07
「へっ、変じゃないのじゃ! 笑うななのじゃ!!」
爺言葉の幽霊少女は叫ぶように言った。それを聞いて、セレスはさらに笑いそうになったが、更に怒られそうだし話も進みそうにないのでグッとこらえることにした。ここで幽霊と呑気に漫才をしている場合ではないのだ。
「えっと……『かえして』って言ってたけど、何かを盗られたの?」
とはいえ、何かを盗られたのだとしたらそれを放っておくわけにもいかないので質問はする。さっきと今とで大分ギャップがあるほど必死だったのだ。それは大切なものに違いない。大切なものを失う痛みは何よりも辛いと知っているからこそ、気になってしまう。
「んー……盗られたって訳じゃないのじゃ……」
セレスの言葉に、幽霊少女は眉を下げ首を振りながら言った。
「ただ、知り合いが持ってるものと似てたから……それかなって思ったのじゃ……」
ごめんなさい、と少女は改めて頭を下げた。そして、それ以上はその事について話そうとしなかった。
「それよりも」と、少女はしょげた顔を元に戻して首をかしげつつ言った。「君はよいのか? 探し物があるんじゃろ? ……いや、探し者か」
何故それを知ってるのか、という言葉がでかかったがそれをなんとか飲み込んだ。そうだ、セレスは自分の記憶、持ち物の記憶をすべてこの少女に見せたのだ。
「……実は、そんなことしなくてもこうすれば読めたのじゃ」
すうっと嫌な感覚がしたかと思えば、幽霊少女の顔がセレスの胸から生えていた。透けているとはいえ、衝撃映像である。
「……読める?」
「そうなのじゃ。幽霊であるがゆえ、見えない部分を見ることができるのじゃ」
にひひと幽霊少女は笑って見せた。幽霊だから、というのが理由なのかはわからないが、これが彼女の能力であるのは確かである。相当な能力であることはよくわかった。
「赤い着物の少女を探してるんじゃろ? なら、私もついてくのじゃ」
「ついてく? 何故……」
「ここで足止めをしてしまったお詫びなのじゃ。一応私はこの辺の地形を知っているし、移動速度で足手まといになることもないのじゃ」
「……まあ、それは……」
セレスにとってすごくメリットになる。魔力と体力の節約をしている今、作業効率が格段に上がりそうな仲間というのはとても強力である。
「ん、ならいいってことでよいのじゃ。よろしくなのじゃ、セレス」
セレスから抜けると、少女はセレスと向き合い笑った。触れられないことがわかっているからか、決して手は出さない。握手できないというのは、少しだけ寂しいものがあった。
「よろしく。……えっと、ちなみにあなたは」
この流れならセレスも少女の記憶を読んで名前を呼びたいところだったのだが、少女の記憶に触れることすらできないのでそれが叶わない。仕方なく、慣れない様子を醸し出しながら少女に訪ねるのだった。
「私? 私の名前か。私はフィカイア。フィカイア・ソンニャーレなのじゃ!」
フィカイア。その名前に何処かで聞き覚えがあったような気がした。しかし記憶を探ってみても出てきそうにない。それに、彼女と初対面であるのは実証済みだ。きっと気のせいだろう。セレスはそう判断して、柔らかく微笑んだ。
「よろしく、フィカイア」
こうして、記憶泥棒と幽霊少女のタッグが完成したのである。
「あ、因みにセレス。今この町なのじゃが……」
「ん? 何?」
少し真面目な顔をしたフィカイアに若干の嫌な予感がしつつセレスはフィカイアの言葉の続きを待つ。
「今、この町、誘拐犯が居るみたいなのじゃ……ロリコンの」
ロリコンの誘拐犯。ロリコン。少女趣味。少女。つまり、少女が誘拐されている。
「!? それを早く言ってほしかったよ!?」
椿が誘拐犯に拐われたという可能性に気付くと、セレスは叫ぶように言い、走り出した。思っていたよりも猶予はずっとなかったのかもしれない。
「その誘拐犯を探すよ!」
「了解なのじゃ!」
言って二人はとてつもないスピードで屋根の上を駆け巡り始めたのだった。




