第86話 バングリーの策
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清十郎はバングリーに呼び出され冒険者ギルドの執務室で紅茶を飲みながら顔を見合わせている。今朝、ゴルドとビットをしっかりしごき終えたあと工房の様子でも見に行くかと思っていたらアンガスが呼びにきて冒険者ギルドへと足を運び今に至る
最近のアンガス達、精霊の宴は活動を再開しているらしく今朝、依頼を見に行ったら爺に使い走りにされたと憤ていたがそれでも引き受けてしまうあたりアンガスの人の良さが知れるものだ
目の前のバングリーが紅茶を飲むとふぅと息を吐いてから口を開く
「なあ、清十郎よ」
つるりとした頭をなでながらバングリーは若干困り顔だ
「うむ。厄介ごとなら勘弁じゃぞ」
「むぅ。そう言うな。この間、工房を貸してやっただろう?」
「ワーラス村の一件で貸し借り無しであろう」
バングリーの厄介ごとを頼みそうな雰囲気を察して清十郎が先手を打つ
後手に回ったバングリーは腕を組むと眉間に皺をよせにやりと笑う
「ほう。たしかお前の工房に材料を回してやるという話もあったとおもうがな。仕入れの伝手はあるのか?ん?」
「なっ!」
痛いところを突かれた清十郎は顔が渋くなる。ニヤニヤとしながらバングリーが追い打ちをかける
「それにな。この間も二週間、うちに泊まり込んで時に飯の面倒を見てやっただろ?」
清十郎はため息を吐くと両手をあげて降参する
「ふー・・・わかったわかった!儂の負けじゃ」
「がはは!お前に交渉事は無理だ!それに今回はお前の為でもあるぞ?」
「どういうことじゃ?」
「お前、この間クマの子亭のレイルにイリア様のペンダントは自分が作ったっと言ったらしな」
「うむ。そういえばそんなことを言った覚えがあるな」
「あれからレイルが言いふらしてな。町中の噂になっておるんだ」」
「なんじゃと!?」
身を乗り出しかけた清十郎に腕を組みながらバングリーはうんうんと頷く
「まあ、お前の店はイリア様が仕切って準備をしているらしいから店は大丈夫だと思うがお前はずっとそのお守りとやらばかり作る羽目になるぞ」
「なんと・・・」
清十郎は驚愕のあまりに力なくソファーにもたれかかる
「・・・じゃ」
「ん?」
「いやじゃ!儂は武器を打ちたいんじゃ!」
ダンッとテーブルに手を付き必死の形相でバングリーを見る
「まあまあ。落ち着け。そこでこれからの話につながるというわけよ」
「どういうことじゃ?」
「実はな貴族学校で職人科を教えておる教官が年でちょっと前に退官してしまったのよ」
「ふむ」
「どうせ材料が入るにも時間がかかるし店が開くにも時間があるお前に次の教官が決まるまでその役目をやってもらおうと思ってな」
「話の内容はわかったがそれとどうお守りとつながるんじゃ?」
そこでバングリーはやれやれと肩をすくめる
「職人科でしっかり作ったものを買い上げて店におけばいいだろう?
お前の目に適うものなら店に買いに来る連中も満足するだろうしなにより物が良ければ買ってくれるとわかれば職人科の生徒もやる気にもなるし腕をより磨ける」
「ほぅ・・・。さすがじゃのう」
バングリーはそこでさらににやりと笑う。悪だくみを考えている顔だ
「それに生徒が作った物の中にお前の一品物を混ぜておくのよ」
「ほうほう。それで?」
「わからんか?お前の作った物の価値を上げるのよ。そうすれば購入層は限られかといってそこまで手が出せない者たちは生徒たちの物で我慢する。買えないよりはいいかとな」
そこでバングリーはニカリと笑う
「そうすればお前の時間もしっかりと取れるし店としてもうまくいくと言っておるのよ」
「おお!なるほどのう!わかった。その教官の役目とやらを引き受けてやろう」
清十郎は満面の笑みで頷く
「ああ、あとこれは冒険者ギルドからの依頼だからな。しっかりと実績に入るから安心しろ」
「別にそこは気にしておらんが・・・」
「お前なぁ・・・一番最初に説明しただろうが。一定期間依頼を受けないと抹消されるんだぞ。これは継続依頼になるから教官をやっている間は冒険者の実績になるからな」
「そういえばそんなこと言っておったような気がするな」
「はぁー・・・。これだからお前は」
呆れるバングリーを他所に清十郎は早く生徒を仕込んで自分の時間を確保しようと決意するのだった。しかし清十郎は知らない。バングリーのこの依頼には裏があることを
清十郎が去った後、ギルド長室の椅子に座り直しバングリーは一人ふーと息を吐く
「やれやれ。なんとかうまく清十郎に引き受けさせることができたか・・・」
机の上に置かれた書類の山を見ながら独りごちる
その時、こんこんとドアがノックされターニャが紅茶を持ってきた
「清十郎様はお引き受けになられましたか?」
紅茶が入ったカップをそっと執務室の机の邪魔にならない場所に置く
「うむ。なんとかな。しかし、あいつにも困った物だ」
「ふふ。清十郎様らしいですけどね」
書類の山の一番上から一枚の書類をターニャは手に取る。そこにはアボルグの小物店からの苦情が書かれていた
「清十郎様が小物を作ると知れ渡り小物店の方々からなんとかしてほしいと言われてしまってはギルド長も動かざる負えませんものね」
ターニャも軽く苦笑いしながら書類を山の一番上に戻す
「ああ。あのイリア様のペンダントが誰が作ったかわからないうちは良かったがそれがばれてしまってはなぁ」
バングリーは眉尻を下げつるりとした頭をなでる
「まあ、これで職人科にきておる小物店の子供たちの腕もあがり卒業していけば今度は自分でそれらを作るからな。これであやつらも納得するだろう」
バングリーが考えた作戦は清十郎のブランド化だ。生徒たちには自分たちの作品を実際に買ってもらいそれでやる気をだしてもらう
卒業後はその技をもって自分たちの商店の目玉を作ってもえば清十郎ブランドとそうでないものがあふれアボルグの街全体の技量もあがるし客層も好みが分かれるため清十郎の店の一極化を避けることができうまく回ると考えた
あとは清十郎が引き受けるかどうかが肝だったが清十郎も武器が本命な為、小物は片手間
でしかないと見抜いたバングリーの考えだした苦心の策だ。武器に関して清十郎が作るものが高すぎるので客層がかぶることがない為、アボルグの街の武器工房は別段気にしていない
「さて、あとは清十郎がどのようにするかだな」
バングリーは紅茶を飲み干すと肩の荷が下りたとばかりに執務室の椅子にもたれかかるのだった
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