社畜な俺に出会いはない
二徹。大学生だった頃は特に辛くもなかったのに、異様に辛い。まぁ、実際大学のときは麻雀とか飲んでたりして、面白おかしくやってたからだな。
もう、今となっては仕事仕事仕事でブルーライト浴びすぎて目は悪くなるし、なぜか目を閉じても若干視界は明るい。未来は暗いのに…。立てば営業、座ればデスク、歩く姿はほぼゾンビとは俺のことだ。で、今まさに二徹して作ってるのが、社長の娘、次女の読書感想文だ。…いや、俺もおかしいとは思うよ。まさか、社会人になってまで読書感想文書くとは思わなかったもの。でもね、これが断れないんだわ。分かる?クビがちらつくからね。
それでも「太郎くん。追加の仕事」
「……」
「太郎くん?」
「……」
「死んだか。外に放りだしとかないと社の責任になってしまうからさっさと回収班を呼ぶか」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくださいっ!生きてます、生きてますから!てか、回収班ってなんすかっ!」
「…殺すか」
「いえ、何でもありません。私はなにも聞いてません」
「そうか、それならいいんだ」
「……」この人は俺の上司。課長だ。ひっそりと、俺はスーパー社畜と呼んでいる。そして、今の感じで分かる通り鬼畜だ。
「で、課長。仕事って何すか?」
「あぁ、明日の会議の資料をまとめておいてもらいたいんだ」
「て、この仕事課長が頼まれてたものじゃないっすか。」
「いや、そんなことはない」
「絶対そうでしたって」
「証拠はあるのかね証拠は」
「じゃあ、今から部長に…」
「太郎くんっ!」
「はい?」
「私には仲のいい友達がいるのだが」
「はい」
「人事部なんだ」
「……」
「任されてくれるね」
「はい」
「それは、良かった」
こういうところが、スーパー社畜と言われる所以だ。社畜なんだが他の社畜を上手く利用していくあたりが俺らノーマル社畜とは違う。
「で、課長。あのお嬢様はどうしました?」
「はぁ?あんなクソ女のことなど…」
「おっはよぉごっざいまぁすっ♡」
「あっ、おはようございますぅ」
「……」課長……
「おっはよぉ太郎くん。」
「おはようございますお嬢様朝から元気ですね」
「太郎くんはいつも通り死んでるね」
「そうですか?」
「自覚ないの?あっ元からだから自分じゃわからないのか」
「……」
「ところで、お土産買ってきたんだぁ」
「あっ、ありがとうございます」
「えぇ?私のものだよぉだ」
「……」うっぜぇぇぇぇぇぇっ!
こいつは、お嬢様。社長の娘、長女だ。重役出勤当たり前。この人を馬鹿にしたような態度が素なんだから最悪だ。しかも、こいつ全然働いてないくせに将来の重役ポストが確定してるらしい。いまは、なんか体面を保つために一応働いてる(働いてないが)らしい。
「じゃあ、太郎くん。これから合コ…営業行ってくるねぇ」
「えっ、お嬢様。仕事が溜まってるんですが」
「んーと。太郎くんやっといてくれない?」
「いや、お嬢様は…」
「太郎くんっ!」
「はい?」
「私社長の娘」
「……」
「やってくれるかなぁ?」
「はい」課長より展開が早かったのはやはり、格の差だろうか。
はぁ、俺も入社する前はドラマみたいな職場恋愛とか仲間とかちょっと期待してたんだ。それが、なんだかなぁ。
同期はどんどん辞めてくし。残った奴らも別に仲間意識とかはないし、むしろ仕事を押し付けるのに必死だし。職場恋愛とか夢のまた夢だわ。結局生まれたときの身分、社長の娘とか金持ちの息子とかで人生決まっちまうのかなぁ……。いや、そんなことはない…はず…だけどやっぱりなぁ
「あぁ、生まれ変わったら石油王の息子になりたい……」
「太郎くん、追加の仕事」
「……はい」