三話 魔獣退治からの、王都ガイストへ
煙が晴れると。さっきよりもさらに目を紅くして私を見る巨大トカゲ。どうやら目標は完全に私の方へ変わったらしく奇声を出しながら私の方へ突撃してきた。
「だ、ダメです!! 逃げて!!」
後ろの方で小さな女の子が叫んでいるが、無視してアクセルを全開にしてトカゲに突っ込む。トカゲの方は向かって来た私に警戒せず、そのまま体当たりするつもりで勢いを殺さず突っ込んで来た。もちろん私は当たるつもりはない
「もったいないけど……まぁ、くらいなさい!!」
奴に叫びながら、バイクの向きを奴に向けたまま飛び降り、無人の二輪車はそのままトカゲ激突する。着地してすぐにグレネードランチャーをバイク向かって撃ち引火し爆発が起こる。
一応あのバイクと一緒にあったワルサーは気に入っていたのだが、どうせ端末を使えば大丈夫だろうし と内心で割り切ったのは内緒だ。
「な、何なんだ……爆発し、た?」
鎧を着た集団の一人、黄色髪をした男性が驚き、赤い髪の女性が私を睨みつけてきた。まぁ、いきなりあんなド派手なアクションしたら誰だってそうなるし、どう話せばいいかな、とその前に……
グァァァァ!!!!
顔にやけどを負い、血を出した奴が怒り(多分)を全開にして叫び、顔を上にそらして大きく息を吸い込んだ。
「マズイ!! ブレス攻撃だ!!」
「総員退避!!」
「だめだ、グランリザードから離れるんだ!!」
鎧の集団は慌てた様子で下がって行き、私にまで忠告するが奴は大きく吸い込んだ息を私めがけ、吐き出した。
カッ!!
グランリザードの口から出された強力な火炎放射が、私を包みこんで辺りを焼き野原にしていく。急いで炎に向かって「消えろ!!」と念じたが、勢いがありすぎて防ぎ切れない……
流石にマズイと思っていたら、突如黒い光が私の前に現れ炎の威力を完全に抑えた。
丸焼きにならずに済んだが…… ちょ、あつ、熱!!
私に直撃しくる炎だけが消え、辺りの燃えた部分までは消えてくれはしなかった。そして炎はみるみる内に木々に燃え移り山火事に発展していく。
「これ……ヤバイよね?」
炎の熱さと、冷や汗が混じり。速攻でこの自然災害生物を排除すべく。端末を取り出し、火気を使わない武器を取り出す。
再びあのトカゲは息を吸い込んで本格的に私を黒焦げにしようと、さっきよりも
体全体を使い深呼吸を開始する。
「相棒!! コイツを取れ!!」
突然、パルトの声が聞こえ。私の前に光が出てきたので掴む。
「これは……」
「そいつだったら、火は使わない!! さっさっとやんねぇと、火だるまになるぞ!!」
相棒に促され、機械の棒を手にして一気に奴に近づく。私が近づいた事に気づいてまだ貯めていた息を出そうとしたが、その前に棒を横に一閃して強力な水が発射される。
スパン
何か切れた音がし、巨大トカゲは火を出さない。代わりにゆっくりと、奴の首が地面に落ち。巨体も大きな音を立てて力なく倒れる。
「た、倒した……」
地面に膝をついて、手元にある武器「ウォーターカッター発生器」を見て息を吐いた。
「お疲れ、相棒」
「やばかった……」
パルトが出してくれた機械を見て力なく呟く。
これは強力な水圧を発射し、鉄も切断可能な水を使った技術を持ち運びできる武器だった。しかしこの手に持つこの機械には水の要領も少なく使える間合いも狭くて一度しか使えない等難点がある。今回はあのトカゲが火を吐いたせいで火気を使えばさらに火が強くなって手に負えないためだった。
「って!! やば、これ火事!? どうすんの!?」
辺りを見ると、既に逃げ道もなく煙が蔓延し息ぐるしい。早く火を消さないと今度こそ丸焦げになる!! 端末を出し、何か火を消せる物がないか考えていると。画面に一滴の水が落ちる。そして空を見れば雲行きが怪しくなり直ぐに大量の雨が降って火が沈下していった。
「随分と荒らしてくれた物だな……?」
と、突如後ろから声をかけられるが突如、私の周辺に弓矢が飛んできてその場から動けない。そして、何人もの槍を持った人に囲まれるのだった。
「妹の元に行けば、うるさいトカゲと小娘が一人……我が国の森を荒らした罪は深いぞ?」
気づけば首に剣を突きつけられ、目の前には、長身で銀の長い髪。これまた豪華な鎧をきた女性が私を睨み、そのまま私は拘束されどこかに連れて行かれたのであった。
マジかですか……
そのまま兵達は私を抑えこみ、馬車に詰め込めれるのだった。
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大都市「ガイスト」
この世界にある二大都市の一つで王家である「シエル」家により統治された国。
文化と人権を重んじ、差別や戦争等が滅多に起きない平和な国としているが、代々王家の者には不思議な力が宿り、その力で民を正く導いてきたのもある。
会議部屋
「スノウ……今しがた言った事は事実か?」
豪華な鎧を着た女性が、スノウと呼ばれた馬車に乗っていた子の名を呼び、何か焦った顔をしていた。
「そうなんです姉さま!! あの方は魔獣から私達を守ってくださったのです!! ですから何も罪もございません!!」
「恐れながら、ティア王女……私も今だ信じられませんが、あの者に窮地を救われたのは事実、急ぎ、かの者を解放してください」
ネロが頭を垂れ嘆願し、スノウも必死の目で王女を見る。無愛想な顔をし自分を必死にみる小さな妹をみて、特に顔を変えず兵に命令を下す
「よかろう……その者と話しがしたい……牢から出せ」
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「おい、起きろ!!」
「あぁ……うるさい……こっちは疲れてんのにさぇ……」
牢屋のお粗末とは言えない石でできたベッドで横になって靴の底をいじっていたらいたら、赤髪の女性が大きな声を出し私を起こす。ずぶ濡れのまま連れてこられ体が寒いのに、とんだ貧乏くじ引いたなあ……
と思っていると、鍵が開けられて中に兵が二人と赤髪の女性も入ってきた。どうやらどこか別の場所に行くらしく、着いて来いとの事だった。
「ちなみにどこに行くんですか?」
「ふん、貴様のような不審なやつに答える必要はない、それより。何故貴様が姫さまと同じ御髪をしている? 」
同じ髪? そういえば、あの小さな子と私に剣を向けた二人って白い髪だったけど……なんでこの人こんなにいらついてんの?
「まぁいい、話しが終われば貴様など処刑行きだ!! 覚悟していろ!!」
と敵意を出され、正直イラッとした。狼に襲われそうになったのを助けたのにこの人は!!
と思いつつこらえて、彼女に私の荷物はどうしたか聞くと。腰に吊っていた袋を持ち中を見せてきた。そこにあるなら……
兵が私を拘束しようと近づいてきた時、一人目の手を伸ばしてきた兵の手を掴み
「どっせい!!」
掛け声を出し背負い投げをして壁に叩きつけた。すぐさま二人目の兵が襲い掛かってくるが、身を小さくして両手を後ろに引いて一気に前に押し出し。拳底で鎧の内部に衝撃を与え倒す。残った赤髪の女性は二本の剣を抜いて私を切りにかかるが、目をきつく閉じて靴底に隠していた小さな弾を投げつけた。
カッ!!
弾から強烈な光が生まれ、目を閉じていなかった女騎士は剣を手から離してその場に崩れた。
「く、くそ!! い、一体なにが、目が!!」
いきなり視界を奪われ動揺し手を振り回すしかできない彼女のそばによって端末と石が入った袋を奪い、黙ってその場から立ち去った。後ろから何か聞こえたが無視して端末を起動するどうやら壊れてないらしくメニュー画面がすぐに開いた。
「数時間ぶりだな? どうだい? 異世界で逮捕された感想は?」
「馬鹿な事言ってないで、さっと逃げるよ!!」
とにかくここから出ないと本当に処刑される(兵三人倒してしまったため)道具を取り出すため端末を見ると新しいメールがあった早速パルトが読み上げた。
「どうやら、面倒な事に巻き込まれたようだね?
そのままでは、逃げ出した事が気づかれ包囲網を作られる。その前に私が君を誘導する、この端末には既に城のマップはインストール済みだそれに従いなさい」
そう書かれ、画面にマップが写出された。現在地は地下牢屋で城の全体としての形は漢字の王に近い。今は左下にいる。マップは上に登る階段ではなく、足元にある鉄格子を矢印で示していた。
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「も、申しあげます!!」
謁見の間に、一人のアンに投げとばされ伸びていた兵が慌ただしく入り込む。息を大分荒げ、スノウやネロら騎士が注目した。
「た、大変です!! こちらに連行する予定の女性が……脱獄しました!!」
「な、なんだと!! 馬鹿者!! その者は我らを救ってくれた恩人だぞ!!何が連行だ!! 罪人ではないのだぞ!! すぐさま探しだせ!!」
ネロが兵達に指示をし、すぐさま城のあらゆる出入り口や窓が封鎖され。アンを捜索するのだがーー
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「ぷはぁ!! くっさ!! 何もこんな所じゃなくたっていいのに!!」
異臭がする水に気分が悪くなりながら錆び付いた格子を思いっきり蹴って壊す。 牢屋に入れられて半日ぶりに外に出た。既に夕陽が上り、一日の終わりが近づいていた。とにかくもう逃げた事は気づかれているはずなので、異臭をどうにかする前に下水道から早く出る。
どうせなら、もっとましな道が良かった……
「ひとまず、もう少し進まないとまだ安全じゃないぜ? ほれ、早く」
この匂いが分から無いくせに……と思いながら。周りを警戒しつつ進のだった。
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兵士達が綺麗に整列し、王の椅子に座るティア王女は静かに直立で立ち緊張した顔のファイを見て口を開く。
「お前は何を言って、ここまで我が妹の恩人を連れてこようとした?」
その言葉にファイは体を膠着させ、背に冷や汗をかいた。昼間彼女が牢屋からアンを出そうとして言った言葉。
「処刑行きだ!! 覚悟せよ!!」
ファイは確かにそう言って、そして次の瞬間に抵抗され、まんまと逃がしてしまった。
処刑されると聞けば誰だって抵抗する、だが相手は自分だけでなく守るべき姫をや自分達を助けてくれた人物だ、何故そのような態度をとったのか自分でも分からないが、これは許されるべきではない。
「陛下、お言葉ですが。あの者は異形でした……見知らぬ衣服をまとい、見た事のない物を使い魔獣を撃退したなど……」
「けれど、私を助けてくれたのは確かです!! それを、異形などと……」
スノウは悲しい顔をし、目に涙を浮かべる、ファイはそんな姫をみて動揺し周りの兵に緊張が走るが、すぐさま王女が彼らを静め
「ともかく、その者を探しだせ。もし、その力があの国に渡れば、被害が出よう」
とアンの捜索を命じて、そこで解散となる。一人で自室に歩く王女ティアは深刻な顔をして
「何故……何故、王家以外の者が私達と同じ髪を? 何者なのだ?」
とつぶやき闇の中に消えるのだった。