Everyday
更新が遅れてすみません…
そしてキリが悪くなり長くなってすみません…
スマホで読む場合目が疲れてしまうので、少しずつお読みになって下さいね!
キーンコーンカーンコーン……
自己紹介に気を取られすぎていて、始業式の存在をすっかり忘れていた。確か……体育館は入学式のセッティングが既にされているから校庭でやるんだったよな?早く行かなきゃマズくね?
「やべ!西園に怒られる!」
「急ごうぜ!」
さすがのみんなも焦りを見せている。どうやら西園先生を怒らせるとヤバいらしい……なんて言ってる場合じゃねぇ!
俺はすぐさま教室を出ようとドアの方に向かった。ところが大多数はなぜか俺とは反対方向に走っていた。
「おっさき〜♪」
大希が小さくウインクをして窓の桟に手をかける。そしてあろうことか、そのまま外に飛び出したのだ。
大希だけじゃない、クラスの大半が同じように窓から宙を舞い、校庭に着地していく。
俺は自分の目を擦った。頰もつねってみた。痛かった。
「……全く、あいつらには学習能力が備わってないのか」
「あはは……」
「みんな相変わらず元気だね〜」
大河のもっともな反応に美優が半ば呆れた顔で苦笑いし、一方で理玖は楽しそうにそれを眺めていた。
「流星、あの馬鹿どもに悪影響を受けないようにな」
陸人にそう言われて、俺の心境は何とも言えないくらい複雑になる。少なくともここにいるのは俺の知らない高校生だ。
ひとまず教室に残っていた10人に満たないクラスメイトと一緒に廊下に出る。鈍い拳の音が聞こえたような気がしたが、気のせいだということにしておこう。
********
校長先生の話のみという日本一短い始業式が終わり、教室に戻ってきたのがあの衝撃から10分後だった。
他のクラスはこれで帰れると騒ぎながら廊下を走って行くのだが、なぜかこのクラスだけは居残りを命じられていた。さっきの飛び降りで連帯責任を取らされている……という訳ではないらしい。
その証拠に、俺以外のクラスメイトは皆休み時間のようにくつろいでいる。スマホでゲームをする奴、友達と喋る奴、ポテチの袋を開けて食べ始める奴……西園先生が入学式の準備で教室には来ないと言っていたとはいえ、この緩んだ空気は少しおかしい。いや、これが普通なのか?
(そういえば後は遠藤に任せている、って言ってたよな……)
もしかするとその遠藤って奴が来るのを待ってるのか?なるほど、それなら納得が––––––––
「梓からの伝言、流星以外は外せだと」
「「「うぃーっす」」」
「いかねぇよ!?待て大河、どうして俺だけ……」
「おお大変!流星くん〜梓怖ぇから殺されないようにな〜?」
「なんだとぉっ!?大希、もっと詳しく聞かせろ!!」
しかし俺の願いも虚しくクラスメイトはほぼ全員脱兎のごとく教室を後にする。(今度はさすがに扉からだった)なんて友達を見捨てるのが好きな奴らなんだ!俺が明日から不登校になってもいいのかよ!
「あ、もうこんな時間!私もそろそろ行かなきゃ」
「入学式の挨拶するんだったよな。頑張れよ」
ありがとね!と言って美優も教室を去る。なんてことだ、さらに追い討ちをかけて来るなんて……美優さえいれば救われたのに……っ!!
「……さてと、俺らも邪魔みたいだし行くとするか」
「大丈夫だよ流星〜梓はほんとに優しいから〜」
「怒らせなきゃ問題ない」
「俺は一体誰を信じりゃいいんだよ!?」
大河、理玖、陸人の3人を最後に教室にはついに誰もいなくなる。1人で嘆いているのも馬鹿馬鹿しくなったので、俺はひとまず教卓の目の前の席で大人しく待つことにした。
********
(遠藤……梓だったか?一体どんな奴なんだ……?)
始業式に来ていないのに、西園先生が信頼を寄せているなんて……そもそも本当に来るのか怪しいけどな……
そうこう考えていると、教室の後ろの扉が開く音がして俺は顔を上げる。
肩まで伸びた黒髪が風になびいて広がり、3枚刃の大鎌が日光でギラリと輝く。
それはまるで背中に巨大な龍翼を携え、鋭い牙で獲物を狙う黒き龍のようだった。
俺は1ミリも動けなくなった。動けば間違いなく殺される、そんな気がした。
『お前も今すぐ……両親の元へ逝かせてやるよ』
刹那、金属音が教室中に響き渡った。
我に返って目の前を見る。気がつけば俺は立ち上がっていて、鞘から風神を抜いて奴の大鎌を止めていた。慌てて刀を鞘に戻すと、奴も大鎌を左肩に担ぎ直して俺の横を通り過ぎた。
「悪い」
すれ違いざまに俺は小さく呟く。
「……気にするな。不意打ちは日常茶飯事だ」
俺はその言葉に伏せていた顔を勢いよく上げる。奴の透き通った青い瞳が優しく俺に微笑みかけた。どうやら怒ってはいないらしい。
「……それにお前みたいな反応をしてくる奴は大勢いる。むしろそっちの方が普通だ」
「けど……初対面の相手に刃を向けるなんて」
そこで俺は初めて気付く。
「なんでだ……?」
「……人間誰だって命の危険を感じれば自分の身を守るもんだろ」
奴はそう言って教卓の横に立つ。俺もさっき座っていた机に戻った。
「……自己紹介が遅れたな、遠藤梓だ」
「井上流星だ。よろしくな、梓」
場の空気は自然と穏やかなものになっていた。黒龍に見えたのは幻だったのかもしれないな……俺は罪悪感を覚えた。
(にしてもこいつが……遠藤梓か)
同じ高校2年生とは思えないくらい、醸し出しているオーラが違う。正直、持っている武器が死神の大鎌の時点で近寄りがたい。武格界でも大剣や大鎌といった大型武器を持つ武器使いは少数派で、日本刀や手斧のような比較的扱いやすい小型・中型武器を持つ人の方が圧倒的に多いのだ。
だが実際に話してみて分かった。
梓は……信頼できる奴だと。
「そういえば、俺だけに用があるらしいな」
「……あぁそうだった」
今まで本題を忘れていたらしく、梓は思い出したかのように言う。ひょったしたら最初のやつが余計だったかもな。
「……今日の仕事内容を知らないのはお前だけだからな。説明しておこうと思って」
何かあるとは聞いていたが……仕事だって?
「つーかちょうど良かった。おかげでスムーズに片付きそうだわ」
「俺は……一体何をすればいいんだ?」
唾をごくりと飲んで、梓の言葉を待つ。そんな俺を見た奴は口元を緩めた。
これでようやく同学年のメインキャラは全員出ました!
次回からは可愛い後輩が登場しますのでお楽しみに!
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