林檎花火
脈動する心臓大砲から打ち出された
煮えたぎる血液結晶 林檎が一つ
林檎は空に昇っていく
よろよろと緋色の軌跡を垂らしながら
絶えず働きかける絶対重力を遠くに振り切り
地平の果てまで覆われた闇の緞帳を斬り裂いて
そうして間もなく辿り着いた頂点にて
林檎は轟音で爆発する
同心円状に破裂する果肉
一等星も霞む果汁飛沫の輝き
噴き出た化学的緑炎は一層燃え上がり
花火の残滓が地べたを這いずる蟻共を焼き殺す
それは一瞬だった
月の消えた夜空 誰もいない河川敷で
ひっそりと終える 林檎の復讐