8話 王国会議
その夜、ヒストリア王国の城でヒストリア王国会議が開かれた。
その会議は、国王オスカー・ヒストリア・アルパークとその側近のリーズ・マーク・カルミアと『六柱』と呼ばれる6人の騎士たちで行われた。
「これからヒストリア王国会議を始める。今日の議題は東の村に出現したワイバーンについてだ。アレキス、説明を」
オスカーに呼ばれ、アレキスは今日起きたことを説明する。
「はっ、本日、東の村ヒュールに1体のワイバーンが出現、生存者1名。私たちが着いた頃には、村は殆ど崩壊。ワイバーンは絶命していました」
「死んでいた?どういうことだ?」
「……先ほど言いました生存者が魔法を使って倒したそうです」
「たった一人でか?はたしてその生存者の名は何という?」
アレキスとしてはヴァルの名前をあまり出したくなかったが、国王に聞かれては答えるしかない。
「その者の名は、ヴァリス・エリドリクスです」
「ヴァリス・エリドリクスか…」
「おい、アレキス。そいつどんな魔法を使ったか分かるか?」
金色の髪をした騎士、『六柱』の第一席のフラン・サイ・アーサーが質問してきた。
「よくは分からないが、炎の柱みたいなものを作ったらしい」
「ちょいちょい、ちょっと待ってよ。炎の柱って……それ自体作るの難しいのにワイバーンを倒す威力なんて……私でも出来るか分からないよ?」
赤い髪を後ろで束ねた魔法騎士、『六柱』の第三席のアイリーン・ライ・ラックが言う。
「……それ、本当に一撃?」
赤い髪を短く切った魔法騎士、『六柱』の第四席のアイリス・ライ・ラックが聞いてきた。
ついでに、アイリスとアイリーンは双子だ。
「ああ、一撃だ。しかも黒焦げになっていた」
「黒焦げ……だと?そいつ、歳は幾つだ?」
銀色の髪をした騎士、『六柱』の第五席のグレイ・ウル・レーサーが驚いたような顔をして呟いた。
「ワハハハハハ、黒焦げじゃと?わしも其奴を一度見てみたいわい。して、その男は何処にいるのじゃ?」
白髪の騎士、『六柱』の第六席のウォッカ・フル・レンダーは笑いながら尋ねてきた。
「…ヴァリスは今俺の家に住んでいる」
「えー⁉︎ いーなー!」
「うるさいぞ、アイリーン」
「む?これぐらいいいじゃないの」
「……アイリーン、しょうがないよ。グレイは頭がかたいから」
「おい、アイリス……まあいい。で、何歳なんだ?」
この質問には、どう答えようか迷った。しかし、この場で嘘をつくわけにもいかない。
「……彼は、ヴァリスは……6歳の少年だ」
「何⁉︎」
「えっ6歳⁉︎ 16歳じゃなくて?」
「……小さい」
「まさか、そんな……」
「ハハッ……これは凄いのう」
流石にこれにはみんな驚いたようだ。
まさか、6歳の少年がワイバーンを魔法で、しかも一撃で倒したなんて、考えもしないだろう。
「アレキスよ、今度その少年を城へ連れて来て貰えないだろうか?」
「国王様……」
「大丈夫じゃ。悪いようにはせん。少し見てみたいだけじゃ」
「……はっ、しかし、ヴァリスも疲れています。もう少し時間を置いてからでもよろしいでしょうか?」
「それでは、一週間後でよいかの?」
「はっ」
一週間後なら、ヴァリスも大丈夫だろう。
なにせ、ヴァリスは両親を亡くしたのだ。心の整理をつけるためにも、時間が必要だろう。
「さて、その少年はいいとして、もう一つ皆に聞きたい事がある。ワイバーンについてだ。ワイバーンは通常、山奥に住んでいる。しかし今回、ワイバーンは山を下りて村を襲った。これがどういうことか分かるか?」
今まで緩んでいた空気が急に引き締まった。
「……裏で誰がか操っていたということですか?」
アレキスの問いにオスカーは強く頷く。
「恐らく、そういうことだろう」
「一体何が目的であの村を襲ったんだ…?」
ワイバーンに襲われたヒュールはヒストリア王国の東の端にある村だ。
もし王国に何か恨みがあって襲っているなら、もっと中央の村を狙うだろう。
「たまたま群れから逸れたワイバーンが村を襲ったっていう事は無いの?」
「その可能性もあるかもしれない。とにかく、今は情報が少なすぎる。アイリーンの言うように今回が特別なだけかもしれないし、誰かが裏で操っているかもしれない。各自何か見つけたら報告を忘れぬように」
「「「「「「はっ!」」」」」」
「それでは、会議を終了する」
そうして、今日の会議は終了した。
ーーー
「なあ、アレキス。ヴァリスという少年に俺にも合わせてくれないか?」
会議が終わった後、フランにそんな事を聞かれた。
アレキスとしても、フランに一度ヴァリスを見て欲しいと思った。
「いいぞ。俺もお前に見て欲しいと思ってたんだ」
「何だ?そんなに凄い奴なのか?」
「ああ、凄いぞ。そうだな……一週間後にヴァルとここに来るから、その時に模擬戦でもして見たらどうだ?」
ヴァリスは剣も魔法も6歳の幼さで一流冒険者並みだ。いいところまで行けるかもしれない。
「なになに?ヴァリス君と模擬戦するの?いーなー!私もやりたい!」
「……私も」
アイリスとアイリーンが二人の話を聞いていたのか、自分も参加したいと言ってきた。
こいつら、ヴァリスが6歳ってこと忘れてないよな?
「一応ヴァルに聞いとくよ。6歳だからって舐めてるとやられるぞ」
ヴァリスなら、引き分けぐらいにはいけるんじゃないか?
そう思いながら、アレキスはみんなと別れ、家へ帰った。
フラン
第一席、騎士、金髪
アイリーン
第三席、魔法騎士、赤髪ポニテ
アイリス
第四席、魔法騎士、赤髪ショート
グレイ
第五席、騎士、銀髪
ウォッカ
第六席、魔法使い、白髪じじい
強い順ですね。
アレキスは第二席です。