第1話 若返って異世界の地に立つ
はじめまして
初投稿先品になりますがみなさんに楽しんでいただける作品にできるように頑張っていきたいと思います
ストックがあるうちはどんどん行きます
ストックがなくなったら週に1回~2回程度の更新になると思います
その日一人の刀鍛冶がこの世を去った
名前を片岡清十郎。享年86
戦国の世の刀工として生き自らの刀を見極めるために兵法にも通じ刀工と剣術を極めた人物
決して表舞台には出ずひたすらに刀工を極める為、86年の人生を費やした者
これで話は終わるかと思われた
(ここはどこだ)
先ほどまで死病に侵され床に臥せっていたはず。しかし眼前には草原がひろがっており見える範囲では田畑もなにもなくたださわやかな風と青く澄んだ空があるだけの場所に清十郎はたっていた
(儂は確かにあのとき死んだはずだが・・・)
清十郎はそう呟きながら己の両手を見る。死病に侵され、骨と皮だけになった死ぬ間際の身体とはまったく違う若々しく張りのある両手がそこにはあった
よく見れば身に纏う服装も変わっている。白の水干、白袴、腰には一振りの刀がささっていた
腰の刀を鞘から抜き放ってみる。陽の光に照らされ白金に輝ききれいな波紋が波打つ刀には見覚えがあった。忘れるはずもない清十郎が死病に侵されながら拵えた最後の一振りだ
(こやつだけは変わらぬ)
清十郎は苦笑いしながら抜き身の刀を鞘にしまい腰に差しなおしあらためて周り見渡す
黄泉の国かと思ったが先ほどから清十郎は懐かしい感覚を感じていた。死病に侵されてから久しく感じていなかった腹が減ったという感覚だ
先ほどから腹が鳴り続けている。食べるものを見つけるため清十郎は勘を頼りに歩き出す
(ウサギでもおるといいがなぁ)
清十郎は生前死病に侵される前にたべた好物の野ウサギの野趣あふれる味を思い出しながら一刻ほど草原を歩き続けたところで清十郎は足を止めた
(何者かが戦っているな)
わずかに清十郎の耳が争う音を拾う
そう遠くはない。空腹感を理性で押し込め気配をうかがう
清十郎は争いの音がする気配の方へ視線を向け目を凝らす
(あれか。しかしあれは・・・)
清十郎がみたものは人の身の丈をゆうに一回りか二回りは超える青鬼6匹がいた
(鬼がいるとは、ここはやはり黄泉の国かもしれぬ)
鬼が全部で6体、しかし戦っているのは1体の鬼だけ。周りの鬼たちは何もせずそれをみている状態だった
清十郎はよくよく鬼たちの動きの先をみてみると3人の人間が鬼の攻撃を必死によけている姿があった
(黄泉路のお仲間が戦っておるわ。しかし、異国の人間も行き着く先は一緒か、妙なものを感じるな)
清十郎は戦っている3人の髪の色が赤、銀、灰色と黒髪でないことに場違いな感想を抱くがとりあえずいったんそれらのことは頭の隅においやり戦いを観察する
3人は前の一人が盾を持ち攻撃をさばき、時折隙を1人が切り込み、
盾役の後ろから弓を放ち何かに鬼を近づけさせないように守るように連携して動いており鬼もなかなか攻め切ることが出来ないようだった
(ほう、なかなかやりおるが長くは持つまい。しかしあの鬼たちも質がわるいな獲物を囲んで楽しんで居るわ。一思いに殺せばいいものを)
清十郎は戦いを観察し鬼たちの悪趣味に辟易としながらも3人の連携した戦いに感心したが徐々に3人の動きが悪くなっているのも同時に見抜いていた
それに対し鬼は自分の攻撃がなかなか当たらず苛立っているようでやみくもに腕を振っているが一撃一撃に鋭さがあり体力はまだまだ余裕がありそうだ
それにしても何を守っているのかと清十郎は眼を凝らしよくよくみる3人の後ろには2人が倒れていた。遠目からでも動いてはいない様子を見て取れることからすでに事きれているか気をうしなっていることがうかがえた
(なるほど・・・後ろに2人をかばい戦っているか。さてどうするか・・・
鬼に対して自らの力を試すのも悪くないな。あの状況なら戦いに割って入っても文句は言われまい)
清十郎は鬼と戦えるかもしれない好奇心に心がくすぐられていた
生前諸国をめぐり自らの刀を見極めるため各地の兵法者と腕を試しあった在り日の自分
その自分が鬼とどこまで戦えるか
わずかの逡巡のうち清十郎は戦いに割って入ることを決めた
戦うことを決めた清十郎の決断は早かった
鬼たちに対して威圧しこちらに意識をむけさせると手前の一体と距離を詰め清十郎は居合で首を飛ばす
(ふむ。鬼とはいえ、体の作りは人と同じか)
清十郎は鬼の首を飛ばした感触を感じ、首を飛ばされた鬼がその生命活動を停止する様をみやり普通にやれると手応えを感じていた
その後、5体の鬼が仲間を殺されたことで清十郎を敵とみなしとびかかろうとした時には距離をつめさらに2体の鬼の首をとばす
残りの3体が清十郎を取り囲むが意識をはずした瞬間に3人の人間が背後より1体の鬼を襲い倒していた
(やるな)
清十郎は3人の動きを確認し素直に心の中でほめる
別段、後ろから襲うことを清十郎は卑怯とは思わない。油断する者が悪いのだ
襲われることを常に意識しておかねば生きぬく事ができないことは生前、散々に味わっている
常在戦場、その心こそあるべきだと清十郎は思う
残り2体。清十郎は刀を自然体の形で持ち、半眼で静かに待つ。夢想の型
それを見ていた3人のうち赤髪の男がなにやら大声を清十郎にかけているがそれを清十郎は無視した。他者から見ればそれは隙だらけにみえる構えだということを清十郎は十分に理解していたからだ。おそらく心配してのことだろうことは3人の気配でわかる
そのうち2体が同時に動き出す。どうやら清十郎をこの場の最大の敵とみなし連携して殺すことに決めたようだ。2体が同時に清十郎に襲いかかる。人間では決して出すことができない速さが鬼の膂力の強さを物語る
だが、次の瞬間、清十郎を中心に円を描くように白刃が煌めくと2体が清十郎の脇を襲い掛かった速さそのまますり抜け倒れていく。倒れざま胴と首が離れ鬼たちは動かなくなった
あたりは静かな静寂に包まれ唖然とする3人をよそに清十郎が納刀する音だけ響いていた
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