4話 誰かのせいで
目が覚める。慌てて起き上がる。
「どのくらい寝てたんだ?」
周りを見ると、村は跡形も無く、荒野になっていた。俺は立ち上がろうとして力を入れようとしたが、魔力を使い過ぎたせいか、思うように力が入らなかった。ヴァーシスから貰った剣を杖の代わりにして、なんとか立ち上がった。
「父さん…母さん…」
ワイバーンであっただろう物体の側に、エリスとヴァーシスの死体があった。他にも、アリスや村の人々のものも…。俺は楽に動けるようになるまで、二人の側に座っていた。
暫くして、俺は立ち上がる。魔力が回復したからか、身体が軽くなった。俺はヴァーシスの形見の剣を腰に差し、村を歩いてみた。
エリスと、ヴァーシスと、アリスと…一緒に過ごした思い出の日々が蘇る。楽しい思い出が…。
昔、エリスに怒られた時があった。ヴァーシスが宥めるが、効果無く、俺は家を出てアリスの家に匿ってもらう。するとエリスは、村中必死に探して…俺を見つけた時、泣き崩れて…。…目頭が熱くなる。泣くまいと、俺は必死に堪える。
暫く村を歩く。生存者を探すため、歩く。しかし、生存者は一向に見つからない。
(いない…。やっぱり、俺以外は…)
諦めかけたその時、瓦礫の中で動くものを見つけた。
「誰かいるのか⁉︎」
瓦礫をかきわけると、そこには、17歳くらいの男が、黒焦げになって倒れていた。辛うじて、息はある。
「酷い怪我だ…大丈夫か⁉︎ワイバーンにやられたのか⁉︎」
「…分からない。俺らは…ワイバーンが来てすぐ、家に…隠れた…。そしたら急に、真っ赤な炎が…ワイバーンは…倒れていた…」
俺は言葉を失った。
(まさか…俺が…。)
俺は質問しようとしたが、男は既に事切れていた。
俺は思い出してみる。村の人々の死に方を。ワイバーンのブレスにやられた人もいただろう。しかしワイバーンは、ブレスの後爪で攻撃し、食べていたことを思い出す。食べられていては死体は残らない。見つけた死体は少なかったが、その大半は傷がなく、ただ焼け死んだような死体だった。
「ま、まさか…」
走り出す。
(うそだ!うそだ!俺がみんなを殺した⁉︎そんなわけ…!そんな筈は…………)
いつの間にか村を一周して、自分の家の前に来ていた。そして、一筋の涙が溢れる。
(…俺だ。俺が…殺した)
俺は、静まり返った荒野の中、地面を自分の涙で濡らしながら、立っていた。
「どうして…みんな…どうして…こうなったんだ…」
誰も答えることのない質問を、まるで機械の様に、繰り返し、一人呟いていた。