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ラブラドライト  作者: 影都 千虎
記憶は使うもの
37/77

03

 先に動き出したのはセレスではなく相手方だった。どうやらセレスを囲んだら直ぐに動くという話になっていたらしい。剣士たちを盾に、魔術師たちがセレスだけに当たるように魔術を放とうと位置を微調整している。念入りに策を練ったようだ。或いは戦い慣れした集団か。はたまた両方か。

 森というステージを選んでいるのも、セレスに魔術師を襲わせない為だろう。これでは剣士たちを飛び越えて魔術師を狙おうにも、木々が邪魔して動けない。勿論剣士たちは皆片手剣に盾という装備で、両手剣などを持っているものはいない。小回りがきくため大振りの瞬間に隙が生じることは無さそうだ。まあ、あったとしても一人を狙う間に他が襲ってくるだろうから、元々そんな隙あってないようなものだが。

 さて、どうしたものか。セレスは剣士たちの剣をなんとか避けながら考える。考えれば考えるほど身が固くなりそうだ。それでも考えなければ場を切り抜けられないのが困ったところだ。

 セレスは記憶の分野が飛び抜けたパラメーターになっている状態だ。腐っても不老不死であるため、その辺の魔術師なんかと比べればその魔力量は桁違いだし、記憶さえあれば魔力を産み出すことができるため、特大魔法を連発できると言っても過言ではない。

 しかしそれは、記憶という分野に限ればの話である。逆に言えば、セレスは他の魔法を全く使えない。火や水といった基礎的なものは勿論、闇や光といったやや特殊だが素質さえあれば使えるものも全くだ。

 記憶を奪うこと。記憶を読むこと。記憶を再生すること。記憶を途切れさせること。それがセレスが使える魔術のすべてだ。しかし、今はそれらを使えるような状況ではなかった。

「ほっ」

 四方八方から襲い来る敵の剣と魔術を、その間を縫うように宙返りで避けてそのまま近くの木へ着地する。うまくいったようだ。セレスの髪も服も傷ひとつついていない。

 セレスは着地した木にそのまま居続けるなんてバカなことはせず、枝がへし折れる勢いで跳び他の木へ移る。すると、さっきまでいた場所に魔術師の放った火の玉が直撃し、木が燃えた。

「森林破壊は感心しないよねー」

 言いながらセレスは次から次へと木の上を移動する。その度に木が燃えたりへし折れたりして、森林破壊をしているのはセレス自身のような気がした。

「さて、こんなもんかな」

 森の一部を円を描くように拓けさせたところでセレスは呟いた。そして木から降り、円の中央に立つ。それから少し考えるような表情をしつつ指輪を撫でると、突然しゃがみ地面に手をついた。

「『砂嵐』」

 その一言だけで、セレスの周囲の土が突然巻き上がり、木にぶつかるまで、つまり拓けさせられた土地と同じ円を描くように砂嵐となって剣士や魔術師たちを襲う。物理的なダメージはあまりないが、目隠しには十分だ。

 砂嵐が巻き起こっている間に、セレスは体勢を低くして砂嵐の中へ飛び込み、一本の炭と化した木に触れた。それだけでは、まだなにも起こらない。

 そんなセレスの背中を近くにいた剣士が狙う。セレスはそれを見越していたのか、即座に振り向くとその剣に躊躇いもなく手を伸ばした。そして手が切れることも気にせず握る。

 すると、セレスの手が切れる前に握られた剣が炭と化し、ボロボロと崩れ落ちた。

 その突然の現象を理解できず、剣士の動きが一瞬止まる。セレスはその隙を狙って若干飛び上がりながら剣士に強烈な回し蹴りを喰らわせた。それも、蹴りにより飛んでった剣士が後ろの魔術師に直撃するように。

 剣士と魔術師が直撃したのを背を向けて確認しつつ、セレスはまた体勢を低くして一気に駆け出す。砂嵐はまだやんでおらず、セレスの行動に反応できた者は居ないようだ。その間にまた木に触れ、先程と同じ要領で次々と剣士たちの剣を炭に変えていく。

 その原理は簡単だ。いつか、リオとチェルカで模擬的な戦闘をしたときにチェルカの今までの痛覚を再生したときのように、木の『燃やされてボロボロの炭になった』という記憶を再生しているだけだ。この前と違うのは、再生する場所を木ではなく剣にしているところだろう。丁寧に記憶をコピーしては貼り付けるという作業をしているため、一々対象物に触れなければならないという難点があるが、人間を相手にしていない分記憶の解析が楽にできるため、大きな隙が生じることもない。それに、今ここには炭となった木が周囲に大量にある。そう仕向けたのだ。セレスにとって武器に溢れた現状と言っても過言ではない。

 砂嵐の方も同じ原理だ。この場合、使った元の記憶は指輪の中にある記憶だが、コピーして貼り付けているのは同じである。セレスの指輪には自分の記憶を失わないために様々なところから奪い取った記憶が貯められている。これもこれで大量の武器なのだ。

 どうやら、相手はセレスが記憶を操るということを知らないらしく、触れただけで突然起こる現象にただただ驚くしかないようだが。

「さて、さっさと片付けちゃうよ」

 呟いてセレスは指輪に触れる。さっさとこの剣士と魔術師たちを片付けて、チェルカと合流しよう。その為なら記憶を武器にしたって構わない。

 記憶はセレスにとって使うものでもあるのだ。

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