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第3話 ギルド依頼2

 翌朝、まだ日が昇る前にアンガスたち精霊の宴はアボルクの街の北門にあつまっていた


「よし、全員あつまったな」


 アンガスは面々を見る。みんなしっかりとしたまなざしでアンガスを見る


(全員体調にも問題はなさそうだな)


 アンガスは全員の見返す力強い瞳に安堵する


 そして昨日はいなかった灰色の髪の男にアンガスは眼を向ける

 長身でがっしりとした男だ。はちきれんばかりの筋肉に鉄と皮で組み合わせた胸当てをつけ大剣で戦う精霊の宴の前衛の担い手だ。トリビスと同じく依頼で意気投合しそれ以来アンガス達と行動を共にしている

 初めて依頼で一緒になった時には上半身は裸に直接、胸当てを身につけ現れたこの男に危なくないかと尋ねたところ筋肉はすべての攻撃をはじくといって豪快に笑い一抹の不安を覚えたがいざその戦いぶりを見た時、不安はまったくなくなった


 大剣を操る巧みに操り攻防一体で戦う姿に頼もしさを感じたのを覚えている。いつも飲むと服を脱ぎ棄てポージングする癖がなければ言うことはない男だ。飲まなくても脱ぐが・・・


「トドル、昨日はみかけなかったが調子はどうだ」


「まあまあといったところだな」


 トドルはがっしりした腕を前で組み胸の筋肉をアピールしながらアンガスに答える


「まぁその調子なら大丈夫そうだな」


 アンガスはその様子を見て嘆息する。おそらく昨日はその系統のお仲間があつまる酒場で飲み明かしたんだろうと予想する。まぁいつものことだ。アンガスはその光景を一瞬思い浮かべるが頭を振って隅に追いやる。あまり考えると頭が痛くなってくるからだ


「さて、悪いがエリザとアルマ、馬車の方を頼む」


 アンガスは長身銀髪で皮の鎧を身に包む軽装の笹穂の女性と同じく軽装とダガーを身に着けた少女に声をかけると二人は頷き貸馬車屋に向かって歩いて行った


 馬車は大体いつも北門にある貸し馬車で頼んでいる。馬一匹、荷車付きで一日銀貨1枚、ただし最初に金貨1枚が必要になる。これは馬を死なせた時の為の保証金だ

 この保証金は馬と荷車が無事に戻ってくれば返金される仕組みだ。それ以外に荷車を故意に壊したりしなければ整備に問題があったとしこの保証金からは差し引かれない


 応急処置は自分たちで行わなければならないため、その労力に対する心遣いだ

 馬は、尻を叩いて街の方向を指し示すと一匹でも帰っていくように調教もされており緊急時には馬を先に返しあとから清算する方法をとることも多々ある


 しばらくして御車台にエリザとアルマが乗り込んだ馬車がアンガスたちの前に着き馬車に全員が乗り込んだところで出発する

 北門を通る時になじみの衛兵が冒険者証を確認してから気を付けていけよと手を振ってアンガスたちを見送る。アンガス達もそれに手を軽くふり返しアボルクの街から出発した


 北門を出発したところでアンガスが口を開く


「さて、とりあえず道なりに3番目の休憩場まで行ってそこからは魔の森方面を調査するか。オーガがでたとなると魔の森から獲物を探しにきた可能性があるからな。それぞれの休憩場で休憩し本番は3日目以降になるだろうな」


 全員が了解し馬車を道なりに走らせる


 サランド平原は魔の森とアボルグの町との間にある平原だがそこで取れたものを運ぶため昔からの先達たちが荷車を使いそのうち自然と道ができそれでは不便と1日置きに3か所、簡易な柵で囲った休憩場を作った。そこでは簡易の竈や馬を休ませる施設が作られ普段は無人の休憩場となっている


 休憩場が3か所なのはそれ以上いくと魔の森に近すぎるため危険だからだ。大体の冒険者は北門で馬車を借りこの3か所の無人駅に馬車を置き、周囲で活動をする


 アンガスたち、精霊の宴が交代で御車をこなし日が暮れる頃、休憩場に着いた

 休憩所では何組かのパーティーがすでにおり狩り終えたバイソンをさばいていたり薬草を束にしていたり思い思いにすごしていた。休憩場で人数もいるからか警戒をしている者はほとんど見当たらない。それでもCランクパーティーである精霊の宴が警戒を欠かすことはない


「何事もなく休憩場に着いちゃったねー」


「おいおい、オーガが見つかった報告から結構な時間が経っているんだぜ?油断するんじゃねーよ」


「でも、途中で何組かのパーティーとすれ違ったけどまったく普通だったし見間違いだったんじゃないかなー」


「あいつらはEランクパーティーだった。おそらく手前組だぞ。油断はするんじゃないぞ」


「あはは。俺の筋肉も警戒しろと言っているぞ」


 気楽とも言えるアルマの言葉にトリビスが注意を促したがアルマがさらりと流したのをアンガスが聞き咎めた。途中ですれ違ったパーティーはアンガスは見たことがあったしいろいろ世話をした覚えもあった。おそらく一か所目の休憩場を拠点とし平原の町よりで依頼をこなしていたパーティーだろう。ちなみに最後はトドルがポージングしながら言っているがスルーされる。いつものことだ


「・・・アンガスの言う通りだ。油断はするべきじゃない」


 エリザがまじめな顔をしてアンガスの言葉にうなずくと全員がエリザの顔をみる


「エリザどういうことだ。なにか引っ掛かるものでもあったか?」


「ああ、出発してから3時間くらいしてからやたらと平原の精霊たちが騒がしくしてな。どの位置かはわからないが進めば進むほどうるさいくらいに警戒しろと言っている」


 エリザは答えながらも周りの様子をうかがっている。その顔は真剣そのものだ。その様子を見て精霊の宴の面々は警戒を一段階引き上げる

 エリザはエルフだ。エルフは長命という特徴のほかに精霊と対話できると言われ精霊魔法が使えるのもその特徴の一つだ


 今までも一つ間違えば命を失う場面でエリザの精霊魔法には数えきれないくらい助けられてきている。そのため精霊の宴の面々はエリザを全面的に信頼している。パーティー名、精霊の宴の由来にもなっているくらいだ


「エリザが言うならよほどだろう。依頼の内容が真実味を増したってことだ。トリビスお前からみて魔素の濃さの視え方はどうだ?」


「うーん。ここじゃ魔の森が近いから魔素自体はどこも濃いーな。俺の魔法は当てにしない方がいーぜ」


 この世界の万物すべてに魔力の元である魔素は宿っている。その魔素の大小を探知しその大きさを知っている知識と照らし合わせてその対象を見極めるのが魔素探知だ

 大体の魔法使いは魔素が見える。魔素が高いものは陽炎のように揺らめき立ち上るように見えるしその辺の草木だと草や木などにまとわりつくように見える。人も一緒だ。魔力が極めて高いものは魔素が立ち上って見える


 トリビスは高い魔力持ち魔力操作を精緻に操ることが出来るため最大周囲3キロまで万物の魔素を視ることができるし感じることが出来る

 だが魔の森のように生息するものすべてに高い魔素が宿っているような場所の近くだと近づくだけで空気中に漂うに魔素が漂い霧がかかったように見えたり感じたりするため使い物ならなくなる


 ふーむとアンガスは腕を組み少し考える。トリビスが使えないとなるとエリザの精霊魔法に頼ることにアンガスは方針を決める


「そうか、1日目だがとりあえず気を抜かずに警戒していこう。不寝番を置き4時間置きに交代でどうだ?最初は俺とトリビス、次にアルマとトドルだ」


「アンガス、それでは私の番がないぞ」


「いやエリザは精霊魔法で疲れているだろう?トリビスの魔素探知があてにはできない以上、エリザの精霊魔法が頼りだ。しっかり休んでほしい」


「・・・わかった」


「みんなはそれでいいか?」


 アンガスはエリザに説明するとメンバー全員を見る。全員とも異論はないようだ


「じゃあ、飯にして早々に休もう」


「はいはいー。じゃあ、リーダーが戻るまでにアルマちゃん特性の夕飯を作っちゃうねー」


「お前が作るのかー・・・」


「なになに。トリビス文句あるの?」


 アルムが頬を膨らませてトリビスに近づいていく


「お前、前に間違えて毒キノコいれて大変なことになったろ!てか、ダガーしまえ!怖いわ!」


「まあ、今回はキノコもないしアルマに任せて大丈夫だろう。飯もうまいしな」


「さすがリーダーわかってるー!」


「俺の飯は肉多めで頼むぞ、アルマ!筋肉は肉を食べて作り上げるのだ!」


 トリビスにアルマがダガーを抜き放ち笑顔で迫るがキノコで全員を腹痛にさせた前科があったためそれ以上は言えなかったがアンガスが話をまとめ全員を納得させた。ちなみに最後のはトドルだ。案の定スルーされている・・・


 この日、体調不良が起こることもなく1日目の夜が更けていった


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