第17話 好奇心
総合評価100pt超えました。ありがとうございます!
前話にて、主人公がバックパックを床に降ろしてから座ってる描写に修正してあります。
どうするか、漠然と考えても突然過ぎて答えが出ないよな。
とりあえず、二人は何故、装備の事を知りたいのかが問題だよな。
ただ奪い取るだけなら、宿のロビーで殴り倒した時にそのまま奪えばよかった。俺の身体を治す必要はなかった。いや、女将の目の前で殴り倒したから、ダルシャナの計画が狂ったってのもあり得るか。
この世界の犯罪がどっからどこまでが問題で、どういう処罰になるかも知らないんだよな。
装備を奪うのは確定していて、その上で入手先を調べて、更に手に入れようとか?
別に装備なんてくれてやっても良いんだよな。バックパックさえあれば再生成で呼び戻せるし。
ただ、口封じに殺される、とかが困るだけで。
で、何で俺がダルシャナが言うアーティファクト持ってるのかって話だけど、正直に話しても良いものかどうなのかわかんないし、誤魔化すにしても、この世界の知識がなさすぎて、どう答えたら良いのか分かんねぇんだよなぁ。
ヘタにウソ付いてるのがバレると、どう状況が転ぶのかがわからないし。
とりあえず質問には質問で返すか。保留だよ保留。困ったら結論は先送りだ。
「何でそんなことを知りたいのですか?」
「不思議な事があったら。何でそうなってるのか知りたいと思うのは普通のことじゃない?」
いや、そりゃそうだけど。はぐらかされてるのかなぁ。疑問形で返されてもな。
「じゃぁ、それを知ってどうするのですか?」
「どうもしないわよ。ただの好奇心よ。」
もうちょっと踏み込まないと何もわからないな。
「もしよろしければ、銀貨の代金として差し上げますが?」
これで欲しいってなって、身ぐるみ剥がして満足してくれるんならそれでいいや。
・・・いや、素っ裸にされるのは困るが、女だしそこまではしないと思いたい。最悪は、寝静まった頃に宿から逃げて再生成だが。
「んー・・・、要らないわ。その服のデザイン私の趣味じゃないし。ラジャスは?」
「欲しいとは思わないな。アーティファクトだろ?ヒロにとって大切な物なんじゃないのか?
俺は初めて見たから、どんな効果があるのかが気になるがな。ギルドでの話しぶりだと『隠密』とかか?」
「そうよ、どんな効果があるのか教えてよ。」
困ったな。本当に好奇心なのか、それとも服の効果を探ってから奪うつもりなのか。
「『隠密』とはなんですか?」
そして又先送りだ。
「発掘されたアーティファクトに着いてたって有名な効果だ、知らないのか?なんでも着た奴の気配を薄くさせるらしい。暗殺に使われると困るからって王家が管理してるらしいな。」
「そんなことよりヒロの服の効果よ!さっさと言いなさいよ!」
ダルシャナが睨んできた。はぐらかしてるのがバレたか?イラッとしてる。
困ったな。『再生』ってこれ言ってもいいものなのか?
今出た隠密って言いたい所だったけど、王家に暗殺警戒されてるなら、言うともっと厄介なことが起こりそうだ。壊れても直るってそこまでの効果じゃないよな?大丈夫だよな?
「ダルシャナ。装備の効果は冒険者にとって生命線だ。今日会った奴が教えろって言って、すぐに教えれるモノでもないだろ。その辺の事はアンタが一番わかってるはずだ。ちょっと落ち着け。」
そう助け舟を出してくれた。良いやつじゃんって思うけど、コレが尋問のテクニックなのかもしれん。俺は騙されんぞ!
「・・・確かにそうなんだけど。でも知りたいじゃない?この人珍しいモノばかりよ?顔も今まで見たことがない人種だわ。気になるじゃない?」
多少イライラが収まったようだが、それでもさっさと聞き出したいらしい。
そうか、日本人顔も珍しいのか。決して俺が変な顔だとかそういうことではない。
「ヒロ。警戒するのも無理はないが、ダルシャナは純粋に好奇心で聞いているんだ。
ヒロの故郷にはエルフが居なかったみたいだが、エルフの寿命は長い。その長い人生を何で埋めるかは人それぞれなんだ。
研究に没頭したり、技術を磨いたり、肉体を鍛えたり。
ダルシャナは好奇心が強くて、珍しいものを見つけると抑えが効かなくなるんだ。知れば満足するから話してやってくれないか?」
なんて面倒臭い奴なんだ。
しかし、どの道駆け引きなんて無理だし、力づくってなっても困るだけだからな。
「私の衣服に掛けられている効果は『再生』ですよ。」
そう打ち明ける。すると二人は驚いて。
「・・・神宝じゃない。ヒロは神の使徒なの?」
ダルシャナが目を輝かせて言う。
神が絡んでるのはバレるのか。やっぱ珍しい効果なのかな―。
なんか変な方向に誤解されそうだから、弁明しておいたほうが良さそうだな。
「神の使徒とはどういったので?」
「使徒を知らない?使徒は害ある者から身を守る為、恩寵を賜って加護を受けたり、地上の危難にそれを打ち払う加護や祝福を賜った人だけど、ヒロはその装備を神から賜ったのよね?」
うーん。使徒ではないんじゃないかな?なんか、気まぐれなんじゃね?俺がココにいるのって。
微妙に女神様の愛は感じないんだよね。ホモの町周辺に飛ばす時点で無慈悲だと思うんだ。
「いえ、使徒ではないと思いますね。この装備も元々私が持っていた物に、後から加護を付けてもらったものです。
害あるものから身を守るというなら、ラジャスさんに殴られて苦しんでないでしょうし、特に誰を救えとか何をしろとかも言われてませんし。」
「そう言われると、伝聞で聞く使徒と違うわね。じゃあ、どうしてその装備に加護を賜ったのよ?」
興味津々で聞かれる。そうなんだよな。じゃぁ何でって話しだよ。
本当の事を言う以外に良い説明が浮かばないんだよなぁ。
もう面倒臭いから全部喋って反応を見てみるか。バックパックは・・・反応を見てからでいいか。
「実は・・・」
と、ココまでの経緯を話す。俺のいた世界のことも含めて。
途中でよく伝わらない所はダルシャナが質問してくるので結構時間がかかった。バックパックの祝福、再生成とかは言わないで、友人とキャンプ地を目指す所から草原に転移された部分までだ。
「異世界人ねぇ。だからヒロは常識がないのね。」
なんか微妙にイラッとする言われ方だな。
「魔法のない世界かぁ、想像つかないわね。見てみたいわ。」
現代日本の説明を軽くしたら、ずっとこんなことを言っている。
「その異世界の物を持ってきたのよね?ちょっとコッチの世界だと珍しいものを見せてよ。あ、そういえば、ヒロ鼻血が顔に付いたままよ。」
それは女将が居る受付に戻る前に言って欲しかった。
何でこのタイミングでって思うが、好奇心がある程度満たされて心に余裕ができたのかな。
あー、うん、もう別にいいか。なんか警戒を続けるのも疲れた。
何を見せると良いのかなって思いつつ、足元のバックパックのファスナーを開ける。
「ねぇ、ソレ珍しいわね、私もその横に動かすのやってみたいんだけど。」
いつの間にか俺の横に来てダルシャナが言う。いつの間に移動したんだコイツは。数瞬しか間が空いてなかったと思うのに。
「どうぞ。」
と、ダルシャナの方に口の開いたファスナーを向ける。すると、早速ファスナーを閉めようとする。しかしどうやってもファスナーが閉まらない。
「全然動かないんだけど?」
あれ、壊れたかな?と、思いつつ、ちょっと代わってとファスナーを握ってすべらせると、軽やかにスライドして口が閉まる。
「壊れてはないみたいだね。」
そう言って、又代わる。しかしダルシャナがやると、どうやっても動かなかった。
「ヒロ、コレって何かしないと動かないんじゃないの?」
いや、俺何もしてないし。条件でも有るのかな?と思ってラジャスにもやってもらうが、やっぱり動かない。
知らない機能がついてるなコレ、と思って確認できることを試しておこうと、今度はファスナーを開けて中を覗いてもらう。
「空じゃない。ヒロは友人の分も野営道具持ってきたんじゃなかったの?」
他人には見えないのか!
「中は物置ぐらいの空間に広がってませんでした?」
「え?外見通りの容量しか無かったわよ?」
ラジャスにも見てもらったが同様の答えだった。
コレ、俺専用か、男性専用になってるな。
これは良い情報だ。二人にとって奪う価値がなくなるからな。
「ねぇ、ソレ『再生』以外の加護がついてない?」
これはもう正直に答えておこう。このバックパックは俺にしか使えない事を伝えておいた上で、機能と、この世界で不自然じゃない物資の相談をしておいた方が安全だ。
又、暫くの時間を使って一通りのバックパックの機能を説明した。
「凄いわね。祝福の着いた物品なんてなかなか無いわよ。
伝説上には使っても減らない水瓶とか、出しても出しても減らないパンの入った麻袋とかあるけど、干ばつや飢饉が収まるといつの間にか無くなったって話で現存してないのよね。
捏造なんじゃないかって言われてたりしたんだけど、存在したのね。」
「しかもソレ『不壊』が付いてるんだろ?中の物取り出せなくても、ソレだけでそこらの奴に知られたらマズいな。」
「え、なんでですか?」
「ヒロ、この背嚢どうやっても壊せないのよ?軽いのに最強の盾になるじゃない。」
うわ、そう言われればそうだわ。奪う価値がバリバリ残ってた。
「お二人は欲しいと思います?」
直球で聞く。もうココまでのやり取りで、二人はあんまり即物的な欲がなさそうだなって印象になってた。
「私は別に?背嚢なんて背負いたくないし、それ無駄に大きいし。」
「俺も要らないな。たぶんソレ、壊れないけど衝撃は通るんじゃないか?盾に貼れれば良いんだろうが、『不壊』がかかってるなら切ってサイズを合わせることも出来ないし、鋲も通らないだろ。だから使い物にならない。」
凄く、合理的です。レアなものでも使えなければ邪魔なものとしか思わないんだな。
更に踏み込む。
「売ってお金にしたりとかは考えないんですか?」
「思わないわね。現状で十分に稼げているもの。私は何か珍しいものがないか、探して旅してるついでに依頼こなしてるだけだし。」
「俺は強くなる為だ。貧しい暮らしをする気もないが、奪って金を稼ごうとは思わん。」
大丈夫そうだな。警戒しすぎて損した気分だ。
でもこれ、悪い結果にならなかったのは結果論でしかないんだよなぁ。
まだ、この後信じて裏切られる可能性もないわけじゃないけど。
「ねぇ、私は珍しいものが見たいんだけど?」
あー、はいはい、そんな話だったね。
何を出そうか。そう思ってバックパックを覗き込もうとしたら、『グゥ~~』っとお腹の鳴る音が聞こえる。音が聞こえてきた方を向くと。
「腹が減った。」
全く恥ずかしがる素振りもなくラジャスが言う。コイツ女っぽさが欠片もないんだけど。これでなんで男だと言うとキレるのかが分からん。
時計を見る20時30分程だ。結構話してたな。食堂まだやってるのかな?
「ヒロ、食べ物大量に持ち込んだんでしょ?何か出してよ。できるだけ美味しいモノね!ここからは食べながら話しましょう。」
まぁ、もうココまで話したら二人には自重する必要ないよなぁ。
「じゃあ、美味しい物が出せたら銀貨一枚チャラにしてもらってもいいですか?」
「いいわよ。それくらい。だから珍しくて美味しい物をお願いね。」
ん?ラジャスの金じゃなかったっけ?なんで相談なしにお前が決める。
ラジャスの方を見ると気にした素振りもない。
ま、いいか。約束が取れたんだし。
晩飯、何にしようかなぁ。
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イェーイ悟空さん見てる~?(悪ノリ)
今回の話は、主人公の異世界初日を全部書き終わったら。内容を見直して修正するかもしれません。




