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第5話 ギルド依頼4

 アンガスたちを取り囲むように存在するオーガ達はのそりと立ち上がるとゆっくりと近づいてくる

 逃げ道のない状態にアンガスは軽く舌打ちをすると後ろに控えているアルムに聞こえる程度で声をかける


「アルム、俺たちで逃げ道を開くからその隙に町まで戻るんだ」


「そんな、みんなを見捨てることなんてできないよ!」


「こういう状況の時はアルムが街へ知らせにいくことを前々から決めてあっただろう。戦力的に見てもアルムじゃあいつらと戦うのは厳しい。なら町へ助けを求めに行ってもらった方が効率的だ」


「で、でも・・・」


「急げ!あいつらが攻撃をしかけてきたら逃げ隙を作るのも難しくなる!」


「わ、わかったよ!すぐに戻ってくるから死なないでよ!」


「あぁ。大丈夫だ!俺たちは今までもこれからもこの程度じゃ死なない。逃げるならあれを使え」


 言い募るアルムを強い言葉でアンガスはかぶせて言い切り視線を馬へと向ける。馬を使えというアンガスの声なき言葉はつたわったようだ。アルムはそれ以上言うことなくただ頷いた


 さてと、アンガスはオーガ達に意識を向ける


(しかし・・・なぜオーガどもはゆっくりしているんだ)


 オーガ達は取り囲むようにゆっくりと近寄ってくる。あくまでゆっくりだ

 まるでいまから獲物をいたぶることを楽しむかのように


 そこまで考えてからアンガスはいら立ちを覚えた


「あいつら、どうやら俺たちをいたぶってから殺すつもりらしいぞ」


「あぁ、ほんとにむかつくやろうたちだぜ」


「なら、ただではやられないことを教えてやらねばならんな」


「あんな筋肉に俺の筋肉は負けん!」


 アンガスの言葉にメンバー全員が奮い立つ。どうやらオーガ達の行動にいら立ちを覚えていたのはアンガスだけではなかったらしい


「じゃあ、みんな行ってくるから死なないでよ!」


 ちょうどメンバー達がやる気になったところでアルムが荷馬車から装具を外し馬に飛び乗っていた。それを見てアンガスはトリビスに指示をだす


「トリビス、後ろの一匹に一発くらわしてやれ!」


「あぁ、任せろ!

 ”踊る踊る火は踊る!我が求める炎よ!

 我の命を糧に世界の万物の元からこの世に具現せよ!

 燃やし尽くせ!”ファイアーロンド!」


 ファイアーロンドは高熱と風を組み合わせて作りだし対象を焼き切る攻撃性の高い中級魔法だ。特にトリビスが使えば高い魔力をこめてもその精緻な魔力操作で魔力の暴走を抑え込むことができる


 高い魔力をこめたその威力は大魔法と比べても遜色はない。今までこの魔法でオーガを含め数々の魔物を燃やし尽くしてきた


 トリビスが詠唱を終えると火を伴った竜巻が現れオーガの一匹が炎に包まれる。その様は獲物を食らいつくすように中心に炎が巻き上がる


 その瞬間アンガスはアルムに向かって声を出す


「いまだ!アルム行け!」


 アルムは返事をするまでもなく炎に巻かれたオーガの脇を馬で駆け抜けようとした


 オーガの横をすり抜ける瞬間、アルムは燃え盛る炎にくるまれたオーガを横目でみた瞬間、アルムは全身に寒気を覚えた


 オーガは笑っていた


 炎にくるまれ普通の魔物なら身を焦がす熱さで身悶えるはずのもの

 それをオーガはアルムを見て醜悪な顔を歪めて笑っていた


 お前たちの攻撃はきいていないぞ


 オーガの顔はそう言っているようだった

 そう感じた時アルムは浮遊感を覚えその後に走る全身の衝撃とともに意識を失った


 アンガス達はその光景を見て言葉をなくした。確かに放たれた魔法、燃やされたはずのオーガ


 しかし、アルムがすり抜ける瞬間、オーガが馬の首をつかむとそのまま投げ飛ばしたのだ。馬は自重の重さと落下の衝撃でピクリとも動かない。おそらくあの勢いで投げられては生きてはいないだろう


 アルムはあまりの勢いで馬の手綱を途中で離してしまい空中に投げ出され勢いそのままに地面にたたきつけられ何回もバウンドし転がり動かなくなった


「アルム!」


 アンガスは馬から離れた場所に倒れているアルムに声をかけるがピクリとも動かない。やがて炎が消えたオーガが叫び越えをあげるとともにアルムの方へと走り寄って行った。とどめを刺す気だろう


(まずい!)


 アンガスは瞬時に意識を切り替えエリザに指示を出そうとしたところでエリザは既に矢を弓に番えて構えていた。放たれる矢はオーガに突き刺さるはずであった。しかし矢は肌にはじかれ動きを止めることがかなわなかった


「ば、ばかな。風の精霊の恩恵をまとわせているのに刺さりもしないだと!」


 エリザはその事実に驚愕の表情を浮かべる。その間にもオーガは歩みを止めない


 アンガスとトドルは周りのオーガをけん制しているため動けない

 オーガとアルムの距離はもう10メートルもない


 周りのオーガは動きを止めてその様子を面白そうに見ている。まるで今から始まる催しを楽しみにしているように


(くそ!このままじゃアルムが)


 アンガスが唇を噛んで動けないときアルムに向かっていたオーガが突然姿を消した


「「「えっ!?」」」


 驚いた面々、ただ一人地面に手をつき荒い息を吐いていた


「はぁはぁ・・・あぶなかったぜ、ぎりぎりで間にあってよかった・・・」


 言葉を紡いだのはトリビスだ。オーガのいたところには深い穴が開いていた


「ぼーっとするな!今のうちにアルムの保護をしやがれ!」


 唖然とするアンガスたちにトリビスは一喝する。アンガス達は瞬時に意識を切り替えアルムの元へ駆け寄る。その間オーガ達も驚いたのか動かなかった


「おいアルム大丈夫か!」


 最初にかけよったエリザが声をかけるがまったく反応はしない

 エリザはアルムの胸に手を当て言葉を紡いでいく


 しかしその言葉は後から来たアンガスたちに聞き取れるものではない

 少しの間の後、アルムが大きく息を吸い始めるとせき込みだした


「エリザ、アルムの様子は?」


「精霊の力を借りて命をつなぐことはできたがひどい怪我だ。急いで治療をしないとまずいぞ」


「わかった。いまはそれで充分だ」


 アルムの状況を確認後オーガ―に意識を向ける。オーガは相変わらず動きはなかった


(あいつらは何を考えて・・・)


 そうアンガスが思った瞬間トリビスが悲鳴をあげた。トリビスを見ると足元から生える手がトリビスの足をつかんでいたのだ。そのままトリビスは地面にたたきつけられる


 トリビスがいた場所からオーガが土の中からのっそりと現れる

 倒れているトリビスを踏みつぶそうとオーガが足を振り上げた瞬間、裂帛の気合とともに大剣が振られる。トドルが渾身の力でオーガを斬りつけたのだ。その勢いでオーガは数メートルは吹き飛ばされ転がっていく


「ちっ!かてえ野郎だ!俺のマッスルバスターが足を切り飛ばせなかったぜ!」


 手をぶらぶらとさせながら筋肉自慢の大剣使いは悔しそうに声をあげた

 オーガはすでに地面から体を起こしているが怒りの咆哮をあげるだけでなかなか立ち上がらない。トドルの一撃がひびいているようだ

 だがこれで包囲は脱出しオーガを前面に置くことで戦況が楽になったのも事実だ。後ろではアルムの横にトリビスを引きずって置き応急処置を終えたエリザが弓を再び戦列に戻る


「トリビスは?」


「トリビスもアルムと似たような状況だ。足をつぶされ、たたきつけられたんだ。片足がつながっていただけでも奇跡だ」


 アンガスの問いにエリザが答える


「しかし、あいつら何のつもりだ。まとめてくれば俺たちなんぞ一瞬で殺せるはずなのに」


「おそらくだがあいつらは獲物を追い詰めて楽しんでいるんだろう」


「俺もそう思うぜ!どうにもあいつら仲間同士で楽しんでるみたいだぜ」


 見るとトドルに吹き飛ばされた1体を他のオーガ達が、ぐははと笑っている。さっきは推測でしかなかったがここにきて状況は完全に把握できた


(あいつらは完全に俺たちを見下してやがる。こんなやつらに本気を出す必要はないとな。おそらく遊びとしか考えていないはずだ)


 相手がこちらをなめてまとめてかかってこないだけ不幸中の幸いだとアンガスは思った。あとはこの窮地をどうやって脱するか、しかし状況は相当に分が悪い


「だが、トリビスのファイアーロンドが通じないばかりかトドルの渾身の一撃で足一本斬れないとは・・・」


「それについては私が思うにあいつらはオーガの変異種だ。あいつらの青い肌もそうだが通常のオーガではありえないことばかりだ。私の矢もはじかれたしな」


「まぁ、あそこで痛がって吠えてるやつは足は切れなかったが骨は折ったみてえだな」


 アンガスの問いにエリザとトドルそれぞれが答える


(変異種だと単独でBランク、群れだとAランクか。荷が勝ちすぎだぞ。爺、帰ったら覚えてろ!)


 アンガスは心の中で叫ぶと次の攻撃に備え構えなおす。そうこうしているうちに次は俺とばかりに一匹のオーガが突進してくる


「くるぞ!」


 負傷者2人を後ろに抱え絶体絶命の中、アンガスたちの戦いは続く


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