第7話 アボルグの街
オーガとの闘いの3日後、太陽が沈むころ清十郎はアボルグの街に到着した
清十郎は目の前にそびえる高い城壁を見上げていた
「どうだ清十郎、なかなか立派な城壁だろう?」
そう問いかけるのは長身痩躯の赤髪の男で軽鎧を身に纏いさわやかな笑みを浮かべている
本来左手にあるべき盾は先日の戦いで壊れてしまい今はない
代わりに清十郎に骨を接いでもらい応急処置をしてもらった左手を布で吊っている
精霊の宴のリーダー、アンガスだ
あのあとアンガスがことの顛末を説明するのにアボルグの街へ来てほしいと清十郎を誘った
別段行く当てもなかった清十郎がアンガスの誘いを承諾し帰路を同行を共にし今に至る
「うむ。りっぱなここまで立派な城壁はみたことがないな」
「そうだろう。ここアボルグは魔物の襲撃にそなえて他の町より余計に高く作ってあるんだ
清十郎の住んでいた国では高い城壁はないみたいだからなぁ」
「うむ。儂のおった国ではあのような魔物というものはおらんかったな
それに帰ってくるとき緑のゴブゴブいっていたやつらを見てお主が嘘を言っているんじゃないと信じることができたわ」
「なんだよ。それだと俺が嘘を最初から言っていたみたいじゃないか
それにゴブリンをなんじゃこいつって俺が説明するよりもはやく石をぶつけてあそんでたじゃねーか」
道中、現れたゴブリンを見て清十郎はカエルの化け物か?と言いながら石を拾いぶつけると泣きながら逃げ惑うゴブリンを清十郎は面白くなり喜々として石をぶつけて遊んでいた
そんな清十郎にアンガスはドン引きしたが喜んで石をぶつけている姿は年相応に見えしばらくは生暖かく見守っていたが魔物ゆえに最後はアンガスが右手で石を本気で頭にぶつけて討伐した
「いやぁ・・・あれは、つい興に乗ってな
そ、そなたもそのような顔でこちらを見るでない!」
「お前、”あぁ・・・儂のゴブ太郎が・・・”とかいってたもんな」
「これ、からかうでないわ!」
焦る清十郎を先ほどの不機嫌を一転しアンガスはにやにやとしてからかう
清十郎はいい加減、頭をひっぱたいてやろうかというところで一人の男が話かけてきた
「そろそろ、話かけても大丈夫かい?」
その声に2人は顔を向ける
そこには背丈はアンガスと同じくらいで緑の髪に目があいているかわからないくらいに細い目の涼やかな顔をした男がプレートアーマーを身に纏いマントを靡かせ立っていた
左手に兜を持ち左の腰には片手剣が刺さっている。
「お、ウェインか。久しぶりだな」
その顔をみるなりアンガスは破顔すると右手を差し出しお互いに握手を交わし抱き合うように挨拶を交わす
その姿から長年の付き合いがアンガスとウェインにあることは見て取れる
「おかえり、アンガス。無事に帰ってこれてよかったね
エリザ達から聞いたよ。大変だったね」
「あぁ、今回ばかりは死ぬかと本気で思ったぞ」
エリザはあのあと精霊魔法を使いトリビスとアルムの命をつなぎ止めることに成功したが予断をゆるさない状況ですぐにでも専門の治癒師に見せる必要があると言っていた
その話を聞いて2か所目の休憩場で他の冒険者に金を握らせて馬車を借りトドルに御者をやらせて一足先に街へ帰還させた。その時にでも話を聞いたのだろう
「なぁ、儂にも紹介してくれんか?」
清十郎はアンガスに背中をたたきながら声をかける
アンガスはそうだったといわんばかりに男を清十郎に紹介する
「あぁ、こいつはアボルグの街で警備隊長をしているウェインという男だよ
ウェイン紹介するよ。こっちは清十郎だ」
「初めまして。清十郎殿、俺はアボルグの街で警備隊長をしているウェインという
よろしく頼むよ」
「はじめましてじゃな
清十郎という。こちらこそよろしく頼むぞ」
ウェインは清十郎と握手を交わす
皮手袋越しだがごつごつとした感触から毎日の鍛錬をかかさず行っていることを清十郎は感じていた
「ふむ・・・ウェイン殿はなかなかの強者のようじゃな」
清十郎の言葉にウェインは瞠目するがすぐに笑顔になる
「毎日鍛錬を行っているだけでそこまでは強くないよ」
「なーに言ってんだか、王都の元親衛隊まで勤め上げた男がよくいうぜ」
「もう昔の話だよ。アンガス」
ウェインの言葉にアンガスは肩に手を回して清十郎にいう
一瞬ウェインの顔に陰りが見えたが清十郎は人には生きる年数だけいろいろあるものだと問うことはしなかった
「ところで清十郎殿、いまから時間をもらえるかな?
いきさつをこちらでも把握しておきたいんだ」
「ウェイン・・・それは領主の命令か?」
アンガスは胡乱な目を向けウェインに尋ねる
ウェインはそんなアンガスに肩をすくめるとなだめる様に言う
「今回現れた魔物はオーガの変異種だ。それも6匹
しかも竜の翼はすでに死亡が報告されているし他にも行方不明者がかなりいる
それを聞けばギルド長も領主に報告せざる負えないだろう?
ましてそのオーガ6体を討伐したのが清十郎殿だというじゃないか
そうなるとどうしても詳しい話を報告しなければならないんだよ
それに町に入るにはどちらにせよ身分証明も必要なことはアンガスもわかっていることだろう?
なければ、どうしても身分を証明するにも話を聞くことは避けられないよ?」
ウェインにしては珍しく正論で厳しい言い方にアンガスは返す言葉がみつからず頭を右手でガシガシとかく
「アンガス、すまない
でもこれは必要なことなんだ」
申し訳なさそうに言うウェインにアンガスは怒りを溜息と共に吐き出すと清十郎を見る
「なぁ、ウェイン、俺は清十郎に助けられた
証明は俺が保証人になることもできるんじゃないか?
それに事情を聴くにしてもついていっちゃだめか?」
「アンガスの命を助けたのはわかるけど今回に限ってはよほどの人物でもなければ保証人は通用しないよ
少なくともAランクに匹敵する戦闘力をもつ人物が身元不明だときている
上からの命令がなくても街を守るものとして事情を聴かずに街に入れるわけにはいかないよ」
それにとウェインが若干言いずらそうに後の言葉を続ける
「・・・今回は清十郎殿1人が望ましいからアンガスの同行を許可するわけにはいかないんだ」
「ちょっとまて、ウェインそれは・・・」
「儂はかまわんぞ」
アンガスの話をかぶせるようにはっきりと答える清十郎にウェインはその細い目が一瞬驚きに開く
「ただし、飯は豪勢なのをつけてくれるな?」
清十郎の要求にアンガスは思わず噴き出した
「清十郎は清十郎か。ウェインくれぐれもこいつのことを頼むぞ」
「アンガスの命の恩人だしね
満足させることができるかわからないけど待遇はきちんと配慮するよ」
ウェインはその目をさらに細め楽し気に答えるのだった
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