第65話 ワ―ラス村
いつも読んでいただきありがとうございます!
ワ―ラスはアボルグとホーブスを結ぶ街道のちょうど中間にありアボルグまで、その逆にホーブスまで行くには遠いがここでならという商人たちがやり取りをワ―ラスで行いやがて市が開かれるようになり栄えてきた村だ
その成り立ちから小規模ながら数々の種類の商店や宿泊施設などが軒を連ね、毎日開かれる朝市では大勢の人でにぎわう村となった。
王国の上層部ではワ―ラスを村から街へ格上げしてはどうだという話が出ているくらい人口も多くまた街を守るように外壁も張り巡らされている。ワ―ラスの特徴として夜間でも村への出入りが自由となっているが鉄柵がついておりいざという時にはこの鉄柵が行く手を遮る仕組みになっている
「ふー。ようやくついたな」
疲れたように息を吐くのは橙色の髪を逆立てた気の強そうな少年だ
「ロビン君、お疲れ様。途中で御者を交代しても良かったのに意地を張るから」
青髪の少女アルムがどことなく眉尻を下げしょうがないなぁという顔をしている
「だってよう。昨日、ジラブさんの村であれだけ盛大に歓待を受けりゃ誰のおかげか分かるし。俺、何もしてないからさ。せめて御者ぐらいはなぁ」
「お主もそんなこと気にせんでもよかろうに」
以外に殊勝な事を言うロビンに清十郎が肩をすくめる
「ロビンは見た目は怖いけど凄く優しいよ。すぐ喧嘩しちゃうからハラハラしてるけどいつもはこんな感じで気を遣えて面倒見もいいんだよ」
リノンが微笑ましくロビンを見る
「リ、リノン、やめろよ・・・」
ロビンが照れてそっぽを向いた
今、清十郎たちはワ―ラスの門の前で村へ入る手続きを受けるための列に並んでいるところだ
昨夜ジラブの言葉に甘えて村に泊まった清十郎はジラブの家で宴に近いような精一杯の持て成しを受け、礼を述べて村を出立したのが朝の事。道中、特になにもなく夜にワ―ラスに着くことができた
「ま、ロビン君もさ、仲間なんだしそんなことは気にせず御者を交代してやっていこうよ
いざという時に疲れて動けないことは冒険者としてもダメだからさ」
「うーん。そういうもんか」
アルムがロビンに言い聞かせるがロビンが唸る
「ロビンよ。アルム殿はお主より冒険者として経験を積んで居る。しっかりと言うこと聞いておけ」
「・・・そうだな。そうするよ。アルムこれからも色々教えてくれよな」
「うん。任せといてよ」
アサルトボアの一件からロビンは清十郎に一目置いている。その清十郎に言われれば否やはない
話に区切りがついたところで順番が回ってきたので冒険者証を見せ村の中へと入る
「ふむ。城壁もなかなかであったが街もにぎわっておるな」
「まぁ、ここは村というより街だからな。とりあえず宿を探すか」
清十郎は門をくぐり眼前に広がる夜でも賑わう通りを見て感想を述べる
地面はアボルグのように石畳ではないが通りを挟んで宿屋と酒場が一緒になった施設が軒を並べ酒場からは喧騒が聞こえてくる。行き交う人をみながら馬車は街の通りを進む
「ところで宿にあてはあるのか?」
清十郎の問いにロビンは首を振る
「いや、決まってないが酒場と一緒のところはやめようと思ってな」
「それはなぜじゃ?」
「絡まれるだろ」
ロビンの半ば確信をもった言い方に清十郎は首を捻る
「ふふ。アボルグに向かう途中でそういうことがあったんだよ」
荷台からリノンが小さく笑いながら清十郎に教えてくれる
「ああ、そういうことか」
「あ!あそこなんていいんじゃないかな」
清十郎がうなずくとアルムが荷台から顔をだし指をさす
そこには一軒の古びた宿があった。木造の3階建てで看板には止まり木亭と書いてある
ロビンは頷くと宿の厩舎へと入ると建物の裏口から人が出てくる
「いらっしゃいませ。泊りの方ですか?」
清十郎たちと同じ年くらいのそばかすが残る少女が尋ねてくる
濃い茶色の髪を三つ編みにした快活そうな少女だ
「ああ、一泊頼みたいんだけどいいか?」
「大丈夫ですよ。馬の世話に銀貨1枚とお部屋は四人部屋か二人部屋ふたつのどちらか選べますけどどうしますか?」
「二人部屋ふたつで頼む」
「でしたら二人部屋をふたつなので朝晩の食事付きで大銀貨1枚と大銅貨3枚になりますけどいいですか?」
ロビンが清十郎たちの方を見るのでそれに頷き返してやる
「ああ。それで構わない」
「では、馬の世話はしておきますので表玄関の方から中へどうぞ
おかーさん!四名のお客さん!二人部屋ふたつ食事つきでお願い!」
ロビンの返事を待って少女は裏口から中をのぞくと声をかけた
「これで大丈夫だと思います。馬の世話はしておきますから遠慮なくどうぞ」
少女はそういうと早速とばかりに荷台を馬から外し馬を厩舎に繋ぎに行った
「なら、お言葉に甘えて中に入るか」
ロビンがそう言って歩き出すと清十郎たちもそのあとに続く
表玄関を開けて中に入ると床には上品な絨毯が敷かれランプの灯が優しく室内を照らし暖かな雰囲気を醸し出していた。奥が食堂になっており何人かの客が食事をしているのが見える
「いらっしゃい。こっちで受付を済ませておくれよ」
清十郎たちに左側のカウンターから恰幅のいい女性が声をかける
さっきの少女の母親だろう。女性は宿帳を差し出しペンをロビンに渡す
「ポリーが言ってたお客さんだね。ようこそ止まり木亭へ
ちょうど今、食事が出来上がってるから部屋に荷物を置いたらすぐに下りておいでよ。
部屋はそこの階段から上がって2階奥の突き当りの部屋を向かい合わせで使っておくれ」
女性は入って右側の階段を指で指し示し宿帳を書き終えたロビンにカギを二つ渡す
「そうそう。湯舟はないからお湯を使いたければ大銅貨1枚でタライでお湯を用意するから言っとくれよ。あと、あんたらは男女で部屋を使うかい?」
そう言われて清十郎とロビンは首を傾げるがアルムとリノンは分かったらしく顔を赤くしながら慌てて首を振る
「い、いえ。男女で分けて使います」
アルムが代表して答える
「ん?別に儂はアルム殿とでも構わんが」
「へ?」
清十郎の思わずと言った言葉に間の抜けた声がアルムの口から出る
「ロビンとリノンは今までも二人で旅をしているし一緒に育っておるからそちらの方が気を使わんで済むのではないか?」
清十郎がなんでもないようにロビンたちをみるとロビンとリノンがジト目で清十郎を見ていた
「・・・清十郎、俺たちはそれで構わないけどアルムはそれどころじゃないみたいだぜ?」
「うん?」
そこには顔を真っ赤に染めながら下を向き指と指でつんつんしているアルムがいた
「清十郎君・・・それは、まだ早いと思うんだ。だから僕はリノンと一緒にするよ」
小さい声でアルムは呟く
「はは!若いっていいね。あたしの若い時を見てるみたいだよ。まあ部屋の使い方はあんたたちに任せるけどあんまりうるさくすると周りの人に迷惑だからね。声はあまり出さないようにしとくれよ」
そう言い残すと女性は食堂の奥へ入っていった。食事の準備に向かったのだろう
結局、ロビンと清十郎、アルムとリノンで部屋を使うことに決め2階に上がる
「じゃあ、準備が終わり次第、下の食堂へ集合ね」
「ああ、わかった」
ロビンとリノンがうなずき合い部屋の中に入っていくのを見届けると清十郎とロビンもあてがわれた部屋の中へ入った
「ほう。これは・・・」
「うん。あたりの宿だったみたいだな」
ロビンと清十郎はきれいに手入れのされた部屋に感嘆の声をあげる
派手さはないが部屋に絨毯が敷かれ片隅には花を活けてあったり水差しとコップが置いてあったり部屋の全体がお客さんを迎え入れるのに最善を尽くしていることがわかる。ベッドシーツも清潔で窓から見える街の景観も悪くない
早速、清十郎とロビンは着替えを済ますと食堂に向かう
食堂の椅子に座るのと同じくらいにリノンとアルムもやってくる
四人がそろってしばらくすると先ほど厩舎であった少女ポリーが食事を持ってきた
「みなさん、今夜は止まり木亭へようこそ
今晩の食事はバイソンの厚切りステーキです。どうぞご賞味ください」
目の前に厚さが3㎝以上はありそうな肉の塊が鉄板ごと木皿に乗せられ置かれる
湯気が立ちかけられたソースが鉄板にこぼれるたびにジュウという音と共にかぐわしい匂いとなって立ち昇る
「この匂いはたまらんな」
清十郎は我慢ならないとばかりに肉をナイフで切ってみる。見た目の肉の厚さに反してするりとナイフが滑る様に入っていく
切った肉の間からは赤さが覗くが気にせずフォークで刺し口に運ぶ
口の中に肉を入れるとスパイスが効いた甘酸っぱいソースの味が舌を楽しませ肉の香りが鼻の奥を刺激する。そのまま肉をかみしめてみれば程よい弾力と共に肉汁が溢れでてソースと絡み合い舌を楽しませてくれる。硬くなりすぎずかといって生でない絶妙な火の入り方がこの肉の旨さを引き立たせてくれている一品だ
「ううむ。これはうまい!」
唸る清十郎に他のメンバーも首を縦に振り食べるのに夢中になる
アルムとリノンでは量が多いかと思われたがそんなこともなくあっという間に肉を食べ尽くす
「はあー。うまかったー」
ロビンが腹を叩きながら満足げな声をあげる
「うんうん。僕らでも余裕で食べれたね」
アルムが同意するようにリノンを見る。リノンもコクコクと首を縦に振る
「ふふ。みなさん満足されたようですね。こちらは、食後の果実水です。どうぞ。」
ポリーが木製のジョッキに入れられた果実水を四人の前に置く
「わざわざ済まぬな」
清十郎が感謝を述べるとポリーは首を振る
「いえいえ。気になさらないでください。これも宿のサービスですから」
ポリーはにこやかに一礼すると食堂の奥へと帰っていった
清十郎は果実水を飲んでみるとほどよい酸味が肉の油を洗い流し口の中に爽やかさを残す
「ううむ。この果実水のなんと気持ちのいい物よ」
「うん。肉の油を洗い流してくれるよね」
清十郎の言葉にアルムが賛同の声をあげる。ロビンに至ってはすでに飲み干していた
しばらく食後の満足感を味わったところでアルムが口を開く
「さてっと明日は普通にゴブリンの村にむかう?」
「うむ。そうじゃな。予定通り朝、ここを出て向かうとしよう」
清十郎がアルムの問いに答えるとロビンとリノンも頷く
「なら。明日は予定通りでいこう。じゃあ、明日も早いし寝よっか」
アルムの言葉に清十郎たちも頷きそれぞれ部屋へと戻り休むのであった
良かったらブックマークの登録、評価を是非よろしくお願いします
感想、レビューもお待ちしております




