06
封印。
印によって封じられること。
その定義通り、フィカイアの肉体にはそれらしきものが描かれているらしい。
単純な話、その印を印として成り立たなくさせてしまえば……つまり、札などの形式であれば破り、描かれたものであればぐちゃぐちゃにしてしまえば、封印は破ることができる。
しかし、今回の場合描かれているのは女の子の肌だ。破ることも、ぐちゃぐちゃにするために傷つけることもできない。それに、印が肌そのものに描かれているとも限らないのだ。そうなのだとしたら、もっと別の方法で解くしかなくなる。
また、フィカイアは呪いだと言った。その通り呪いであれば、それは正しい解呪方法がどこかにある。それさえ見つかればどうにかなるだろう。もっとも、見つかっていないから今も尚フィカイアは眠り続けているのだが。
「知られてないけどさ、封印ってもう一つ破る方法があるんだよね。しかも絶対にとける方法」
一通り呪いと封印についての解説をしたチェルカはぴんと人差し指を立てて言った。
「封印には大体、有効期限みたいなものがあるんだよね。時間がたてばその効力は薄くなって、そのうち解ける。……ただまあ、その時間が百年とかそういう単位だから知られてない技なんだけどね」
俺には出来るけどと、とても自慢気にチェルカはニヤリと笑った。そう。悔しい話したが、この男には余裕でできてしまう。
しかし、それだけでは済まないのがフィカイアの身体のようで、チェルカは「だけど」と付け加えた。
「これが呪いだったら話は別なんだよね。さっきも言った通り、呪いはそれに見合った解呪方法が必要だ。それを間違えたら呪いを増幅させることに繋がる。それに、時間を経過させて解くって方法もできない。呪いは時間が経過するにつれて酷くなっていくパターンが多いからね。そこで、セレスの登場だ」
「私?」
「そう。むしろ、君にしかできないことだと思ってるよ、俺はね。
君は記憶を読むことができる。それは生物に限らないってことを前に証明してくれたよね。この前、魔方陣を書き換えたみたいに、呪いを読んで書き換えてしまえばいいんだよ。呪いを、期限がある封印に書き換えてしまえばいい。記憶の入り口はきっと、フィカイアの身体にあるんだろうし、さ?」
なるほど、とセレスは納得した。確かに、呪いそのものの記憶を読んで、書き換えて、厄介なものから単純なものにしてしまえるのはセレスしかいないだろう。呪いを解くことは出来なくても、期限つきの封印に変えてしまえば、あとはチェルカが何とか出来る。
「私、やるよ」
決意をするまでもなくセレスは言った。元より、リオの宝玉の記憶を視たときからこうすることは決めていたのだ。むしろ、自ら進んでやりたいところである。
そしてセレスはフィカイアの身体へと足を進める。止めることなく、真っ直ぐに。
そして、フィカイアの隣まで来ると、セレスはフィカイアの額にそっと右手をおいた。その右手に魔力を集中させると、フィカイアの記憶がセレスの前に広がっていく。
ーーと、突然のことだった。
広がっていた記憶のなかから当然真っ暗な染みが現れ、それはセレスが記憶を読むことをやめる前にセレスの意識を飲み込んでいった。




