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ラブラドライト  作者: 影都 千虎
記憶は甦るもの
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08

 一瞬暗闇がすべてを支配した。が、それは突然何かに弾かれたように消えていく。

『……?』

 完全に少女に取り込まれたと思っていたセレスは、状況についていけず首をかしげた。煙から再び人型になった少女に恨めしい目で睨まれているのだが、心当たりがない。とりあえず取り込まれなかったのは確かなようだが。

 もしかして、フィカイアが近くにいたからだろうか。と、一瞬考えたのだがそれは無さそうだ。フィカイアに呪いを弾く力があったのならば、そもそもセレスは呪いが具現化した少女と精神世界で戦っていない。

 となると、呪いを弾いた要因はセレスにあることになる。

 フィカイアになくて、セレスにあるもの。そして、呪いを弾くことができるもの。それは一体なんだというのか。きっと、それさえわかれば、フィカイアの記憶を探るなんてことはせずに、呪いを解くことが出来ると思うのだが。

 セレスは必死に自分とフィカイアとの違いを考える。

 まず、体質や能力などといった内面的なものはないだろう。そういったところをあげていくと、違いとしてきりがない。そして、検証のしようがない。

 だとしたら、外見的な要因から考えていった方がいいだろう。

 幸い、セレスを取り込むことが出来ないと理解した少女は、ただただセレスを睨むばかりでもう襲ってこようとはしない。その目は、何かチャンスを伺っているようでもあるが、よく分からない。

 外見的な要因で、フィカイアになくてセレスにあるものとは一体なんだろうか。

 髪色の白。これは恐らく違うだろう。髪色が関係していたらセレスは半分取り憑かれてしまう可能性がある。白もあるが、黒もあるのだ。しかも、根本が黒でだんだん色素が抜けていくため、どちらかと言えば黒髪の要素の方が強い。さらに言えば、これは個人差であるため内面的なものと同じだろう。

 だとしたら、持ち物。それならば、チャンスを伺っているのも頷ける。それを手離せば、セレスを呪うことが出来るのだ。そうなると、服ではない。小さい何か。そして、直ぐに落とせそうなもの。

『ーー!』

 自分の記憶を辿りながら、セレスは一つの可能性に気が付いた。もしかしたら。これが正解なのだとしたら。これを使えば、フィカイアの呪いも解ける。

 少女が近寄って来ないのをいいことに、セレスはフィカイアの身体を探り始めた。目的物は、呪いと封印の印のようなもの。

『ーーあった!』

 それは左の二の腕に描かれていた。歪んだ形の小さな魔方陣。証拠に、それを見つけた瞬間少女が再び煙と化して、セレスを襲おうとしていた。

 無駄だよ、とセレスは言い、手に握ったリオからもらった水晶をフィカイアの二の腕に描かれた魔方陣に押し当てる。すると、一瞬の間をおいてから断末魔の叫び声が聞こえた。それと同時に、フィカイアの二の腕の魔方陣が消え、世界が白に染められていく。

『……あは、ははっ』

 白い花弁のようなものを散らしながら消えていく少女を見ながら、セレスは安堵のため息と共に笑い声を漏らした。張っていた気が一気に緩み、全身の力も抜ける。

 セレスは賭けに勝った。今度こそ、本当に。

『なんだ……ちゃんと、守れてるじゃん』

 お守りとして渡された水晶の硬さを確かめながら、セレスは呟いた。

 想い人である少女、フィカイアを守れなかったと自責の念にかられていたリオ。フィカイアに関する関する記憶はほぼすべて宝玉の中に封印され、失っていたが、フィカイアを守るという意識はずっと残っていたようだ。渡した相手はセレスだったものの、こうしてフィカイアを守ることに繋がっている。これで、きっとリオも救われるだろう。

 この奇跡とも言えるような現実と、白に染まる景色を眩しく思いながらセレスは目を閉じた。もう、この場所にいる必要はなくなった。あとは現実世界でチェルカに何とかしてもらおう。

 そう考えると、自然と意識がどこかへ消えていった。

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