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第84話 殺意の裏側で

いつも読んでいただきありがとうございます!

 清十郎は朝の朝食を終えビットを見送るとイリアとミーニャと共に中層区に来ていた

 来た理由は新しい工房の家具をそろえるためだ

 例のごとく朝から昼までイリアとミーニャの質問責めにあった清十郎の精神はガリガリ削られた


「・・・おなごの買い物は恐ろしい」


 清十郎は昼過ぎに戦線を離脱しクマの子亭の窓際のテーブルで突っ伏していた


「清十郎さん、今度は何を買い物してるの?」


 頼んだ果実水をテーブルにドンと置きレイルが聞いてくる

 果実水を一口飲むと甘さが疲れた心に染み渡りごくごくとそのまま飲み干した


「あー生き返るのう。実は今度、工房を持つことになってな」


「えっ?すごい!どこに持つんですか?」


「うむ。中層区の端のほうと言えばわかるかのう・・・」


 レイルは少し考えてからポンと手を叩いて思い出す


「あの空き家になってた木で組まれたお店付きの工房ですか?」


「うむ。たぶんそこじゃ」


「お店はどんなお店をやるんですか?」


 レイルは目を輝かせて清十郎に聞いてくる


「儂が作った武器を置く予定なんじゃが」


「あ、武器屋さんですか・・・」


 苦笑いを浮かべるレイル。どうやら期待していたものと違っていたらしい


「ふむ。ちなみにレイル殿はどんな店だと嬉しいんじゃ?」


「そりゃ、カフェとか雑貨だと嬉しいですね」


「ふむ。それは期待を外してしまったのう」


 残念そうな表情を浮かべるレイルに清十郎も苦笑いだ


「あ、そうじゃ。今、少しおもったんじゃがお守りとかどうじゃ?」


 清十郎の言うものはいわゆるキーホルダーだ。レイルの目が輝く


「どんなのですか?」


「それは見てのお楽しみじゃ。ああ、イリア殿の胸ペンダントは儂が作ったんじゃが」


「え!あのペンダント清十郎さんが作ったんですか!?」


「あ、ああ」


「欲しい!絶対欲しいよ!」


「こ、これ落ち着くのじゃ」


 前のめりに聞いてくるレイルをとりあえず落ち着かせる


「あのイリア様のペンダントが欲しくていろいろなお店を回ったんだけどまさか清十郎さんの手作りとは・・・」


「うむ。あれと同じものはやれぬがそれよりももっと簡単な物なら売り物としても

良さそうじゃしな。作ってみるのも一興かのう」


「うん。ならお店が開いたら絶対に買いに行くよ!」


「うむ。待っておるでな。ところでもう一杯果実水を頼めるかのう」


「はい。じゃあちょっとまっててね」


レイルはそう言うと店の奥に引っ込んでいった

しばらくすると果実水をもってレイルがやってくる


「はい。清十郎さん」


 どんと置かれる果実水を清十郎は早速飲む

 二杯目も一口飲むとそのまま飲み干し空になったジョッキを置く


「うむ。うまいのう」


「あ、イリア様とミーニャが清十郎さんを呼んでるみたいよ」


 満足そうな清十郎に笑いながら窓の外に向けて指をさす


「ふむ。なにやら相談事かのう」


「ふふ。頑張ってくださいね」


 代金を置いて外にでるとイリアとミーニャが清十郎に駆け寄ってくる


「清十郎様!とってもいいテーブルが見つかりましたよ」


「ええ。早速参りましょう」


 両腕をイリアとミーニャに絡めとられ家具店に引きずり込まれていった

 その時の清十郎の顔はどこか悟りを開いたような顔をしていたという



 清十郎が解放されたのはそれから1-2時間ほどしてからだった

 買い物の途中に自分に向けられた微かな殺気を感じ取る


「イリア殿、ミーニャ殿、少し用事が出来た」


「あら?急ぎですか?」


 イリアがきょとんとした表情で尋ねる。あえて引き留めない事は淑女の嗜みだ


「うむ。少しかかるやもしれん故、先に屋敷に戻っておいてほしい」


 そう言うと店の人目が無い場所で清丸を人型にさせる


「清丸ちゃん!」


 イリアはすぐに清丸に飛び込むように抱きしめると頬ずりを始める


「はぁ。まったくイリア様は・・・。清十郎様どうぞお気をつけて行ってきてくださいませ」


「うむ。では行ってくる、清丸しかと二人のことを任せたぞ」


 清丸は頬ずりされ眉を八の字にさせながらもこくりと頷く

 それを見届け清十郎はミーニャにイリアを任せ店を出る


 路地裏に入ると壁の出っ張りを利用し屋根に上る


「ふむ。あそこじゃな」


 呼び寄せるように自分に向けられる微かな殺気

 手元に清丸はないが無手でも清十郎は戦える


「やはりロムア殿であったか」


 殺気の元にたどり着くとトレードマークのカイゼル髭を触りながら姿勢を正したロムアがいた


「イリア様とのお時間をお邪魔して大変申し訳ありません」


 ロムアはニヤリと笑い口を開く


「・・・お主、からかうではないわ」


「これは失礼を」


 丁寧にお辞儀を決めるロムアに清十郎は嘆息する


「で、用件はなんじゃ?」


「あちらを」


 ロムアが指さす方向に視線を向けると黒いローブをかぶった男が清十郎たちが立つ建物の真下の路地を曲がるところだった


「ふむ・・・」


「あれは蛇ですな」


「蛇?」


「ええ。帝国の子飼いの暗殺組織の一員と言えばいいでしょうか」


「そうか。で、そ奴をなぜあの子供は追っている?あれでは気づかれておるぞ」


 清十郎は追っている少年に見覚えあった。以前投げ飛ばした少年だ


「彼はレギウス様の御子息でゴルド様と言います。きっと思惑があって誘っているのでしょう。それよりも問題は彼のその後ろです」


 清十郎が視線を向けると眉根を寄せる


「ビットの奴め」


「まあ、子供のすることですから。で、いかがいたしますか?」


「様子見じゃ」


「くく。清十郎様ならそうおっしゃると思いました」


 清十郎が即答するのにロムアはくつくつと笑う


「・・・そなた本当にいい性格をしておるわ」


「あなたもですな」


 二人は軽口を叩き合うと軽く笑いあった


「さて、相手が動きましたぞ」


「うむ。角で壁を伝って後ろに回ったな」


「体術を見る限りゴルド様に勝ち目はないですな」


「うむ」


 二人で屋根の上から真下を見ながら観戦するがあのままでは男が取り出したナイフで斬られると感じた清十郎が介入しようとした瞬間、ビットが後ろから男に鞄を投げつけたことから介入をやめる


「いいタイミングじゃな」


「木剣は持ってきておりますな。ですがあの男が使うナイフの技に勝てますでしょうか」


 ロムアがカイゼル髭を触りながら心配が混ざった声音を発する


「ふむ。お主は心配か?」


「清十郎様は違うと?」


「うむ。格上の相手と仕合う絶好の機会よ」


 清十郎はビットが木剣を構え落ち着いているのをみて言い切る


「ウェイン様もとんでもない方にビット様を任せましたな・・・」


 ロムアがぼそりと呟くがその声は清十郎には届かない


「あ奴め・・・」


 木剣で相手のナイフを受け止めるビットを見て清十郎が嬉しそうに笑うのをロムアは見逃さなかった


「何かありましたか?」


「あ奴、儂の技を盗みおった。まだ拙くとてもでないが技としては呼べぬがその片鱗をみせおったわ。じゃがあれで木剣は細かな罅が入った。2度目は受けれまい」


 そういうと清十郎は殺気を飛ばす。指向性を持たせた殺気だ

 眼下の男が明らかにうろたえている


 その隙をみてゴルドが後ろから飛びつくそのわずかな間隙を縫ってビットが上段を振り下ろすが男はゴルドに膝蹴りをくらわし拘束を解き距離を取って躱す


 斬撃をよけられた瞬間にビットはすぐに上段に構えなおすと裂帛の気合とともに上段に振り下ろした


 それに気づいた男がナイフで受け止めようとした所を狙って清十郎は男の背後に薄くシャドウソウルを使い殺気の塊を作り上げる


 熟練者だからこそわかる殺気に男が気取られビットの木剣が男の頭を捉える

 その場に倒れる男の姿を見て清十郎は頷いた


「終わりましたかな?」


 ロムアが眼下を見下ろしながらカイゼル髭を触る


「ああ。終わったようじゃ」


「でしたら私は警備の者を呼んでまいります」


 清十郎の返事を待たずロムアはその場から消えるように立ち去った


「これでビットも一段階高みに登るであろう」


 弟子の成長に満足そうにうなずくとおや?と清十郎は眼下の様子を窺う


「・・・どうやら良い友になりそうじゃな」


 眼下から聞こえる笑い声を聞きながら清十郎はその様子をそっと見守るのだった


シャドウソウルがわからない方は第45話の鍛錬シーンにちょろっと表現されています


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― 新着の感想 ―
[良い点] 師匠らしい面がとても面白かったです!
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