四話 城下町での出会い
「は、ハックシュン!!」
うぅ……寒……大きなくしゃみをし端末で出した着替えを着る。既に日は落ちて星が浮かび完全に夜になっている。下水道から離れた人気のない橋の下で体を休めていると。時折橋の上から鎧を着た集団が通る音が聞こえる。
……やっぱり、私を探してるよね? これ?
城から脱獄し、しかも兵を気絶させたとなれば確実にダメだけどさ? 元はあのトカゲから助けただけなのに、なんでさぁ……はぁ、幸先思いやられる……
白シャツに茶色のズボン。黒の外套を羽織り。赤く長い髪をしたウィッグをつける。
脱いだ物は端末の写真機能で撮り、光となって消える。物を戻したい時は写真を撮りパルトが消してくれるようだった。
(自分を写したらどうなるかと言う想像は捨てよう)
「……行ったかな?」
階段を上り、表に出る。左右の道の先には、家々が並び道には明かりの為火が灯ったカンテラがいつくつか置かれて、現代社会では見られない光景に異世界にいる事を改めて再確認した。
「さて、どうするよ?」
「どうするって言われても……」
とにかく今はこの街から出よう、いくら変装しているとは言え。ここは私が知っている世界ではない何が起こるか分からないのだからか。と、歩き出そうとしたら
「は、離してください!!」
後ろから幼い声が聞こえた。黒い外套を身につけた男三人に一人の少女が囲まれており、少女は短く赤い髪をして緑の上着とシャツに、赤いスカートを着て手には大事そうに籠を体に抱いて守っていた。男達はどうやらその籠の中身が目当てで、少女から奪い取ろうとしている。
「こんな所でカツアゲかよ?」
もう……次から次に……ため息をつきながら、太ももにつけていたホルスターから小型銃を抜いて弾を確認する。弾は致死性が無い麻酔の物で、男三人に気づかれる前に近づき、引き金を三回引いて パシュン パシュン パシュン
と乾いた音が鳴り、命中した三人は直ぐに気を失いその場に倒れ込む。
「え? あ……?」
いきなり男達が倒れた事に驚き混乱していると、少女が私の事に存在に気づいて目が合う。少し怯えている彼女に「夜は危険だから、気をつけてね?」と安心させるため笑顔でそう言ってさっさと立ち去ろうとしたら。
「ま、待ってください!!」
全速力で私の方に向かって来て、足のバランスを崩し私めがけて突っ込んで来たのをなんとか受け止めた。
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私、ルナ・ステイルはいつものようにお手伝いが終わり母に渡す薬を持って帰る途中でした。その夜はいつも以上に星が輝いており、何か素敵な事があると胸に希望を持って歩いていたら、突如。知らない男の人達が母に渡す薬を奪おうとして来ました!!
この薬を譲ってくれている、いつもお世話になっている人と母は知人の方で本来なら私のお手伝い程度ではとても買えない程の高価な薬をお給料変わりに頂いてました。この薬はお店では滅多に売っておらず売れば高値がつくためこの人達の狙いはまさしくそれでした。なんとか逃げようにも王族でもない私が魔法なんて使えずどうしようもない。このまま盗られてしまうと覚悟していた時でした。
突然男の人達が私の前で倒れ、その後ろには綺麗な私と同じ赤い髪の女性が何かをこっちに向けて立っていました。
「夜は危険だから、気をつけてね?」
そう言って立ち去ろうとしたあの人へ、何時の間にか体が動きあの人を呼び止めたのですが、足が石にぶつかりそのままあの人に飛びつくように転びました……
私は地面にそのままぶるかると、思っていましたがその目にあの人が私を受け止めてくれて、怪我をせずに済みました。
改めて近くで見ると、同性の私ですらとても綺麗で見とれてしまいました……
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突然すっ転んできた赤髪の子を受け止める。小柄で軽かったので私も一緒に倒れえる事はなかったけど、さっきから私の顔を見て何も話さない。もしかしてウィッグがずれて銀の髪が出たのかな? と思い触って確認するが出てはいなかった。
じゃあ何? と思いつつ今だ私を見つめる少女に声をかけた。
「ねぇ?」
「は、はい!?」
驚いて、私から離れ顔を赤くして私から視線を外す。見た目的にどこか怪我をしている様子もない見たいで良かった……襲っていた奴らも気になるが、今はそれどころじゃない。
「それじゃ……私はここで……」
と彼女と別れようとしたが、遠くから幾つかの明かりがこっちに向かっているのが見えた。そして気づけば人が集まってきていた。さっきの少女の叫びに気づいた街の人と、近づいてくる明かり……数人の兵士が近づいてきた。
ヤバ……とにかくこの子は兵に任せれば大丈夫だと思い、さっさと姿を隠そうとするが。何故か赤髪の子は私の外套を掴んで離さない。
何で!? と思いつつもう外套を脱いで逃げようと考えていると、目が合って今にも泣き出しそうな顔で私を見る。無言の涙目に動揺している内に、兵達が近づいてきて逃げられ無かった。
「なんだ!? 貴様何者だ!?」
倒れた男と、私を見て槍を向けてくる。こうなったら強行で……と思っていたら私の前に少女が立って。
「待ってください!! この人は……この人は私の所のお客さんです!!」
少女が叫び、兵達はその言葉を真に受けたのか、どうしたら分からず私から槍を下ろしたのだった。