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第2話 ギルド依頼1

 アボルクの町の冒険者ギルドでは1人の冒険者が仲間の元に依頼書をもってきた。冒険者ギルドでは朝一に依頼書が張り出され、依頼書を奪い合うのが毎日の光景だ。そんな争奪戦に勝った一人の若い冒険者が胸を張って仲間の元へ戻ってくる


「おいおい。調査で金貨30枚か。破格すぎやしないか」


 依頼書をみてそう声をあげたのはCランクパーティー精霊の宴を率いるアンガスだ。年の頃は30になったばかりだ。

 長身で軽鎧を身に着け盾を相棒にいつも最前に立つパーティーのタンクを担う男だ。赤い髪を逆立て強面だが面倒見がいい男で他の冒険者から慕われている

 依頼達成率もよく冒険者ギルドの評価も高く個人のレベルではBランクの力はあるのではといわれている


 依頼書には


 サランド平原の調査

 報酬:原因判明の場合金貨30枚

 原因がわからなくても金貨10枚

 条件:Cランク以上

 依頼者:冒険者ギルド


 と書かれていた

 罰則規定がないのは調査依頼には虚偽報告の際のペナルティが発生するからだ。万が一にも虚偽と判断されれば最悪、冒険者資格はく奪となる


「たしかに破格すぎるな。調査などEランクかDランクの仕事だろう。Cランク以上と書いてあるのがどうにも気に入らない」


 と言うのは皮の鎧を主体に軽装の長い銀髪に長身の女性だ。精霊の宴では弓を主体に後衛を担う。年齢はアンガルと同じ頃に見えるが笹穂の耳が人間ではないことを示している。耳はエルフの特徴で他にも長命種として知られている。実際の年齢は本人しかしらない


「アンガスもエリザも危険を見つけるのが調査でしょ!それに調査の上以上なしでも金貨10枚出してくれるって最高の仕事じゃない!」


 そう叫びながら訴えるのは先ほど依頼書を持ってきた冒険者だ。年は16になったばかりまだあどけなさを面影に残す青い髪の少女だ。武器はダガーを使い素早さを生かした戦闘を得意とするが主な役割は斥候や罠の解除などだ


 エルフの女性、エリザは嘆息しながらも依頼書を持ってきた少女アルマをみる。エリザとアルマの視線が交差するが、しばらくしてエリザが目を伏せた。エリザが折れた形だ


「まぁ、安全第一で危なけりゃ、すぐ逃げれば大丈夫でしょうよ、リーダー」


 と、軽めの口長で話すのはトリビスだ

 依頼で一緒になったのをきっかけに意気投合しそれ以来パーティーを組んで長い。近接はからっきしだが魔法に関しては王立の魔法学園を首席で卒業するなど一流の腕を誇る

 卒業時には宮廷魔導士になる予定だったが女癖が悪くある侯爵の娘をたぶらかしたとかで王都にいられなくなりその話はなくなった


「んー。そうだな。エリザもトリビスも賛成のようだしその依頼受けるか。調査対象もサランド平原だし近場で優良物件か。トドルのやつはいつもの酒場にいるだろうから明日の朝、出発することを伝えておいてくれ」


「さすが、アンガス!エリザもトリビスも愛してるー!」


「ガキは趣味じゃねーよ」


「ガキじゃないもん!レディーだもん!」


「はいはい!じゃれつくのはそこまでな!俺は受付へ行ってくるから後は頼むぞ」


 アンガスの判断に喜んだアルマがトリビスとエリザ相手にじゃれついていたがエリザに襟首をつかまれ、猫の子を持ち上げるように明日の準備の為に冒険者ギルドを出て行った

 アンガスは依頼書をもって受付カウンターへと向かった。受付で依頼を受注するためだ


 アンガスが受付へ行くと女性が書類をさばいていた


「よう。ターニャ。今、いいか?」


 アンガスがターニャと呼んだ女性に声をかけると下を向いて書類をさばいていた女性が顔をあげた。眼鏡がよく似合う緑色の三つ編みの女性がアンガスをみる


「あ、アンガスさん。どうもすいません。きづかなくて。それでどうかしましたか?」


「おう。実はこの依頼の件をもう少し聞きたくてな」


 そういいながらアンガスは依頼書をターニャに見せる


「あ、それですか。実は最近、サランド平原で活動している冒険者からオーガをみたという報告があったんです。それでギルドとしては万が一があってはとCランク以上で依頼を出したんですよ」


 ターニャのいうことでアンガスは破格な報酬に納得がいった。オーガは人型モンスターで成人の男よりも一回り大きく力が強いモンスターだ。知恵もそこそこに持っており返り討ちにした冒険者の装備を使うこともあり討伐ランクはCランクだがそれが群れとなるとBランクに達する


 ましてや現れた場所がサランド平原だ。アボルクの町の北に広がる草原地帯で薬草が豊富に生えており街の薬師の原材料の大半とれる。またこの平原で生息するバイソンの肉が街の食糧事情をささえている


 現れる魔物も主に低ランクのゴブリンやウイングホークしかおらず滅多に高ランクの魔物は現れない。安全性が高く駆け出しの冒険者の多くが活動している場所でオーガがいるとなると街の経済的にも冒険者の活動的にも大きく支障をきたす


 それにもしターニャの話が本当ならサランド平原より北にある魔の森で異変が生じた可能性がある。最悪魔物の大量発生だ


 すくなければ何百多ければ万に達する魔物がアボルクの町に襲い掛かる。いくらアボルクの町が魔の森に対しての防衛都市として意味をもち堅固な城壁の機能を持っていても耐えることはできないだろう。蹂躙されるなど悪夢でしかない。冒険者ギルドも慎重に対応しなければならなくなったのだろう


「それでどうします?依頼をお受けになられますか?」


 ターニャの尋ねる声にアンガスは判断する


「じゃあ。そのクエスト受けるわ」


「ではこのクエストはアンガスさんたち精霊の宴が受けるということで処理しておきます。ところでお気づきになられましたか?

 いまこの街にはアンガスさんたち精霊の宴しかCランク以上のパーティーがいないんです。ほかのCランクの方々やBランクの方は他の依頼で出払っていまして・・・

 実のところこの依頼は精霊の宴への指名依頼なんですよ」


 ターニャがいたずらっぽく笑い最後の方は声を小さくアンガスに耳打ちする。アンガスたち精霊の宴は日ごろからの積み重ねでギルド内の評価も高い。それだけにターニャは内情をおしえてくれたのだろう


「まじかよ。どうりで他の奴らの顔をみないとおもったぜ。って、指名依頼か。するとこの依頼はその上からの依頼か・・・

 指名依頼になれば責任も発生するしな。この気の回し用は爺の仕業か。すると朝いちばんにどや顔で依頼書を持ってきたアルマがかわいそうになるな」


 アンガスは爺と呼んだ者とアルマの顔を思い浮かべ苦々しく笑う


 C級以上には冒険者ギルドからの指名依頼の受託の義務が生じる。多額の報酬がある面、責任がつきまとう。断るだけでもペナルティがあるのが指名依頼だ。おそらく依頼内容も原因の究明にまでなっていたはずだ


 それを調査だけで済ます。それだけ危険が付きまとうことを予測してのことなのだろう。原因究明にまでいたればサランド平原以外にも魔の森まで足を運ぶことにもなりかねないそうなればC級パーティーでは荷が勝ちすぎている


「どなたかを思い浮かべたかはしりませんが冒険者ギルドからの依頼ですので安心して依頼をこなしてください。今回は違約金はありませんので特に申し上げることはありませんが命はくれぐれも大切にしてくださいね」


 ターニャは苦々しく笑うアンガスに優しく微笑み声をかける

 アンガスは照れくさそうに頭をかきながらターニャに背を向けひらひらと手を振りながらギルドを出て行った



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