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4 思いのよらない事は、立て続けに起こるものらしい

 

「な、何でサヤがあそこにいたんだ?」

「ふー....アンタを探してたのよ」


 ユウスケとナイとサヤは、裏道の空き家に入ってそこで話していた。


「でも、お前は...」

「わ、私は気が変わったの!」

「サヤ?」


 ナイが最後に呟くと、サヤが顔を向けるとすぐにユウスケの方を向いた。


「この子の事も聞きたいけど、とりあえず今置かれている状況を話すわ」


 そう言いってサヤは、ユウスケが今置かれている状況を説明した。


「なるほど、それでやたらと俺達を探している人が多かったのか。....そんなにヤバいことしたのか俺は?」

「そうよ。もう少し自覚した方がいいわよ。オウルにケンカ売って、まともに生きていけるわけないんだから」

「うぅ....」


 サヤの強めの言葉にたじろぐユウスケ。


「それでユウスケは、あの後どうしようとしていたの?」

「あぁ、俺はあの後....」


 そう言ってユウスケは、サヤと別れてからの行動を話した。


「なるほど、ユウスケの故郷にその子を預けようと帰ろうとしたのね」

「でも、なんでまた助けてくれるんだ?」

「そ、それは......も、もし、私の名前でもだされたら今後の仕事に影響するからよ!」


 サヤは目をそらしながらそう答えた。


「それで、これからなんだけど」


 と切り替えてサヤから3つの案があると言われる。


「1つ目は、強行突破してユウスケの南の村に行く。ただし、その後も追ってこられて捕まる可能性は高い。」

「ふむ」


「2つ目は、収まるまで隠れ続ける。ただし、いつまで隠れ続けるか不明で、いつかは尻尾をつかまれる。相手はこの社会の裏のドンであり、あらゆる情報網を持っていると考えるべき。」

「ほう」


「3つ目は、北の門から北へ脱出。ただし、北は魔物の巣窟でいけば帰ってこれない危険地帯。噂では、最古の魔王の呪いがあるやなんやで。」

「ふむふむ」

「で、どうする。私的には....」


 と言いかけたところでユウスケが言う。


「3だな」

「さ、3?」

「うん」


 ユウスケの発言に驚きが隠せないサヤは、もう一度危険性を伝えた。


「いやいや、ないでしょ危険地帯よ? そっちに行く方が危険だわ」

「でも、もし追手がきても魔物が追い払ってくれるかもしれないし、危険地帯っていうなら死んだとも思われるんじゃないか」

「そうかもしれないけど....」

「一緒に来てくれとは言わない、ただ案内だけでも...」


 その言葉を聞き、サヤは少し食いしばった。


「あー分かったわよ、ここまで来てまたさよならじゃ、もやもやして嫌なの。本当にいいのね」

「あぁ、そっちの方が冒険って感じだし」

「あんたねぇ....」


 そこに外から手下たちの声が聞こえてきた。


「この辺に怪しいやつが入っていったという情報があった。かたっぱしから探せ!」

「おー!」


 それ聞き、小声で話し始める2人。


「ひとまずここを出ましょう。北の門には私の知人がいるから、そこから逃げるように手配してもらうわ。ついて来て」


 うなずくユウスケとそれをマネするナイ。

 そして、北の門へと移動し始める3人だった。



 ――北の門付近――



「西と南に比べて、やはり北は手下共が少ないわね。やっぱりわざわざ死ににいく地帯は択ばないと踏んだのかしら?」

「そりゃ、ラッキーだな」

「そうかもね。ひとまず、私が知り合いに交渉をしてくるからこの辺で待ってて」


 ゆっくりと頷くユウスケ。

 サヤが物陰や人の後ろに隠れながら、門に近づいている間に、ナイが話しかけてきた。


「ユウスケ。これからどこ行く?」


 その問いかけに、やさしく答えるユウスケ。


「これから北に行くんだ、本当は俺の村に行く予定だったけどいけなくなったから、一旦北に行くんだ」

「なんでいけなくなった?」

「それは....う~ん..なんていうか、怖い人たちが俺達を捕まえようとしているからかな」

「それは、私に痛いことさせたやつら?」


 その問いかけに一瞬言葉に詰まるユウスケだったが、すぐに答えた。


「そうだよ。だけど、何か仕返しをしようとか考えちゃダメだよ」

「どうして? ユウスケもサヤも困ってる」

「う~ん、そうなんだけど、それをしちゃったら俺達も一緒なんだよ」

「一緒?」


 ユウスケは、腕組みをして少し頭を左右に振ってから答えた。


「なんていうのかな。相手が悪者で攻撃をして痛い思いをしたからって、こっちも同じように攻撃して痛い目を合わせたら、何も変わらないし自分も辛いんだよ」


「辛い..?」

「自分でも何言ってんだと思うかもだけど、なんでもすぐに攻撃とかやり返すとか考えちゃだめなんだよ」

「....」


 ナイは黙ってしまう。

 それをみて、ナイの頭にポンと片手を置くユウスケ。


「まぁ、とりあえず今は無事に逃げられることを考えればいいんだよ」


 そう言ったユウスケの手は少し震えているように見えたナイだった。

 すると、後ろからサヤが少し息を切らしてやって来た。


「おまたせ....」


 いきなりいなかったはずのサヤの声を聞いて驚くユウスケ。


「びっくりした。後ろから返って来てたのかよ....」

「とりあえず、次の馬車でこっそり載せてもらえることになった」

「おぉー、順調だな。」

「とりあえず、その馬車まで案内するからついて来て」

「おう」


 そのまま、サヤの後をユウスケとナイはついていった。

 3人は、馬車に詰め込む荷物置き場で身を隠しながら見ていた。


「で、どの馬車だ?」

「あの真ん中の馬車よ」


 そこにあった馬車は、馬1頭で荷台には藁の山が載っているものだった。


「あの藁の山のやつか?」

「そうよ。あの中にもぐって王都を出るわ」


 そして、3人が人目を盗みその馬車に乗りこもうとした瞬間だった。

 突然、北の門が閉じられたのだった。


「何事だ!?」

「なんで急に門が閉まるんだ!早く開けろ、もうこっちは出発の時間だ!」


 周囲からは、文句が一斉に放たれた。

 だが、門が開くことはなかった。

 それを見て、3人は荷物の後ろにまた戻った。


「何が起きているの?」

「どういうことだよ、これ?」

「分からないわ」


 その状況に混乱するサヤとユウスケ。

 そして、門の前に現れたのは眼鏡をかけて、両手を後ろで組んだ人物だった。


「これより、この北門は封鎖します。理由は、オウル様の命令のためです。皆様お分かりですね。」


 その人物がそう発すると、今まで周囲から罵詈雑言を言っていた奴らが急に静かになった。


「聞いたか、オウル様だってよ....」

「やべぇ、これは素直に聞いて早く立ち去るのが一番だ....」

「おいそうすると、あいつが側近のネイガか?」

「そうだろ、その特徴的なメガネと話し方、絶対そうだ」


 周囲ではそんなこそこそ話がされていたが、3人の所までは届いていなかった。


「おい、サヤどうするんだ。それにあいつは誰だ?」

「まさか、側近のあいつがここまで来るとは想定してなかったわ」

「側近? 誰だ?」


 ナイとユウスケが質問すると、サヤが答え始めた。


「あいつは、オウルの側近の1人ネイガよ。側近の中で一番几帳面で、抜け目がないやつ。でも奴がどうしてここに?」


 そんな話をして様子を見ていると、北門にどんどんと手下が集まってきだした。


「ネイガ様、言われた通りメンバーを増員したしました。ですが、本当に北門にも増員を割いてよかったのですか? この先の北がどういう場所かは奴らでも分かるはず、そこにわざわざ逃げる可能性は低いかと」


 そう部下が発現するとネイガは、背を向けたまま話だした。


「そういう思考があるから、格下の相手に逃げられるのです。相手は、ごみ以下の奴ら大半があなたの言う通り、他の門からの脱出を図るでしょう。ですが、まれに常識がない奴もいるのです。そんな奴らは、手薄の箇所から脱走するのですよ。これは、あくまで念の為の手段。他の門は、私以外の側近が既に包囲しているでしょう。」


 ネイガが、メガネをクッと片手で上げる。


「なので、私は、可能性が低いがゼロとは限らない北門に来たのですよ。お分かりになって?」

「は、はぁ....」


 その表情から、部下は完全には理解していないとみて、ネイガは軽くため息をついた。


「あなたも、まだまだですね....」


 そして、ネイガは部下にメンバーの配置指示を出し始めた。


「おい、なんかやばくないか」

「これは、積んだかもしれない....」

「えっ....」


 そのまま2人は黙ってしまう。

 周りには徐々にメンバーが配置しだされ、身動きがとりずらくなってきていいた。

 するとナイが唐突に発言した。


「あの藁にはいつ行くの?」

「いや、ナイそこには....」


 そうユウスケが言おうとしたとき、サヤが意を決めたようにユウスケを見た。


「ユウスケ、やっぱりあの藁に隠れよう」

「えっ」

「ここにいたら、結局は見つかる。でも、藁の中ならもしかしら、やり過ごせるかも」


 サヤの決断に迷っている暇はなく、すぐにユウスケはその提案にのることにした。


「分かった」

「それじゃ行くよ!」


 そう言って3人は、一瞬のスキをついて、馬車の藁に突っ込んだ。

 突っ込むと、ユウスケの頭に何か固いものがぶつかった。


「いってぇ....」


 藁で前が見えず何かは分からなったが、とりえずそのままじっとすることにした。


「みんな、入った?」

「おう....何かあたったが....」

「ナイも入った」

「よし、ひとまずは成功したみたいね」


 その後も、馬車は動くことなく中身を見らずに時間が経過していった。

 すると、外が騒がしくなってきた。


 耳を澄ませると何かを壊す音が聞こえてきた。

 サヤは藁の隙間から外を見ると、驚きの光景が見えた。


 何と、次々と馬車の荷台を壊し始めていたのだった。

 馬車の主は泣きつく様にやめてと叫んだが、払いのけれ、粉々に破壊されていた。


 壊すと次の場所というように、次々と破壊を行っていた。

 それを見て、冷や汗をかき始めるサヤ。



「(どうする、どうする、どうする....)」



 その場で、何か突破できる案を考えたが、すぐにでてこず回りからの破壊音だけが響いていいた。

 そして、徐々に徐々に破壊音が近づき、隣の馬車までやってきた。


「(やばい、もう次だ。もう終わりだ....)」


 そんなことを考えていると、当然載っていた馬車の主が大声を上げる。

 そして馬の尻を鞭を叩いた。


「ふざけるな、こんなところで時間を食うわけにはいかなんだ!」


 そう言って、馬が閉まっている門めがけて走り出した。

 まさかの行動に周囲は唖然としていたが、ネイガは違った。


 咄嗟に、ネイガは片腕を前に出した。

 その腕には、紫色のリングがはまっていた。そしてこう命じた。


「そこの馬直ちに止まりなさい!」


 すると、馬の動きが突然ゆっくりとなった。

 まるで時間の進みが遅くなったようにゆっくりと動いていた。


「何にっ!?」


 その光景に乗っていた馬車の主は驚いたが、主は思いもよらない行動をとった。

 何と、後ろの藁の山に手を突っ込んで、いびつな形をした銃を取り出し門めがけて放った。


 大きな破壊音と共に門が破壊され、ネイガも放たれたものをよけると馬の動きが元に戻り、勢いよく門の外へ飛び出した。

 まさかの結果に藁に隠れていた3人は驚き目が点になっていた。


 後方からは、ネイガの部下達が馬に乗り馬車を追いかけ、その場から攻撃を始めた。



「あの馬車を止めろ何か隠しているぞ。」



 銃撃戦に変わり、直後馬車の主は後方からの銃撃に打たれて、馬車から落ちてしまう。

 だが、馬は止まることなく走り続ける。

 そして、整地されていない道のため段差で藁が落ち初め中に隠れていたナイとユウスケの体が見えてしまう。

 それを遠くから見ていたネイガが気付き、大声で近くにいた部下に指示をだした。


「その馬車の荷台に何者かが載っています。すぐさまとらえなさい」


 その命令に部下達は、すぐさま馬車を追いかけ始めた。

 見つかったユウスケ達は、隠れることをやめてサヤは馬の手綱を握り操り始めた。

 ユウスケとないは藁を後ろにずらし前の方へと移動した。


 だが、部下たちの乗っている馬の方が、荷台を引く馬よりも早く追い付かれてしまう。


「逃がさんぞ!」

「今すぐ止めろ!」


 その言葉にサヤは従うことなく、馬に鞭を打ってスピードを上げようとした。

 が、徐々に追っていく奴らに包囲し始められてしまう。


「このままじゃ....」

「ここまでか....」


 ユウスケとサヤが諦めかけた瞬間だった。

 ナイがおもむろに立ち上がった。


「ナイ....?」


 ユウスケがそう声をかけたが返事がなく、ただ背を向けて立っていた。


「■□◆◆□●◎▲▼」


 するとナイが何かをつぶやいたように聞こえた。

 が、何を言っていたかまでは聞こえなかった。


 そして数秒後、目の前からものすごい突風が吹き荒れた。


 その風は、両隣にいた追ってきた馬たちを吹き飛ばした。

 一瞬何が起きたのか理解できずにいたが、隣にいた馬が一瞬で消えたと思っていると次は、サヤが大きな声をあげた。


「前に魔物が!!」


 それに反応し前を向くと2体の禍々しい獣の様な魔物が現れ、こちらに走って来た。

 距離的によけられないと思い思いっきり目を閉じる2人だった。


 だが、何事も起きなかったためゆっくり目を開けると後ろで悲鳴が聞こえた。


 なんと追ってきていた奴らに2体の魔物が食らいてついたのだった。


「な、なんだよあれ....あれが、魔物....」

「なんでか私たちを無視して後ろに行ったのかは不明だけど、このまま逃げましょう!」


 すると、立っていたナイが後ろに倒れてきたので、ユウスケが抱きかかえるように掴んだ。

 ナイの顔を見ると眠っているようだった。


 そして、そのままユウスケ達は、馬車でその場から逃げきった。


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