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第14話 ギルドの説明と悶絶

 俺の並んでいた列が、どんどんと消化されて短くなっていき、やがてラジャスとダルシャナの番になった。受付と何やら報告だって言ってたな。



 ラジャスは男にしては髪が長く、茶色がかってウェーブの掛かった黒髪を後ろに流し、肩の辺りまで伸ばしている。髪質はくすんでいる。この世界にはリンスとか無いのかな。

 そんなことを考えたりしながら、ほへ~、と前を見ていると暫く話していたラジャスが振り返って。


「ヒロは宿は決まっているのか?決まっていたら宿の名前を教えてくれ。」


 え?何でだよ。教えたくないよ。お前らとこれ以上関わりたくないよ。

 そう思ったので断る糸口を探す。嫌とははっきり言えない。ダルシャナがジャイアンっぽいからだ。

 コイツは健太のように自分の都合の良い超理論で生きていそうな気配が有る。相手が納得する理由をつけて断らねばなるまい。


「なんでですか?」


「この町の宿には2種類有るんだ。普通の人向けと、さっきヒロに絡んできたような人向け。ソレを調べるんだ。知りたくはないのか?」


 なんだよ、ココで教えてくれるのか!メッチャ知りたいですわ!

 これで肉屋のオヤジの信用度も判るしな。


「たしか『草原と弦月亭』です。」


 そう言うと受付の方に向き直り話し、少しするとまた振り返り。


「弦月って付く屋号はないみたいだ。『草原と銀月亭』じゃないか?って言われてるんだが、間違えてないか?」


 おっと、たぶん間違えてるな。宿屋の名前が馴染みのないネーミングセンスで覚えにくいんだよな。シンプルに銀月亭にしてくれればいいのに。

 たぶんソレです。すみませんと返し、またダルシャナ達は少し会話したら。


「コッチの要件は終わった。横で待ってる。」


 と、横にズレた。

 うーん、居なくなるのもホモが怖くて困るけど、でも関わり合いたくもないから消えて欲しいこの微妙な心境。



 受付の前に進み、声をかける。


「すみません。登録をしたいんですが。」


 と言うと、40代くらい白人系のおっさんの受付係は少し嫌そうな顔をして、横から1枚羊皮紙っぽいのを出して。


「ええ、では字は書けますか?書けないのでしたら代筆しますが。」


 って返してくる。嫌そうなのは態々忙しい時間に来るなよ的な何かだろうな。当然書けないので代筆でお願いする。




 そこからは名前、年齢、出身地を聞かれた。出身地はヒホン(日本)って言っておいた。特に理由はない。何となくだ。

 聞いたことが無い地名だったようで、何処に有るのか聞かれたが、山奥の村で、方角はわからないと答えておいた。

 よくあることなのか、それで大丈夫だった。チェックがザルだな。


「はい、ではギルド会員証の発行に銀貨1枚頂きます。」


 そう言われたので、ラジャスから受け取った銀貨を渡す。

 あぁ、これで完全にラジャス達との縁が今日は切れなくなった。



 受付は銀貨と羊皮紙を奥に持って消え、少しすると戻ってきた。

 そして、金属製っぽい光沢が微かにある鈍色した3mm厚くらいのカードと、ちっこいすずりのような、コレも鈍色して少し光沢のある謎物体を差し出してきて。


「カードとそこの窪みに血を一滴ずつ垂らしてください。」


 そう言いながら、人差し指程度の長さのナイフをカウンターの上に置いた。

 鉈を研いだ後に、切れ味を見るために親指の皮一枚を刃に這わせて、切れ具合を確認したりするんだけど、血が出るまでは切ったりしないから、ちょっと怖いのが有るな。


 そう思いながら、左手の小指の腹をそっと切り、カードに垂らしてから謎物体の窪みにも垂らすと、血が謎物体に当たった瞬間にカードも同時に二つが淡く光って、すぐに消える。


 予想外の反応にびっくりしていると。


「コレで登録は完了です。カードはお収めください。カードは紛失されますと再発行は銀2枚と照会に時間が一週間掛かります。紛失にはお気をつけください。

 このあと軽い説明がありますのでそのままお待ち下さい。」


 そう言って謎物体を持って奥にまた消える。



 カードを見ると跳ね馬と剣のギルドの紋章が左上の隅にあり。名前、年齢、出身地の他に等級:10級とあった。

 裏を見ると納税記録って左上の方に書いてある。たぶんコレが再発行に時間の掛かる理由なのかなー、なんて思ってると受付が帰ってくる。


「それでは冒険者ギルドの説明をさせて頂きます・・・。」




 必要なところだけ纏めると、主な業務は依頼の仲介で、掲示板で依頼が受けれて、魔獣や、その地域で需要の有る採集品などの買い取りをしてる。


 冒険者は報酬から納税の為に二割税金が天引きされる。これはその年の税額分が貯まると天引きがされなくなる。

 ただし、拠点を他に移す場合などは日割り計算されて、還付金が発生する為、出発、到着時にはギルドに報告するようにとのこと。

 町によって領主が違うからしょうが無いね。他の街で税金収められても新しく到着した町の領主には知ったこっちゃないだろうから。

 怠った場合には、移動した先で依頼を受けると一から税金を全額払い直さないといけなくなるらしい。還付金は移動前にしか貰えない。

 国から税金払えと言われたら、ギルドに来て納税証明を取りに来てくれれば発行するとのこと。


 後はランクがある。ランクは1~10級。

 簡単に言えば、10~8級が新人で、7~5級が中堅、4~2級が一流で、1級は名誉職。

 1級は、冒険者を引退した時に、2級の者で特に功績が高く、引退してギルドマスターに就任したり、国への士官などで冒険者を辞めた際に箔付けで贈られる。江戸時代の横綱みたいなもんだな。

 現役で冒険者やってる者で1級は絶対に無いらしい。


 ランクはギルド側が実績と強さで勝手に付けてくる。冒険者が依頼を受ける時に、受付が実力に見合ってないと判断したら受領拒否されるらしい。

 これは依頼を失敗すると、ペナルティとして冒険者が半金払うんだけど、依頼者は金よりも無駄にした時間の方が痛い場合が有るから、依頼者との信頼を守る為に無謀な挑戦はさせない方針みたいだ。


 たぶん受付も、受け付けた依頼の成功率で査定が入るんだろうな。




 大体こんな所だな。


「ありがとうございました。」


 そう言って、後ろで待ってた人の為に邪魔にならないよう、横に移動する。


「じゃぁ行こう。」


 移動した先に居たラジャスにそう言われる。え?どこに?と思ったが、歩きだしてしまうので黙って付いていく。




 そのままギルドの外へ出る。

 出る前に待合室を見たら顔ぶれは変わっているようだったが、人数は余り変わっていなかった。マジでホモ多いんだな。


 ギルドの入り口から少し離れた、出入りする人から邪魔にならない所で立ち止まり、ラジャスが振り向く。


「ココからはヒロが案内してくれ。ヒロの宿に行く。」


「え、なんでですか?」


「ヒロの泊まっていた宿は比較的安い宿だが、一般向けの宿だった。俺たちもソコに泊まる。」


「それにもうこんな時間よ。これから宿を決めて、また合流して~なんてしてたら暗くなってしまうわ。食事でも食べながら話をするのが効率が良いと思わない?」


 そう言われて時計を見る。5時50分だ。空を見上げるとまだ明るいが太陽は低い門の近くまで下がってる。

 この暗さならやっぱ夏だよなぁと思って、ふと気がつく。


 ダルシャナが俺の腕時計をジッと見ている。


 ヤベッよく考えないで付けて来てしまってた。


「そうですね。では行きましょうか。」


 誤魔化すように歩き出す。嫌だと言っても宿まで来られて泊まられたらどうしようもないしな。

 宿も教えるべきではなかったか。でも言わなくても後付けられたら一緒なんだよなぁ。


「食事なんですが、私は食事は持っていますので、別でお願いします。」


「そうか、じゃぁ食事は後にして話の方を先にしよう。」


「いえ、食事の後でも構いませんよ。」


「話が先でいいわ。」


 有無を言わさない口調でピシャリと言われる。やりづれぇ。

 逃げたいんだけどなぁ。覚悟決めるしか無いのか。




 宿にはすぐに着いた。ホント、狭い町だ。


「ココですね。」



 そう言って中に入ると、カウンターに女将さんが居て、何か書いてた。

 食堂の手伝いは良いのかな?受付も食堂も混む時間だから、手伝いの人を雇ってるとかあるのかもしれんな。


 そう思いながらカウンターに近づくと、女将さんは俺が二人連れて入ってきたからか、ちょっと驚いた顔をしてる。


 誤解されてるんだったな。

 二人も相手にとか思われていそうで嫌だ。

 ダルシャナの背が高い上にフードで顔が見えないから、男と思われそうだしな。


 いい機会だから弁明しておこう。


「戻りました。ギルドに行ってわかったんですが、私は同性愛者じゃありません。

 後ろのカップルはギルドで知り合って、この宿に泊まるために一緒に来ました。

 こちらの男とはそういったかんけ・・・」


 突然肩をガっと掴まれ、物凄い力で無理やり振り向かされる。


 なんだ?と疑問に思う暇もなく、腹に今まで生きてきて喰らった事の無い衝撃が入って軽く身体が浮き、意識が遠のく。


 しかし、意識は飛ばなかった。直後に猛烈な激痛が襲ってきて今度は意識がはっきりとする。

 意識が飛びかけた間に俺は床に膝をつき、顔は床に叩きつけられている。激痛に悶絶してうめき声しか出せない。


「ラジャス!敵対行動を取るな!」


「ちょっと!うちで喧嘩は困るよ!」


 怒鳴り声が聞こえる気がする。痛みに支配されてどうでもいい。脳が理解できない。

 床に頬を触れたまま横を向いた視線の先には、小汚い床とこちらに向かって歩いてくるブーツが見える。



 わけわかんねぇ。今日はこんな事ばっかり、色々ありすぎだろ。


 突然のことに状況がわかってない俺は、息も荒く腹を襲っている強烈な痛みに必死で耐えていた。

 ブクマありがとうございます。この場をお借りして感謝を。


 亀展開ですがお許し下さいボルガ博士!


 この作品では『セルフ』→『鉈』で主人公が世を儚んで自殺します(ウソ)

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