三十五話 春来る山
完全に氷塊が粉砕され、中からガラスのような綺麗な翼を広げた巨大な鳥が動く。
氷がこっちに飛んできたから、急いでイースを抱えて走る。
「は、離して!! 私はおねいちゃんを!!」
いいから暴れるな!! ジタバタして抵抗してくるけど、なんとか外まで走る。すると、神殿が崩壊して一つの大きな影が上空にいた。
グワ!!
透ける翼を広げ、ガラスのような目が私を捉える。どうやら既に敵って気づいてるようね・・・だった!!
「やるしかないわね!!」
イースをその場に置いて近づく。端末から装備を出し、ひさしぶりに使うRPGランチャーを出し発射した。弾頭はまっすぐに奴に向かって行く、このまま爆発すると思った時、大きな翼を羽ばたかせ風が起こり弾頭が突然落下した。
「え!?」
爆発もせず、沈黙した弾頭を見て声を出し、奴を見るとまた翼を羽ばたけせる。
「逃げろ!! その風は、冷気含んでやがる!!」
言われたとうりにランチャーを捨てて横の飛んで回避したが、突然右足に痛みが走る。
倒れた状態から自分の足見ると、完全に凍ってしまっていた。片足で膝をつけ移動しようとしたけど痛みで動けない。
「クッ!!」
「大丈夫か? っ!! 上だ!!」
上を見ると、奴が私に向かって口を開いて何かが出る。ものすごい風が吹いた後意識がそこで途切れた。
○
寒い
体が全く動かせない。息も出来ず指声もだせない・・・
目は瞬く程度はできるけど、どうあがいてもこの金縛りを抜け出す事は出来なかった。
パルトの声もしない、もしかして私は死んだのか?
「・・・・」
? 今、かすかに声が聞こえた・・・耳を澄ませると
「・・・じょ、うぶ・・・」
声が聞こえた時、光が出て視界がいきなり変わる。
どこかの山道で、一人の女の子が山を登っていた。手には巫女鈴を持って・・・
「はぁ、はぁ・・・私が、代わりにしないと!!」
走る度に鈴が激しくなる、やがて息が上がって足を止めた。
「お、ねい・・・ちゃん・・・」
顔をあげた彼女の目線の先は、頂上を見てまた足を動かした時だった。出した足がバランスを崩して転び、手から鈴が落ち行く、慌てて取りに走り崖に落ちる寸前だった。
バコン
足場がくすれ、女の子はそのままーー
(もしかして、これって・・・)
「そう、これはあの子・・・イースの過去です」
目の前に青い紙をした女性・・・神殿で氷付になったあの女性だった。さっき聞こえ声と同じで、多分この人だった。
「私はイースの姉替わりをしていた者で、サールと言います・・・今見たように、あの子は既に・・・」
「この世の者ではない・・・?」
私の答えに黙って頷く。これで生体反応が出なかった理由は分かったけど・・・
なんで彼女があんな事をしたのか理由はまだ分から無い。
「山の麓の村・・・私達の故郷では山の神殿で巫女が儀式を行伝統がありました・・・その年、本来巫女である私が清らかな音を捧げあの魔獣の封印と、村の繁栄を祈るつもりでした・・・運悪く体調を悪くしてしまい、あの子が勝手に鈴を持ち出し、その最中に・・・」
さっきのようになって果たせなくなった・・・
「その後、妹の遺体を埋葬し片方の鈴の行方が分から無いまま、私は神殿まで行きましたが、封印がままならず、魔獣の力が外に出て冬の世界となってしまい、今魔獣が完全に外の世界に出てしまいました・・・」
また視界が変わる。今度は猛吹雪の宮殿でサールが片方の鈴を鳴らす姿が出て来る。
彼女の体から光が、マナが流れ出し鈴の音が大きくなる事に彼女の体が氷始めたところで消える。
「私の命を持っても、外の世界にまで影響を及ぼす力・・・もし、この山から出してしまえば、永遠の冬が訪れ人が住めなくなってしまう。だから、あなたに託します」
私が持っていたのと彼女の鈴が青く光る。そしてひとりでに動き、私の髪も銀に光る。
「私のマナをあなたに・・・そして。村を、あの子を助けて。お願い・・・」
待って と声をかける前に彼女は私に青い宝石をポケットに入れ姿を消す、そこで視界が真っ暗になった。
○
「ぷはぁ!!」
全身ずぶ濡れになって、目の前に倒れる。息が苦しくて、大きく息を吸って肺に入れる。
「はぁ、はぁ・・・・」
息を整えていると、後ろから大な鳥の声が聞こえ。振り返ると、あのガラスの鳥は冷気を出し辺りの気温を下げていく。
「コイツ!! ここから出してたまるか!!」
端末から赤い光が出て、弓が出る。マナを流し込み炎の矢を放ち、翼の一部を溶かした。
ガアァ!!
騒ぎ始め、次第に翼が再生する。そして、私を見て再びブレスの攻撃を仕掛けようとした時。
リン
後ろから音が鳴り、イースが二つの鈴を持ち鳥の魔獣を見ていた。
「今のうちに!! 私が奴を抑えるから!!」
さらに強く鳴らし、奴の動きを止めに入る。そして、彼女の青い髪が光始めた。
「・・・分かった!!」
弓にマナを溜め込む。次第に炎が強くなっていき辺りの雪を溶かし始めた。熱気が私を包こみ、イースの制御がどんどん弱くなりーー
ガァァ!!
猛吹雪のブレス攻撃が放たれて
「行っけ!!」
灼熱の矢を打ち込んで
ぶつかる。
炎はブレスの冷気を蒸発させ、結晶の鳥を溶かしていき
最後には、爆発が起こり視界が真っ白に覆われた。
○
「い、一体どうなったんだ? あの爆発は!?」
「ゆ、雪がない!?」
麓の村では、いつまでも続いた冬が終わり騒ぎが起こっていた。山頂の爆発で一時は避難していた村人の一部が戻り、辺りを確かめているところ見たいだった。
彼らに気づかれないように、最初にきた店に入り壁にあった何かを支える小さな台二つを持ち出し、村から少し離れた石が並んだ所に来た。
「ゴメン、おねいさんのは・・・見つからなかったんだ」
二つ並んだ石。彼女達の名前が記入された墓石を前に、持ち出した台を置いて両手を合わせて、目を閉じる。
「まさか死んでたとはな・・・たく、それだったら最初から言えよ・・・」
相変わらずの口調だけど、いつもより覇気がない声を出す相棒。それから何も話さず、墓を後にしようとした時。風がふく。
「あ・・・」
目の前に、二人が仲よく立っていて笑顔を私を見て口を動かし、手を振って風がまた吹き、姿が消えた。
「ねぇ・・・」
「あ、あぁ・・・はっきりと見えた・・・」
後ろを振り返り墓石を見つつ、さっきの言葉を・・・ありがとう と言われたのを思い出し、自然と笑がこぼれていた。
「どういたしまして」
一言伝え、その場かは去る。後ろに人の気配を感じつつ私は村から出て行った。
○
ブォォ!!
草原をバイクで走る。魔獣や障害物もなく、村から大分離れた。
「ねぇ、そういえばさ・・・昔あんたの、その姿作ったて話しなんだけど」
レンズに、パルトが写し出された。暇だったのか、ヘルメットを被り、バイクにまたがって私を見る。
「あぁ、そうだが?」
「ごめん、それすっかり忘れてた・・・確か、初めての仕事の時だったね、私達が出会ったのて」
アレは確か、父さんの下で何年も修行して認められた時だった。簡単な潜入作戦で、一人では心細いとどこで造られたのかパルトを渡されたんだった。最初は姿形もない、今みたいに感情なんて無かったんだけど・・・
「おまえが任務中に、弄り回したからこの姿になったんだよ」
「スミマセン、デシタ」
片言になってしまう。そう、力を使って端末をいじった私の原因だった。子共の時に落書きした絵を思い出し、なんとなくそれをイメージしたらこんな姿になり、戻すこともできず、仕事をする羽目になった。ちなみに結果は何とかなった。
「その後、おやっさんに絞られたな? なに遊んでんんだおめぇって?」
「アレは、ちょっと・・・」
帰った後、すぐいバレて威圧たっぷりに絞られ大変だった。二度と味わいたくない。
「そういえば、父さん・・・どうしてるかな?」
「そうだな、バカンスでもしてんじゃねえか?」
とたわいもない事を話しつつ、進む。
最後は
王国ガイストへーー