第19話 カップ麺とラジャス
スガ○ヤのラーメンが食いてぇ(本編に関係なし)
あ、乳白色で鰹だしが効いてるやつね。
腕時計をちらりと見てから言う。
「3分経ちました。蓋を剥がしてみてください。もう蓋は要らないので剥がしきっちゃっていいですよ。」
すると、飴を掴んでは落とす作業を止めて、二人はワクワクした顔をしてペリペリと蓋を剥がす。
「おっ!お湯を入れただけでガチガチだった中身が、本当に柔らかくなっているように見えるぞ!お湯を入れる前よりも中身が膨らんでいるな。」
「それになんか不思議な匂いね!嗅いだことがないわ!」
蓋を開けたことによって、コッチの方までスパイシーで独特な香りが漂ってくる。
「麺と一緒に入っている調味料がダマになってて溶けてなかったりするので、箸を差し込んでよくかき混ぜてください。私の国では箸で麺を持ち上げて降ろしたりする人が多いような気がしますね。」
ちなみに俺は下からすくい上げてグルンと縦に半回転させる派だ。
ラジャスは器用に麺を掴んでは降ろして、麺を1掴み箸で摘んでカップの縁にこびりついた粉末スープの素を麺でこそぎ落としたりしてる。
君、箸の使い方上手くなるの早すぎないか?。
ダルシャナは縦に箸を差し込んで、円を書くように横にぐるぐると回して、カップを斜めに少し傾け、スープで上の方に固まっている粉末スープの素をなんとかしようとしている。まだ掴む動きが苦手だからだろうな。
たったこれだけのことでも個性が出るな~なんて思いながら。
「自分の気が済むまで混ぜたら、箸で麺を摘んで、あぁ、掴むのが難しかったら引っ掛けるだけでも良いですよ。スープから引き上げて息を吹きかけてください。熱いですからね。
熱いのが苦手ならよく冷ましてから食べてください。
平気なら一気にズルっと啜り上げてください。空気を取り込むように大胆に行けば意外と熱くないですよ。」
まぁ、元の世界じゃ日本人じゃないと出来ないとか言われてたけど。
欧米とかじゃ啜る音が下品とされてて、そういう麺を啜る文化がないから逆に啜りたくても、身体がそういう風に出来てなくて啜れないとかあったな。
「こうか?」
そう言ってラジャスはフーッフーッ、ズゾゾゾゾゾゾゾッっと豪快に啜り上げてモグモグっと軽く咀嚼した程度で飲み下す。
何でできちゃうんだよ、お前。
「おおお、これはうまいな。今まで味わったことがない味だ。なんかこう香ばしさと旨さがガツンと来るな。
麺だっけ?コレもつるつるとしてどんどん飲み込んで行けてしまうな。
この四角い茶色いのは何だ?」
たぶん香辛料と香味野菜と合成調味料で旨味成分を足されてるのが、新鮮に感じるんだろうな。
そして麺を飲むな、よく噛め。ラーメンは噛まずに飲んで喉越しを楽しむものじゃない。ないよね?
謎肉か。豚肉のミンチに味付けて加工してあるんだが、実は某国の肉が混ざってて本当に謎肉の可能性が有るんだよなコレ。まぁ、その辺を余り考えると、何も食べれなくなるくらいに日本の食品は侵食されてたりするんだが。
「摩り下ろした肉に、スープとは別で味を加えて再成形したものですよ。」
「コレもまた違った風味が有るな。具もそれぞれ違った味がする。俺はコレ気に入ったぞ。」
そう言いながら、具を器用に摘んではヒョイ、パク、ヒョイ、パクっと食べていきフー、フー、ズズズっと汁を飲んで、ズゾゾゾゾっと麺を啜っていく。
お前ホントに初めてか?食い方に年季入ってないか?
ダルシャナの方はと言うと、最初の一口目で口を焼いてた。
ラジャスの真似をして啜ろうとしたが啜れず、悶絶。
俺はそれを見てバックパックからチタン製のキャンプ用マグカップを3つ取り出し水を入れ、一つをダルシャナの前にそっと置いた。
まぁ、少しして魔術で治すことに気が付いたみたいだが、初めてのことでビックリしたんだろうな。
「熱いわね!コレ。香りは良いのになかなか食べれないわ。」
そう言って恨めしそうにラジャスを見る。まぁ、そこを僻んでも仕方ないな。
急いで食べるのはもう懲りたのか、丹念にフーフーして唇の先にチョンチョンと当てて熱さを確認してからそれから口に入れてる。
ダルシャナは箸の持ち方は綺麗なんだけど、動かすのはまだまだ難しいから口が迎えに行ったり、口で咥えた長い麺を何とかして全て口の中に入れようと、箸を何度も往復させたり、啜ろうとしてスースー言いながら啜れて無かったり、悪戦苦闘してる。
それでも、10分くらい箸の持ち方を練習した程度なら、凄く箸の使いが上手いんだけどな。
ラジャスが異常なんだよ。
こうして必死になってるのを見る分にはカワイイもんだ。見た目は美少女だしな。
「美味しいわ。スープも香辛料かしら?香りが鮮烈でコクがある。麺にスープが絡んでコレも美味しい。でも食べにくいのよ!」
うん、イラッとしてるね。で、羨ましそうにラジャスを見るんじゃない。
当のラジャスはと言えばカップを口に咥え、煽ってスープを飲み干し。
「足りない。ダルシャナ、ソレ一口頂戴。」
だろうね。凄く食いそうだもん。
「私、アンタの一口も貰ってないんだけど?」
そんなやり取りを横目に、俺は時計をチラッと見て6,7分ほど経ったカップうどんの蓋を開ける。
いや、蓋の待ち時間の表記では5分なんだけど、時間通りにピッタリで作っても芯が残ったような硬さを感じて俺は長めにしてるんだ。まぁ、この辺も好みだよな。
揚げの上に固まってる粉末スープの素を揚げをひっくり返して揺すって溶かし、麺をぐるぐると混ぜる。
そして、麺を1掴み持ち上げフーッフーッと息を吹き掛け、ふと前を見ると、ジッとラジャスがこちらを見てる。
「食べますか?」
そう冗談半分で箸と器を差し出す。
「ああ、ありがとう。」
そう言って、そのままパクっと咥え、横に顔を振って箸から麺を外すとズゾゾゾっと麺を啜って。
「コレもうまいな。こっちは麺が太いのか、食べごたえが有るな。よく噛んだ方が美味い。匂いも全然違うな。汁もいいか?」
お、おう、あーんじゃないけど、食べさせるのってなんだかドキッとするな。
このカップうどん、香りはカツオっぽいんだが、コレもちょっと独特なんだよな。
箸をカップに差し込んで器ごと渡す。
ラジャスは軽く息を吹きかけ、ズズズっとスープを飲み。
「コレはさっきのよりも少し汁に甘みを感じる。あと、すこし優しい味になっているな。この茶色い四角いのは肉か?」
たぶんうどんは香辛料を効かせてないからそういう感想になるんだろうな。
「それは肉じゃなくて、豆を加工して油で揚げたものですよ。スープを良く吸い込むんですよ。
ああ、食べていいですよ、ですが中に染み込んだ汁が熱くなっているので気をつけてください。」
そう言うが早いか早速箸で半分に裂き、更に半分に、そして軽く息を吹きかけパクっと食べる。ホント箸を使いこなしてやがんな。
「コレはまた汁とは違う甘さ辛さがある。噛むとジュワッと汁が出てくるんだな。」
揚げもまた独特だよな。コレがまたスポンジみたいによくだしを吸ってるんだよな。
ダルシャナの方を見ると、羨ましそうにラジャスを見てる。仕方がないね。
未使用の紙皿を取り出し、ラジャスから返してもらったうどんの器から麺を一掴みほどと揚げの四つ切を一切れ移し、スープを注いでダルシャナの前に置く。
「どうぞ。」
と言うと。
「気が効くわね。」
と、ニコニコと嬉しそうにする。ダルシャナはもう大分冷めたおかげか、半分ほど減ったシーフード味の器を一旦置いてうどんを食べに掛かる。
俺はラジャスに向いて聞く。
「まだ食べられますか?」
「全然足りない。」
じゃぁ、まぁ良いか。と残ったうどんを全部ラジャスに差し出す。
俺はカップ麺なんて日本で散々食ってるからな。
ラジャスも嬉しそうに受け取ってそのままズルズルと食べ始める。
まだまだ皆食べられそうだし、何か簡単なものでも焼こうか。
そう思って俺は再生成されたフライパンを取り出し、水で濯いで洗う。
ブクマありがとうございます。この場をお借りして感謝を。
今日はもう一話書くことができれば投稿します。




