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設定3(“聖地”ソミソの成り立ち。町の説明)

・最初の街 辺境の聖地○ソミソ


∇神々の作りし土地

 国の外れ、辺境の地に平原があった。異常に肥沃的な土地で作物がよく育ち、また成長スピードも早い。それでいて周囲の森林が草原に侵食していかない事から、神の恩寵があるのではないかと噂されている土地であった。


 一説では草食魔獣ではホーンラビット角ウサギのみが異常繁殖している事から、醜く、鈍重なホーンラビットを哀れんだ、【大地と慈悲を司る女神メルルドジュドゥグァ】がホーンラビットの楽園を作った。

 森林が侵食してこないのは【森と狩猟の神サリドギェディリァ】が自らの眷属で、森では生きてゆけないフィールドウルフ草原狼の保護と、増えすぎたホーンラビットを間引き、共生する事で生態系を大きく崩さないよう調整された、神々による生態系のモデルケースであると主張する学者もいた。


∇開拓時代

 現在より800年程前の時代、時の国王が辺境の肥沃的な土地に目をつけ、神学者や、開拓にかかる費用を憂慮した内政官の反対を押し切り、辺境の開拓の大号令を発した。平原の中央に街を作り、その周囲を開拓していく。

 開拓が完了した時には新しい一郡の領地と立派な領都、【王国の穀物庫】が出来る予定だった。


 道を付け、小規模の町にするまでは順調に進んだ。しかしそれ以上の規模に拡張しようとすると、途端に頓挫した。

 当時から平原には一群200~300匹のフィールドウルフの群れが五つあったとされ、その中の一群を率いる一際巨大なボスが全ての群れを統括し、開拓民と開拓軍を襲った。

 この平原のフィールドウルフの群れは、他の地方の同魔獣に比べ非常に賢く、豊富な餌により進化したのか、大型化している。

 町を拡張しようとすると図ったように現れ、工事の人夫を襲い。平原に出てきた軍には巻狩を仕掛け、軍が立てこもれば補給の荷駄隊を襲い、王国側が拡張を諦め中断すると、襲撃もピタリと止んだ。


 高名な冒険者などに討伐の依頼も出されたが、全て群れのボスに返り討ちにされた。

 群れの非常な賢さと、ボスの異常な強さからフィールドウルフを率いているのは【森と狩猟の神サリドギェディリァ】の使徒なのではないかと噂される程であった。


 進まない計画と、かさむ費用に計画中止の声は高まったが、自らが主導した計画で、すでに莫大な投資をしていた王は、計画の続行に拘った。

 当時の国内外の情勢が安定していたことも悪い方向に働いた。

 戦争が無く、戦力を向ける方向がないので、武官が未開拓の土地を切り取り、功績としたがった。また、平和時に不要とされるのを恐れる軍属の者の支持も強かった。

 愚かな将軍は皆、他の者が失敗しても、犬畜生ごときに何するものぞ、と自分ならやれると根拠のない自信で軍を起こし、そして敗れた。

 王都より度々町の拡張の指示が出され、その度に被害が増えた。それは王が崩御し、代が変わるまで続けられた。



 代が変わり、新王が最初にやった仕事が開拓計画の見直しである。

 新王は前王の失敗をよく認識しており、計画を白紙に戻し、そして【王国の穀物庫】にするのは諦めた。

 そして、草原という名の聖域を侵し過ぎなければ、フィールドウルフ側も見逃してくれていると推測し、町の拡張をやめ、周辺部のゆっくりとした速度での開拓のみを指示し、フィールドウルフの襲撃が発生するようなら落ち着くまで静観するようにした。


 そんな努力が実り、最終的に町の周囲一キロの範囲が農地として残った。それ以上に広げようとすると群れに柵を壊され、踏み荒らされた。

 狭い農地ではあったが、町を維持するには十分ではあった。普通の土地に比べ育成が早く、出来の良い農作物が収穫できた。

 自給するには余裕があったが、しかし他領に輸出できるほどではなかった。



 そこで目先を変え、異常繁殖しているホーンラビットを狩る方向に転換した。

 ホーンラビットの肉を干し肉に加工し保存食に、毛皮は冬支度に、角は角細工用の材料として需要が在った。そして、農地を荒らす害獣としても邪魔であった。

 人間側が狩猟を行うのも町周辺から離れすぎず、フィールドウルフの群れを刺激しすぎなければ見逃された。


 フィールドウルフ側で境界を区切っており、互いに不干渉としていれば平和な事がわかった。

 平原の南北を横断する人工の道にすら、群れのフィールドウルフ達は近づかないようにしている節があった。

 おそらく、人間が割り込んでホーンラビットを狩ったとしても、それでもフィールドウルフ側が群れを維持する為に狩りをするのに対し、ホーンラビットの繁殖能力は供給過剰なのだろう。

 我が物顔で草原を荒らさなければ許される。住みついた開拓民達は、そう考えるのが常識になった。

 人を積極的に襲うのは、ボス争いに負け群れからはじき出された、フィールドウルフはぐれ狼程度になりこうして町としての安定を見る。

 尚、夜中に月に一度のペースで農地の近くまで、十数頭の群れが接近するという噂がある。これはフィールドウルフの斥候部隊が、人間が驕って農地を増やしたりしてないか、確認を定期的にしているのだと地元民は囁いている。



∇独特の文化

 町の成り立ちから聖地ソミソと呼ばれる。

 これは【大地と慈悲を司る女神メルルドジュドゥグァ】の深い慈悲と、大地の恵みが顕現した地域の中心だとして信徒が語り、熱心な信徒に限っては巡礼をし、【森と狩猟の神サリドギェディリァ】の眷属への深い愛と、豊富な獲物を狩る狩猟への喜びを体験出来る土地として猟師の巡礼があるからである。


 その事とは逆に性地ソミソという悪名もある。

 これは開拓の初期よりフィールドウルフとの対立が激しかった頃、度々起るフィールドウルフからの襲撃に、女性の開拓民が倦厭し寄り付かなくなった。家族が嫌がるので、開拓民は独身男性ばかりになった。

 極々初期の頃は娼婦も居付き、娼館も建てられたのだが、拡張期の度重なる襲撃で皆逃げた。


 しかし当時の王はあくまで町の拡張に拘っており、多くの人々が狭い町200m四方の狭い町に集められていた。

 そういった人々は初期の頃であれば公募された正規の開拓民や正規の軍人、商人たち。

 計画が破綻した後期では、開拓ドリームを見る冒険者、食い詰めたならず者やゴロツキどもであった。


 性への不満、フィールドウルフの襲撃からの死への恐怖。そういったものが重なり同性愛に耽るものが増えた。その状況に耐えられない者は去り、逆に国内外からその環境を喜ぶ性的嗜好を持つものを呼び寄せた。


 それは数十年の長きに渡った。王の代が変わるまでだ。

 やがて町が安定し、平和になって、女性も安全に町に行けるようになった。

 町に妻帯者も増えたが、歪な文化は残ってしまった。

 身軽に動ける冒険者を中心に同好の士が集まる町として、男の同性愛者の出会いの場として、やがて性地であり聖地と、男の同性愛者が一度は訪れるべき町と密かに囁かれ、公然の秘密と成って現在まで続く。



 ∇町の主要産業

 街の基幹産業はホーンラビットが中心である。冒険者がホーンラビットを狩り、その肉を干し肉に加工し、皮を防腐処理し輸出に耐えるようにし輸出する。それに付随して干し肉にするための塩と革を鞣す為のタンニンの輸入、運送業も多くある。

 街の周辺の農地は東西南北で四つに区画が割られ、それぞれ国から農地を購入した大地主が管理している。西の農地には町の安定後から作られた毛皮の防腐処理の為の工房が、ニオイ対策の為町から500m程離された所に立ち並んでいる。


 また、聖地巡礼の信徒、狩りやすく売りやすい上に狩場が近いホーンラビット狩りをしに来た新人冒険者、はぐれ狼の毛皮を狙ったベテラン冒険者、彼氏を捕まえに来た同性愛者などが多く集まることから、宿泊施設が町の規模に比べ多い特徴がある。

 どの宿も豊富に取れるホーンラビットの肉料理に力を入れており、塩も輸入量が多いため濃い味付けで、草原で取れる香草をふんだんに使われて、肉好きには一つの名物に成っている。


 尚、安宿とギルドの酒場、町の東の農地と草原の境界で柵の周辺は、同性愛者のハッテン場になっていたりするので危険である。若いかけだしの新人冒険者を狙った、ベテランの冒険者も多い。

 カップルになると新人とベテランが仲良くなり、手取り足取り色んな事を付きっきりで覚えさせるので、冒険者ギルド側も腕のいい冒険者が増える一因ではあると見て見ぬフリをしている。

 冒険者の中には、紳士協定を呼びかけ無理矢理誘ったりしないように自治を求める勢力もあるが、荒事してる冒険者たちが中心なので、歯止めが効かない者も多い。


 このことを苦々しく思ってる土着の住民と、コレも産業の一部だとする宿屋の経営者のとの対立が、数百年の歴史の中で度々起こっているが、ホーンラビットを狩っているのが男の冒険者達であり。その大半がソッチ側の人間である為、この文化は守り続けられてきた。

 業の深い町である。

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