間話 模擬戦、三日前の出来事
今回はアレキス視点です
アイリーンとアイリスとの模擬戦が終わった後のこと、
「なあアレキス、あの武器ってヴァルが作ったやつなのか?」
突然、フランにそんな事を聞かれた。
「ん? ああ、そうだぞ。そうだな、あれは3日前の事だーー」
ーーー
3日前、ヴァルが剣の訓練で俺にコテンパンにやられた後のこと、
「じゃあ俺、これから魔法の練習してくるから」
「ん? まだやるのか? なら、俺も見に行っていいか?」
あいつは魔法の腕が一流以上。
一度練習を見てみたいと思い、そう聞いてみた。
「別にいいけど……今日は武器を作るだけだから見ててもつまんないぞ?」
「お前そんな事も出来るのか?」
「まあね。まあ、見たいなら勝手に見てていいから。邪魔はするなよ?」
「分かってるって」
そんなこんなで俺はヴァルの魔法の訓練について行った。
ーーー
周りが木に囲まれた更地。
ヴァルはいつもここで練習しているらしい。
「じゃあ適当なところに座ってて」
「ああ、ところで何を作るんだ?」
ヴァルは少し悩んでから言った。
「今日は模擬戦の為の武器を作る。何が出来るかはお楽しみだ」
ヴァルは楽しそうに言った。
(いつもこういう顔をしていればもう少し可愛げがあるのにな)
そんな事を考えながら俺はヴァルを見ていた。
ヴァルはまずそこらへんにある木を“鎌鼬”で切り、切った木を確認してから頷く。
その木を持ってヴァルは目を閉じる。
すると、その木は途端に形を変えていく。
5分ほど経つと、薄っぺらい真ん中が空洞になっている輪っかが出来ていた。
「それはなんだ?」
それが何か見当もつかなかったのでヴァルに聞いてみた。
「これか? これはチャクラムっていうんだ。ほら……こうやって投げて使うんだ」
ヴァルは実際に投げて教えてくれた。
「まあ、訓練用だから攻撃力は少ないが当たれば普通に痛いぞ。そうだな、まずはこれを……10個作ろうと思う」
「10個だと!? ……お前の魔力量はどうなってるんだ」
「これはウォーミングアップだ。ずっと前からやってるからな。今日は他にも作るつもりだ」
「ウォーミングアップって……」
呆然とする俺を無視してヴァルは作業を続ける。
チャクラムを作るスピードはだんだん速くなっていき、20分後に10個を作り終わった。
(最早化け物だな)
もう何も驚かなくなった。
次にヴァルは足下の地面に手をつき目を閉じた。
すると地面の土が盛り上がり、形を作っていく。
その20分後、鎌に鎖がぶら下がった何かが出来た。
「……これはなんだ?」
するとヴァルは嬉々として説明してくれた。
「これは鎖鎌っていうんだ。この鎖を持って頭上で回す。で、勢いをつけて飛ばす」
ヴァルは実際に鎖鎌を頭の上で回し、飛ばしてみた。
「これも訓練用だから威力はあまりない。でも、さっきのチャクラムもそうだか、これに属性魔法を纏わせるとそれなりな威力にになるぞ」
そこでまたも不思議な言葉が聞こえた。
「属性魔法? 纏わせる?」
「ああ、纏わせるっていうのは……こうやって武器に炎、水、風、土、雷、氷を纏わせられるんだ。それぞれで効果は違うから使い分けるんだ。これは魔力の操作が上手くないと出来ないんだ。相当練習したんだぞ?」
そう言ってヴァルは鎖鎌に炎を纏わせた。
「属性魔法ってのは、ほら俺、物小さくしたり出来るだろ? それと区別する為にそう呼んでいる」
「お前本当に凄いな……そういえば物小さくする以外にどんな魔法使えるんだ?」
今の所属性魔法以外だと物を小さくする魔法と属性魔法を纏わせる魔法しか見ていない。
「この前使ってただろ? 物を浮かすやつ」
そういえば本棚を浮かして運んでいた。
「でもあれ、風魔法じゃないのか? その割にはあまり風がもれてこなかったが」
風魔法で物を浮かすと風が漏れてこちら側にも大量の風が吹いてくる。
しかし、ヴァリスが使った魔法は風が一切もれてこなかった。
「違う違う。あれは風で持ち上げたんじゃなくて、物を宙に浮かすってイメージで魔力を流すんだ。ほら、こうやって」
そう言ってヴァルは自分の体を宙に浮かして俺の周りを一周してから降りる。
他の魔法使いが自分の体を浮かして移動するとき、すごい風が漏れるが、全然風が吹いてこない。
「これは自分の魔力を物体に纏わせて遠隔操作をすると出来るんだ」
「本当にすごいな、ヴァルは。訓練はこれで終わりか?」
「いや、これからもう一本鎖鎌を作って、チャクラムと鎖鎌を同じ量、鉄で作ってみる。鎖鎌の鎖は難しいから、いい練習になるよ」
そう言ってヴァルはまた作業に戻る。
「………」
その1時間後、ヴァルはチャクラム11個、鎖鎌2個作って練習を終わった。
ーーー
「ーーというわけだ」
「……なんかあれだ。お前、大変だな」
「流石だね流石! 師匠はやっぱすごい人だね!」
「……師匠凄い」
いつの間にかアイリーン達も話を聞いていた。
「いや、大変だから。あんなんが家にいると思うとな……」
そう言って身ぶるいする。
「でもでも、そんな凄い師匠がいるんだから、アレキスも身体強化を教えて貰えばいいんじゃない?」
「……アレキスの身体強化はお粗末」
「なっ!あんな子供に教えを請えるか!」
「そんな事言って〜、後で教えてもらうんでしょ」
「んなわけあるか!もう帰るぞ!」
そう言って俺はフラン達と別れた。
その何日かあと、アイリーン達に言われた事が気になり、ヴァルにこっそり身体強化を教えて貰った。