息をつくと、近くにあった丁度座るのに適した高さと横の長さをしている木材と思われるものに腰をかける。ギィーという木が俺の体重に反発する音を静まり返ったこの場所に響かせる。疲れた身体に夜の兆しを含むやや冷たい風が俺の頬を撫でる。
こうなったらもうとことん『ギィー』彼女に付き合ってやろうじゃないかと『ギィー』腹を括る『ギィー』。どうせこの後の『ギィー』予定なんてない、というかあるはずもないんだし『ギィー』。それならいっそ『ギィー』・・・。
「って!! さっきからこの木うるさすぎだろ!! まともな思考すらできねーよ!!!」
俺は怒りの感情そのままに右手で拳を作ると勢いよく木材めがけて振り下ろす。下ろした瞬間にやってしまったという後悔が頭をよぎった。人間の力拳程度の力で家をも支える木材に敵うはずがない。強烈な痛みに襲われるのは火を見るより明らかだ。
ベキッという薄っぺらい音が鼓膜を震わせると、予想とは大きく外れていとも簡単に拳は木材を貫いた。そのままスポッと開けた穴から手をゆっくりと上げ、木材との接着を剥がすと、俺は自分の右手をじっと注視する。
この右手に家を支える柱となっていた木材を貫くだけの力があるようには思えない。そもそも、貫いたとしたらもう少し右手に痺れるような痛みがあって然るべきだ。だが、そのようなものは待てど待てど襲いかかってくる気配はない。というか、ここまで薄い木材で支えられていた家ってどうなんだと言う疑問すら湧いてくる。
「この家地震とかきてたら一発で崩壊してたんじゃないのか? よっと」
ひょいと身体を浮かせていましがた座っていた木材から飛び降り、改めてその全容を視界に収める。横に長く、高さも十分な四角形。それでいてよく見てみれば頂点の面の部分が少し下にずれているようにも見える。そして、側面を覆う木材は漆で装飾されたような光沢。それにも関わらず、先ほど座っていた薄い木材の面だけは、まるでこの部分だけは人の目に見られることがないと断言するかのように安っぽさを感じる。
「何だよこれはって・・・。まさかな・・・?」
半信半疑で俺はその木材の塊の底に両手を添える。中々の重量を誇っていることは触れた時点で確信が持てる。だが、ここで止まることはできない。この頭に浮かんだ"まさか"と言う疑問点をこの場で解決しなくてはいけない使命感が俺の身に纏っていた。そして腰を入れて長い息を一つ吐くと、在らん限りの力を入れてそれを勢いよくひっくり返した。
「はは。マジかよ!」
表面には取手と思われる複数の窪み。そして、家が崩壊したときについたのかはたまたそれ以前からついていたのか分からない無数の傷に加え、下の方に小さくコルルの文字が刻まれていた。
疑いようのないクローゼットが俺の目の前に今現れたのだ。
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