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第32話 教会の中で

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 建物の中は以外と広い空間が広がっていた。玄関を入ってすぐに女性の木像が目に入ってくる。その前には椅子と机がおいてあり10人くらいの子供がアンガスに群がっておりその中にはレリとピットの姿もあった。レリは若干、離れた位置にいるがアンガスを見つめている


「大人気じゃな。アンガス」


「お前もすぐこうなる」


 そうアンガスが答えると子供たちの視線が清十郎に集まる。次の瞬間には清十郎が取り囲まれ、もみくちゃにされる番となった


 てんやわんやの中、ピットが紹介してくれたおかげで挨拶の手間は省けたが年が離れたアンガスよりも年の近いけれど落ち着いた雰囲気の清十郎に子供たちがあつまるのは自然の流れだった


「み、みんな落ち着くのじゃ!話をしてやるでの!」


 子供たちの集中攻撃に参った清十郎はアンガスとの出会いを柔らかくして話してやるとその冒険劇に一喜一憂し女の子も男の子もみな目をキラキラして清十郎を見つめていた


「兄ちゃんすげーな!」


「アンガス兄ちゃんもよくそんな鬼と戦ったなー!」


「おにいちゃんたち、すごーい!」


「もっとお話し、聞かせて―!」


 ピットの掛け声をきっかけに、それでそれでと話を強請るのをみかねてアンガスが助け舟をだす


「おーい。お前ら、あとで好きなだけそいつと遊んでいいからちょっと俺に貸してくれよ」


「「「えーーー!!!」」」


 と、その時、奥から一人の青を基調にゆったりとした袖をした丈の長いワンピースを着た女性が出てきた。背中の中頃までオレンジ色の髪を伸ばし頭にカチューシャをしている


「なんですか!騒々しい。マリカ様の前ですよ!あら?アンガス?」


「おう。シーラ邪魔してるぞ」


 シーラと呼ばれた女性はアンガスに気づくと清十郎に視線を向ける


「そちらの方は?」


「ああ、こいつは清十郎、俺のダチだ」


「儂は清十郎というシーラ殿、初めましてじゃ」


「え、えぇ。初めまして、シーラと言います」


 清十郎の年相応らしからぬ落ち着いた独特の雰囲気にシーラは一瞬戸惑うがすぐに挨拶を返しアンガスを見る


「アンガス、用事は清十郎君を連れてきただけじゃないでしょ?用件はなに?」


「婆さんは起きてるか?」


 アンガスの言い方にシーラははぁーと溜息を吐くと腰に手をやる


「ポーラ様でしょ!あんた昔、散々世話になっといてよくそんな言い方できるわね」


「む、昔は昔だろ・・・。まあ、婆さんには恩はちゃんと感じてるよ」


シーラの呆れ顔にアンガスは頭を掻きながらバツが悪そうにいう


「ま、それならいいけどね。ポーラ様は今、起きてるわよ。でも、ちょっと今日は調子がわるいかも。朝から辛そうだしね」


「そうか・・・」


 アンガスは少し寂しそうにする


「とりあえず聞くだけ聞いてくるよ」


 シーラはアンガスのその様子に心痛そうな顔をしながら奥に入っていった


「なあ、アンガスよ」


「ん?なんだ?」


「そのポーラ殿はお主にとってどんな人物なんじゃ?」


「あぁ、俺はここで婆に育てられたんだ」


「ん?お主、元貴族で親衛隊におったのではないか?」


 清十郎がそういうとアンガスは苦笑いを浮かべる


「なんだ、ウェインはそこまで喋ったのか」


「うむ。あらかた事情は聴いておる」


「そうか・・・。なら話しても大丈夫だろう。

 俺はここで育ってある男爵家の養子に貰われていったんだよ。それで王都の学院に入ってウェインと知り合った。あとはお前がきいた通りだよ」


「なるほどのう・・・。ということは、ポーラ殿はお主にとって母親じゃな」


「・・・まぁそういうこった」


 ちょうど清十郎とアンガスが話し終えたところでシーラが戻ってきた


「アンガス、あんたがきたことで少し元気が出たみたい。お会いになるって」


「お、そうか!よかった。清十郎いくぞ」


「ようわからんが何があるんじゃ?」


 アンガスは清十郎に言われて説明するのを忘れていたと頭を掻く


「ああ、婆さんにはお前を連れてくるように前にここに来た時に言われていてな。ウェインからも魔法の事を教わるにはちょうど良いからって頼まれていたから連れてきたんだよ」


「魔法の事を教わる?」


清十郎が魔法と聞いて首を傾げるとアンガスは頷いて話を続ける


「婆さんはこのアボルグで魔法の第一人者だ。マリカ教の司教でもあるんだが昔は本国のマリカ教国でも指折りの魔法使いで大司教にもなれると言われていたほどの腕前だよ」


「ふむ。どうしてなれなかったんじゃ?」


 清十郎がそう聞くとアンガスの顔がゆがみその表情は悲しみにあふれている。シーラも沈痛な顔をしている。子供たちは空気を読んだのかみんな部屋にはおらず今は清十郎とアンガスとシーラだけだ


「魔鉱石病・・・この病にかかって残りの余命を困窮者の救済に使おうと各地を転々として最終的にここアボルグの街の下層区で教会を開いたんだ」


「立派な御仁じゃな」


 清十郎の心からの言葉にアンガスとシーラの2人が微笑む


(二人ともポーラ殿を敬愛しておられるのじゃな)


 清十郎そう思いながらもアンガスに尋ねる


「で、アンガス。ポーラ殿の身の上の話はわかった。じゃが、分からんことがある。なぜ、わしを黙って連れてきたんじゃ?」


 アンガスが苦笑いしながら答える


「お前、宗教嫌いだって聞いたぞ」


「む?」


「ミーニャの講義の時にマリカ教国の話になった時に殊更、嫌な顔をしたらしいじゃないか。だからマリカ教の関連施設に連れていくといったら嫌がると思ってな」


 アンガスに言われて前世の一向宗を思い出した時かと思い当たる。それでもそれほどの顔に出ていたかと清十郎は思わず自らの顔を触る


「なるほど。それで儂に理由を言わずにとりあえず連れてきたわけか。不器用な奴よな、お主は」


 そう言われてなんと返して良いかわからずアンガスは頭を掻く


「まあ、そういうことだ。ただ誤解のないように言っておくがお前をマリカ教に勧誘するつもりでここにつれてきてないからな」


「ふむ。なら最初から説明せぬか。まったく」


 清十郎は嘆息すると呆れたようにアンガスを見た


「ほんとだよね。先に言っておいてほしかったよ。清十郎君の分の食事を用意する方の身にもなってよ。どうせ、食べてくでしょ」


「ああ、もちろん。シーラいつも悪いな。でもシーラの煮込み料理は絶品だし清十郎も絶対に気に入るぜ」


 シーラに言われアンガスは慣れたように軽く謝るとシーラの料理を褒める

 そんな態度のアンガスに溜息を吐くもやれやれといった感じでシーラは怒ってはいない。長年の付き合いで気心が知れているのだろう


「でも、今日は試合が本当ならあった日だろ?

だから時間が空いた今日にどうしてもと思ったんだ」


 たしかにそうだなと清十郎は頷いた


「だろ?まぁ、いきなりつれてきたことについては謝る。すまんかった」


 素直に謝るアンガスに清十郎は首を振る


「気にするな。儂たちは友じゃろ?」


「はは。ちがいねえな。じゃあ遠慮なく甘えるとするか。ならシーラ、婆のところに案内してくれ」


「まったく男ってのは、よくわからないね」


 そういいながらシーラはこっちだよと2人を案内する。やがて奥の部屋の前で立ち止まると扉をノックする


「ポーラ様、シーラです。アンガスとお客様をお連れ致しました」


「・・・おはいりなさい」


 小さいが貫禄のある声が部屋の中から聞こえてきた



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