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忍び寄るギュゴゴゴ!

 さて、明日を迎え、本日からダイエットをすると決めた訳だけども、実は現在、俺は自分の体重が何キロあるのかすら分かっていなかったりする。

 計画を立てるにしても、目標を設定するにしても、自分が現在地を知る事は必要な訳で体重計へとライドオン。

 ピピピっと小気味良い音と共に数値が表示された訳だけども。

 

 92.4キロ 体脂肪率33%


 ……まじか。

 俺の記憶違いでなければ、以前に(と言っても10年以上前)量った時は確か70キロ前後だった筈なんだが。ちなみに体脂肪率は覚えてない。いや、70キロでもスリムとは言えない体型だったけども、デブと言うほどではなかった筈だ。それが92キロ33%とは…… まごう事なきデブですわ。そりゃお袋も痩せろって言い出す訳だな。

 とりあえず、目標を決めよう。

 70キロだと元に戻るだけで何の面白味もないから65キロくらいかな?


 

 しかし目標は決めたものの、昨日までダイエットを始めようなどと欠片たりとも考えた事もなかったが故に、俺にはその手の知識がない訳よ。

 そんな俺にでも思いつける事といえば、運動してカロリーを消費するとか、食事制限で摂取カロリーを減らすって事くらいだ。


 運動かぁ、運動は嫌だなぁ。

 基本的に俺ってば働きたくない人間だから。

 働きたくないは人偏を取っ払えば、動きたくないになり、つまりは運動したくないって事でもある訳よ。

 実際は働かにゃ生きてけないからそれなりには働くしある程度は動いたりもしなきゃだけどね。


 となると、必然的に摂取カロリーを減らす方向でって事になる訳で。

 真っ先に脳裏に浮かんだのは断食。

 でも、これはダメだろ。何がダメかってのはよく分からんけども、きっとダメだ。

 人間ってのは寝てるだけでも腹は減るし、多少は何か腹に入れときたくもある。

 食べるにあたってNGなのは肉、というよりも脂かな。バターや油を使う炒め物も控えるべきか。

 逆に食べても問題なさそうなものと言えば、野菜か。

 野菜と言えばキャベツだよな。そしてキャベツと言えば野菜である。

 異論は認める。ただしトマト、てめーはダメだ。

 世間様が何といおうともトマトだけは断じて認める事まかりならぬ。

 何故ならば嫌いだから。

 そんな訳でキャベツを食べる事にしよう。

 キャベツならどれだけ食べても大丈夫!

 無事に成し遂げた暁にはキャベツ万能説を提唱しようと思う。





 主食キャベツ、おかずもキャベツ。

 そんなキャベツライフに突入して1週間。

 経過は順調だ。

 早くも体重は3キロも減ってる。

 ふひひひっ

 このペースで行けば1か月で12キロか。このペースなら8か月後に空も飛べそうってのは冗談だとしても、3か月もあれば余裕で目標を達成出来るな。これなら2018年をスリムボディーなおっさんとして迎える事が出来そうだ。

 ダイエットって大変だ! みたいなイメージがあったけども楽勝じゃん。

 と、思っていた時期が俺にもありました。

 

 順調だったのはキャベツライフに突入して3週間くらいまでだったんだ。

 3週を超えた頃から徐々に体重が落ちなくなってきたんだよ。

 具体的にいうと、3週間で86キロまで落ちた後は、格段にペースが下がってその後の2週間で1キロ減の85キロだ。

 トータルで見るのなら一か月で7キロ減ってのは結構な値だと思う。

 でも、今現在は明らかに大ブレーキ&足止め状態な訳で、楽観できる状況でもない。

 何でだ?

 訳が分からん。少なくともカロリーはきっちりと制限出来ている筈。

 摂取しているのはキャベツと水分(缶ビール含む)だけな筈なのに。

 それに空腹感が半端ない。

 相当な量のキャベツを腹に詰め込んでいるのに食っても食っても空腹感が押し寄せてくるんだ。

 一度、胃袋の限界までキャベツを詰め込んでみた事もあったけども、それでも満足感は得られないというね。

 水分摂取の為にルイボスティーを愛飲しているんだが、一口、胃の腑へと流し込もうものなら、ギュゴ! ギュゴゴゴ! ゴゴゴゴゴ! って感じの物凄い音が発生し始める始末。

 どこぞの魔王様でも降臨なされたのかって感じ。

 胃袋さんとしても、少しでもエネルギーを確保しようとしているんだろうが、済まんね、胃袋さんよ。

 ルイボスティーにエネルギーというかカロリーはほとんどないんだよ。

 むしろ、必死に動けば動くほどエネルギー面ではマイナスになってるのではなかろうか。

 俺の目的としてはそれでOKなのだけども、結果が付いて来ない状況ってのは流石にモチベーションを維持するのも大変だ。


 せめて原因が分かればなぁ。

 ここ一か月で摂取しているのはキャベツと水分(1日1本の缶ビールを含む)だけな筈だよな。

 厳密にはキャベツにはドレッシングも使っている訳だけども、ちゃんとダイエット用のを使っている。

 特に問題はない筈だ。

 いや、本当にそうなのか?

 調べてみた方が良いかも知れんね。

 そんな思いからドレッシングの栄養表示を見てみれば。

 大匙一杯当たりのカロリーが28㎉。

 焙煎ゴマの方に至っては38㎉なのね。

 キャベツ自体のカロリーが確か100g辺り23㎉くらいだったよな。

 なにこれ。ドレッシングのカロリーってこんなに高いの?

 カロリー面だけでいうのなら、ドレッシングの方がメイン食材じゃんよ。

 使用油分3分の1とかコレステロール0とかヘルシーとかデカデカと書いてある割に、カロリー表示は裏面に小さく表示とか、なんというトラップ。

 ダイエット用じゃないドレッシングは一体どれだけ高カロリーなんだろう。

 使用油分3分の1をデカく表示してるって事はざっと3倍くらいはあるんだろうなぁ。

 カルビなみの高カロリーのサラダも充分にあり得そうだ。

 ちなみに350の缶ビールは130㎉くらい。

 ヘルシー=低カロリーって漠然としたイメージがあったけども、意味合い的には健康的なって訳だけだし、標示的には嘘ではないってところがまたイヤラシイよな。


 かなり話が脱線してしまった感があるんで戻すけども、俺のダイエットが足踏み状態になっている理由は恐らくこれだろうなぁ。

 キャベツなら大丈夫だとガンガン食ってたんで、必然的にドレッシングの量も増えてたって訳。

 その所為で摂取カロリーも増えて結果的にペースダウンしてたと。

 それならば、ドレッシングはなしで、本当にキャベツオンリーならOKだろう。と言いたいところではあるけども、紋白蝶や兎ならともかく曲がりなりにも霊長類ヒト科のホモサピエンス♂を自認する俺。

 3食全てが何の味付けもない生キャベツは正直しんどい。

 という訳で、最寄りのスーパーにてカロリーの低そうなドレッシングを物色してみれば。

 あったよ、ノンオイルドレッシングってやつが。

 流石に0㎉ってのはなかったけども、大匙一杯当たり10㎉以下のものはいくつかあった。

 片っ端から買い込み味見をしてみる。

 不味い、不味い、不味い、お? これは結構イケるね。

 良かった。これなら俺は紋白蝶にならずに済むかも知れん。 

 そのドレッシングとは。

 青じそドレッシングである。

 これが当初の想定よりも遥かに長引く事となるダイエットライフを力強く支え続けてくれた、俺と青じそドレッシングとの出会いだった。


 そんな訳で早速ドレッシングを変更してみる。ついでにキャベツを食べる量もある程度控えてみる事に。

 その後、体重は再び減り始める。

 どうやらドレッシングが原因だったという俺の予想は外れてはなかったみたいだな。

 めっちゃ押し寄せる空腹感に関しては何の手も打ててはないけども、摂取カロリーさえ抑えれば体重自体は減っていくだろう。

 無事にダイエットが完了したら、リバウンドしない程度に食べれば良い。

 それまでの辛抱だ。耐えろ俺。

 だが、その考えが非常に危険なものであるという事に俺はまだ気が付いていなかったんだ。


 1週間、2週間と順調に体重は減り続ける。

 それに比例するように空腹感による胃袋さんの魔王化もハイペースで進行していってるような気もしなくもない。いや、ここまで来ると空腹感って生ぬるいレベルじゃなくて飢餓感といっても過言ではないかもね。でも結果は出てるんだ。だったら耐えるのみ!



 そして遂にその時は訪れる。

 それは高速道路を運転していた時の事だった。

 4tトラックドライバーである俺は、当然スピードを出し過ぎない運転を心がけている訳なのだけども、突然スピードメーターが読めなくなったんだ。

 読めなくなったと言われても意味が分からないかも知れないけども、俺にもよく分からない。

 見えてない訳じゃない。多分、視界自体はクリアである筈だ。

 針がどこを指しているのかも分かる。

 ただ、それが時速何キロを指しているのか認識が出来ないんだよ。

 あ、これはヤバい。

 あれ? ヤバイって何が?

 そもそも俺は何をしてるんだっけ?

 何でこんなところにいるんだ?

 いや、仕事だろう?

 仕事? 仕事ってなんだ?

 どんどん訳が分からなくなっていく。

 錯乱状態に陥っていく俺の視界にパーキングエリアの看板が映る。

 ハンドルを切り、パーキングへと飛び込んだ。


 何とか停車し、ぐったりとシートに身を埋める。

 一先ずの身の安全の確保に安堵する事もなく、その思考回路はたった一つの事だけに収束していく。

 

 食べなきゃ。


 一応、念の為に持ち歩いていた秒速チャージのゼリー飲料を手に取り一息に流し込む。

 

 足りない。


 もう1本。一心不乱に吸う。


 2本目も瞬く間に飲み干す。


 まだだ。


 まだまだ足り――――――




 

 

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