7話 ある意味チート
「本当に近いんだな」
その林は殆ど家の裏と言ってよかった。
地球ではありえない太さの木や、大きな植物が生えていた。
「獣とかが出るから気をつけろよ」
「はーい」
俺は適当に返事をしながら早速作業に入る。
まずは出来るだけ大きく太い木を一本見つける。
「これでいいかな」
一際大きい木を見つけ、それを“鎌鼬”で切る。
ドオォォォォンと凄まじい音を立ててその木は倒れた。
「はあ⁉︎」
そしてその木を2センチくらいの厚さの板にする。
「なっ…!」
大きさを揃えて組み立てて……そこで俺はやっとある物が無いのに気付く。
「おい、アレキス。…アレキス?おーい………アレキスってば!」
「…んあ!? な、何だ!?」
なんかぼーっとしていたアレキスに釘を持ってきて欲しいと伝えた。
一瞬、この世界に釘があるのか心配になったが、それは大丈夫だった。
「あ、あぁ。分かった」
それから数分後、アレキスは釘とトンカチを持って帰ってきた。
「これでいいか?てゆーか一人で出来るのか?大丈夫か?」
「大丈夫だって。逆にアレキスは出来るのかよ?」
「……」
静かになった…。
まぁ、あまり細かい作業得意そうじゃないしな。
俺は先ほどの板を組み立て、釘で打っていく。
そして、10分も経たないうちに本棚は完成した。
「出来た!」
「凄いな…」
俺は出来た本棚を風魔法で浮かせて家の前まで持って行く。
「………」
アレキスは何とも言えない表情をしていた。
俺は本棚を自分の部屋へ運び、余った板を家の前に置いてからまた自分の部屋へ行った。
……本棚置いたら本を並べたくなってきた。
という訳で俺は自分が持ったていた本を数冊並べる。
……半分も埋まらなかった。
「…………」
アレキスを見たら、何か顎が外れるんじゃないかというぐらいに口を大きく開けていた。
「…大丈夫か?」
俺は何か見てはいけない物を見たような気がして見ないふりをしようとしたが、そんな訳にもいかず、結局声をかけてみた。
「…おいおい、さっきから無詠唱で魔法をポンポン出して…お前の魔力はどうなっているんだ?…………でゆーか、あれ!? 本は!? 本は何処から出した!? お前何も持って無かったよな!?」
何か相当混乱しているらしい。
「俺は生まれた時から魔法を使っているからな。魔力量は相当あるぞ」
「へぇ〜……で、本は? 本は何処から出した?」
「…まあいいか」
俺はアレキスに今の魔法について説明する。
「前に言ったろ、魔法はイメージだって。俺は物の大きさを変える魔法を使っただけだ。ただ少し違うのは…さっきの魔法はイメージがしにくいことだ。
…例えば、火魔法があるだろ? あれは火が目の前に現れるのを頭の中でイメージして具現化する。火っていうのは、生活の中でよく使うだろ?
水も風も土もイメージがしやすい。聖魔法と治癒魔法が使える人が少ないのはイメージがしにくいから、だと思う。
ただ、聖魔法の防御壁は魔物が、治癒魔法には回復薬がお手本になっている。
雷と氷も同じだ。今俺が使ったのは、そのお手本が無い故にイメージがしにくい。物を小さくする薬草や魔物なんて聞いたこと無いからな。ただ俺はそれをイメージして具現化しているだけだ。その気になればもっといろんな魔法も使える。…分かったか?」
「まぁ…なんとなく分かった」
アレキスは分かったような分からなかったような顔をして頷いた。
「なんかもうお前、魔法騎士団に入れる気がする……」
「この歳で入れるのか?」
俺、一応6歳だし。
「いや、さすがに無理だ。せめて10歳になって魔法学校を入学、卒業しなきゃ駄目だ」
「ふーん…俺も10歳になったら入っていいか?」
そんな俺の問いにアレキスは苦笑しながら言った。
「ははっ、ヴァルなら余裕で首席で合格だろうな」
そんなに簡単に入れるものなのか?
そんな事を考えながら何となく出来上がった本棚を見ていると、半分も詰まっていない本棚がなんか物足りなく思った。
「なあ、アレキスの書斎から少し本を借りていいか? 本棚がなんか物足りなくて」
「本か? いいぞ。じゃあ付いて来い」
アレキスから少しも汚れていないピカピカな本を借りて本棚にに仕舞う。
……よし。我ながらいい出来だ。
そうして今日の作業は終了した。
物の大きさを変える魔法……
大きさ変換魔法……安直ですかね?
何かいい案があったら教えて下さい!