物忘れ
「え~と、眼鏡はどこにやったかな?」
眼鏡を必死に探す博士の様子を見ていた助手は、
「博士、眼鏡なら先程から額にかけていらっしゃいますよ。」
と教えた。
「おっとそうだったか。いやあ、すまんすまん。最近物忘れが酷くていかん。歳は取りたくないもんだな。」
博士は苦笑いしながら眼鏡をかけ直した。助手はそんな博士に優しく言う。
「ですが博士、博士のその物忘れも、私達が苦心して開発している物忘れ解消薬が完成すれば必ず改善されますよ。」
「そうだな。」
やがて、とうとうその日が訪れ、博士は完成した物忘れ解消薬を飲んだ。途端に博士は号泣し、
「私はなんて大切な事を忘れていたのだ。許してくれ。」
と、いつも側にいた息子である助手を強く抱き締めた。