第16話 どうでもいい事実とオッドアイ
10.000PV超えました。拙作を読んで頂きありがとうございます。
10/13 背負ってたバックパックを座る際に降ろす表現を追加
階段を上がり、ラジャス達の部屋へ向かう。
取った部屋は、宿の二階の中央のロビー真上の通路で、階段から一番遠い角に当たる部屋だ。
周りに人気のない二人部屋を頼んでいた。階段から一番遠い二人部屋がそこだった。たぶん俺と同じような理由だな、部屋での会話を周りに悟られたくないんだろう。
・・・やばい、用心してるって事は、俺って何か知らないうちに、またなんかやらかしてる?
いきなり殺されたり、いきなり脅されたりするレベルで、すでに何かしらやらかしたのだろうか?
歩きながらそんなことを考え、こいつらと出会ってからの言動を思い返す。
そしてハッと気がつく。
クソッ!こいつら、殴ったりビンタしてきたくせに一言も謝ってねぇ!
そういや、こいつらは俺が悪いって詰ってただけだ。
上っ面の謝罪すらしてねぇ。普通一言スマンとか有るだろうが。
まぁ、心の篭ってない謝罪もムカつくんだが。
むしろラジャスには俺が謝って、ダルシャナにはビンタされたのに感謝させられてる。
状況をよくわかってなかったから、ラジャスにビビって雰囲気に流されてたけど、なんか納得行かないぞ。
日本人的な、とりあえず謝っとけ精神が悪い方向に作用した気がする。
・・・でもな、納得いかないからって文句言えないんだよな。
機嫌損ねると、何されるかわからない怖さが有る。
ダルシャナの言うこと信じると、本気で殴られると俺死んじゃうんだぜ?ヘタな事言えねぇよ。
コレは俺がヘタレたとかじゃない!
そう、戦後の日本みたいなもんだ。
アメリカに媚び諂ってプライドを捨ててでも、戦後の高度成長を手にして経済的豊かさを手に入れた。
それを俺もやるんだ。
決して殴られて心が折れたとか、そういったことじゃない。これは強かさとかそういった類の何かだ。そういった俺の強さなんだ。
むしろこいつらの武力を俺が利用してやる。そういった気持ちの表れなんだよ。
「ここだな。」
どうでもいい事実に気がついて、自問自答しながら自己肯定して精神の均衡を保っていると、部屋の前に到着する。
ガチャガチャやって鍵を開けて部屋に入る。鍵穴に油を差したくなる。
中は外が既に暗いせいか、真っ暗だ。
ダルシャナが部屋に入っていって、テーブルの上に在ったランプに、魔術で火を着け明かりを灯す。
部屋は、一人部屋よりも広いが、ベッド2つとコートハンガーにテーブル、椅子2脚でいっぱいいっぱいだ。テーブルは俺の部屋の物よりも大きいな。
「座って。」
ダルシャナが、コートハンガーに羽織ってたポンチョらしきものを掛け、奥側の椅子に腰掛け、対面の椅子を指差して言う。
ラジャスはテーブル近くのベッドに盾を立て掛け、ベッドに座って腰から外した剣を鞘ごと左手のすぐ側においた。
「失礼しま~す。」
無言で座るのもなんかアレかなって思い、間の抜けた返事をして、バックパックを足元に降ろして椅子に座る。
正面のダルシャナを見る。
輝くような金髪、ストレートの髪は背中の肩甲骨の下あたりまで伸びてる。
パッチリとした二重まぶたと、スッキリとした鼻筋に透明感の在る白い肌、北欧系美少女だな。高校生くらいに見える。
そして特徴的な耳をしている。尖った耳が真横に生えてる。
それ以上に目立つのが眼だ。左目が碧眼、右目が金色で猫のような瞳孔をしてる。金色の上に瞳孔が細められてるので存在感が強い。
「エルフを見るのは初めて?それともこの眼を見るのが初めて?」
吃驚したのが伝わったのだろうか、そんなことを聞いてくる。素直に俺は。
「ええ、私の住んでいた所では、エルフもオッドアイも大変珍しかったもので。」
無難に返しておく。エルフか~。そういうのもいるのか~。
あ、片方猫目は正直ちょっと怖いっす。迂闊な事してラジャスみたいに逆鱗に触れたりすると嫌なので、身体的特徴にはもう触れないようにしますけど。
「そう。じゃぁ、話し合いたいんだけど、とりあえずギルドであった情報の貸し借りをチャラにしましょう。ヒロの聞きたい事を一つ、私達が答えるわ。
その後は、貸し借りなんてまどろっこしい事言わないで、お互い聞きたい事を自由に聞きましょう。それで良いわね?」
うん、それってダルシャナに都合がいいだけなんじゃね?
出来れば、一つ聞いたらそれで自分の部屋に帰りたいんだけど、帰してくれないんだろうなぁ。
今も有無を言わせない雰囲気あるし、銀貨1枚を盾に取って主張されそうだし。
もうそれなら覚悟決めて、コッチも情報集めるつもりで話した方が楽かなぁ。諦めの心境だけど。
「ええ、それで構いませんよ。」
そう言うとダルシャナは、ニッコ~っと邪悪そうな笑みを浮かべる。
ヤダ、もうお家帰りたい。この世界の宿の部屋じゃなく、地球のアパートに。
早まったかな~。もっと抵抗したほうが良かったかな~と、既に俺は後悔をし始める。
「よし!それじゃぁさっさとなんでも聞いて。」
チッ。これ、とても言えないような恥ずかしい秘密聞いて、答えれなくしてご破算にできないかな。
・・・ダメだ。ラジャスから鉄拳制裁を受ける未来しか思い浮かばない。
ホモ情報を最優先で考えてたけど、この状況ならそれよりも・・・。
「お二人の冒険者のランクを教えて貰えますか?」
こいつらの強さがどれくらいか確かめよう。ラジャスクラスがゴロゴロ居たら、俺はこの世界で生きていける自信がありません。
ダルシャナはラジャスの方を見る。
「俺は5級だ。」
5級か、中堅ではトップレベルってことか?
「ラジャスは5級だけど、まだ若くて依頼の実績が足りないから上がってないだけよ。実力だけならもっと上だわ。」
ってことは戦闘能力は一流なのか。
「ギルドにはラジャスさんくらいの強さの人が、ゴロゴロいたりするんですか?」
「いないわよ。一流冒険者は大きな街や稼げる町に、数組のパーティがいる程度よ。それで指名依頼が入ったりすると、周辺の地域を彷徨いてたりする感じね。」
「ダルシャナさんは何級なんです?」
「私は2級よ。」
そうドヤ顔で言ってくる。
俺はなんてツイてないんだ。厄介な奴らに目をつけられ、それが普段見かけないような実力者だ。なんでトップクラスをツモってんだよ。
冒険者ギルドでのあの状況は、前門のこいつら、肛門、いや後門のホモか。
でも、こいつらに助けてもらわなかったら、あのままお持ち帰りされてたかもしれないんだよなぁ。ホモに掘られるよりは良いのか?
「2級の方はどれくらいいるんですか?」
「そうねぇ。とりあえずこの国では二人しか私は会ったことないわ。」
片手で数える程度ってことか?しかし疑問がある。
「ラジャスさんは、実績が足りなくて5級から上がれないんですよね?ダルシャナさんは、なんで2級に上がれてるんです?」
「20年以上冒険者やってるもの、引退したら1級に上がれるほど実績が有るわよ。」
笑いながら言ってくる。見た目に騙された。この世界のエルフは長命か。
「しかし、そんなことを聞くなんて、ヒロはエルフを知らないのかしら?」
満面の笑顔で眼だけ鋭い。嬉しそうだなぁ、おい。知らねぇよ。
見た目と年齢が釣り合わないのは常識でしょ、って態度だ。
「ええ、さっきも言いましたが、大変珍しかったもので。
話題とかにも上がらないくらいだったんですよ。」
「ふ~ん。そう。
ところで、そろそろ私の方から質問してもいいかしら?」
拒否したって聞いてくれないんだろうに。
「ええ、どうぞ。」
「ねぇ、頭の天辺から爪先まで、身に着けてるものが全部アーティファクトに視えるんだけど、ヒロは何者なのかしら?」
アーティファクト?なんか地球で読んだ小説かゲームで聞いたこと有るな。なんか凄いアイテムとか、そんなんの名称だっけ?
「な!ホントか!?」
ラジャスは立ち上がり驚愕した表情でこっちを見つめる。それってそんなに凄いの?自衛隊レプリカの迷彩服はコッチでは凄い価値なのか?
「本当よ。だからラジャスが敵対行動を取った時はヒヤヒヤしたわ。勘弁してよね。」
そう言ってラジャスを睨む。
「先に言わないダルシャナが悪い。」
ラジャスはラジャスでまたプイッと横を向く。
仲いいなお前ら。俺、置いてきぼりなんやけど。
「すみません、何でそのアーティファクトを俺が着けてるって分かるんですか?」
「そうね。私のこの右目は精霊眼なんだけど、よく見てて・・・」
そう言うと右目の瞳孔が開いていく。ちょっと気色悪い。
「能力を開くと、生き物や物にある魔力を視れるのよ。
ヒロの身に着けてる物から、魔道具では考えられない程の強くて膨大な魔力が溢れているわ。
それ、アーティファクトでしょ?そうしてそんなに大量のアーティファクトを持っているの?」
そう楽しそうに聞いてくる。
あ~。それ、女神様の神力だな、たぶん。
同じような力なのか、神力と魔力は別物だけど、精霊眼が優秀でどっちも見れるのか。
ま、それはどうでもいいや。問題は見る奴が見たら俺の装備が異常ってバレバレなのか。困ったなぁ。持ってるだけで厄介事の火種っぽいぞ。
どうやって誤魔化そうか・・・。
ブクマありがとうございます。この場をお借りして感謝を。
総合評価100pt超えた―って言いたかったけど98という絶妙な寸止め具合で言えない。ぐぬぬ。
悟空ー!!!!はやくきてくれー!!!!
(100ptを踏んだ、名も知らぬ読者の方を、今後私の心の中では悟空と呼ぶことにします。53万ptを踏んだ方はフリーザ様です。)




