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便利屋の異世界出張!!  作者: 未来
五部 凍の山
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三十四話 凍の鳥


 寝床にしていた横穴。イースが奥の扉を開けると上に続く道があった。


 「じゃ、行こう」


 ライトを持たせたイースを先頭にして後ろから続く。道はどうやら入り組んでいて下手に進むと、魔獣の住みかに行ってしまうらしいので彼女の言う通りに進む。


 「それにしても、なんでこんな道知ってんだ? あの雪女?」


 不機嫌そうに頬を膨らませ私に聞いて来るが、私だって知らない。もしかしたら村の子で迷子になっただけかもしれない。


 「そうとは言えないよね・・・」


 夢で見た光景が頭から離れない。今目の前を歩く子と、夢で見た子と明るさが違う。けど、顔も声も同じだし一体・・・


 「誰が雪女よ・・・猫もどき」

 

 ライトを私に向け、不機嫌顔を向ける。言ったのは私ではないので端末を前に差し出す。


 「もどき!? もどきってなんだよ!! 」

 「見たまんまよ、全然。猫に見えない」

 

 また喧嘩を始める二人。これで何度目になるの? 寝床でも何度もそれについて言い争って、毎回止める身にもなってよ・・・


 「こらっ、いい加減に・・・っ!?」


 グワ!!!!!! 


 突然叫び声が聞こえ、イースの前に回って銃を構える。


 「大丈夫・・・これは風の音よ」

 「か、風?」


 再びさっきと同じ音が聞こえ、すぐに止まる。イースは慣れている見たいで特に反応せず先に進んで行く。


 「外から入ってくる風が、たまに変な音を出すの。長く入れば慣れるわよ」

 

 長くね・・・? 彼女にどれくらい住んでいるのか、この時私は言わなかった。端末とつながる眼鏡のレンズ。私の反応が写っているのに、何故か彼女の生体反応が映らない。


 暫らくして、魔獣と遭遇する事なく。私達は一つの出口に辿りついて外に出た。

                    

 「うわっ!!」


 外は猛吹雪だった。一面が真っ白の景色で雪が激しく振る。風も強くて歩けない!! しかも息が苦しい!! 急いで酸素マスクを出し口に当てた。

 これじゃ、進めないよ!! と叫ぶとイースは目を閉じ雪の中を進んで鈴を鳴らす。


 リン


 何度、何度も鈴を鳴らす。清らかな音が辺りに響く。そして音がどんどん多くなる事に雪の勢いが弱まって行く。


 「これは・・・?」


 いつしか雪は小ぶりになり、ついさっきまでのブリザードが嘘のように静まった。

 

 「これで探せる、行こう」


 説明もせず、勝手に歩いて行く。慌てて後を追って声をかけた。


 「ねぇ、今のって!? それに、あなた苦しくないの?」

 「話しは後、一時的にしか止めきれないから急ごう」

 「で、でも!! どこを探したら・・・」


 足を止めずにどんどん進む。滑りやすい雪道を歩き、凍りついた林を抜けた先


 「あそこに、あるはず」


 目の前には、巨大な雪の壁ーーーいや、かまくらと言うべきか、雪で覆われた建物が存在した。

 

 「ちょい待ち、おまえ。あれが何か知ってる見たいだな?」

 「・・・ついて来てくれたら話す」


 それだけ言い、慎重に歩いて行く。なんでここまで必死なのかは気になるけど、一人にするわけには行かないから、ついて行く。


 「・・・ここは山の頂上にある神殿、麓の村では昔、ここにいる神に祈りを捧げる儀式があった」


 やがて雪道を歩き、扉もない神殿に進む。中は洞窟のように岩石とかではなく、人工で造られた光が鉄を照らす。これまで行って来たオーブのあった場所のように機械的だ。


 「巫女が祈りを捧げ、清らかな音を鳴らす。毎年行ってきた事で村は作物を採れ自然豊かだった・・・ある時。儀式が行われなかった事で、山も村も雪と凍に包まれ、今も春がこなくなってしまった」


 一本の道を進んで行く、窓もなく鉄の道は凍って歩く度に割る音が響く。そして、奥に辿りつくと広大な部屋についた。そして奥には巨大な凍で包まれた何かと、その傍に小さな凍が立っていた。


 「!!っ」


 突然、イースが走り出す。傍に立っている凍に近づき目を大きく開いて


 「おね、いちゃん・・・」


 そう呟いた。間近で見て私もこれが何か理解する事ができた、これはーー


 「人が、凍っているだと・・・?」


 凍に覆われた女性は、目の前にある巨大な氷塊を見つめ、両手で何かを握りしめている。女性が見つめている先を見てみるとーー


 「!? 魔獣!!」


 全身が青く、目を閉じた鳥の魔獣がいた。思わず叫んでしまったけど、何も反応しない。端末からは特に反応はないが情報が入ってくる


 グラスバード


 サイズ 大

 ランク S


 その場に存在するだけでも周囲を凍の世界へ変える鳥。古代人が作り出した兵器の一種で厳重管理のため、ある方法で制御を行い眠りについている。


 「兵器? 制御?」


 今までとは違う文章が出てきて驚いたけど、とにかくオーブはどこ? 


 「ちょっとまて、探査するぞ・・・反応は目の前だから・・・」


 端末の画面を見つつ、私も目の前・・・眠る鳥の魔獣を見た。奴の後ろは凍しかない、だとすると・・・


 「あの鳥を封印している凍の中みたいだな?」

 「嘘でしょ?」


 じゃ、オーブ取るためにはあれの封印破壊して、バトレって事!? 誰がやるもんか!!


 「まぁ、封印解く方法さえ知らないし。別に戦うって決まったわけじゃ・・・」


 バリン!!


 「あ・・・」

 

 後ろを見ればイースが凍の女性が持っていた、氷塊を床に落として割れ何かが出て来る。

 氷塊から出てのは・・・イースが持っていた巫女鈴と同じ物だった。


 「これで・・・やっと・・・」


 手を震わせて、鈴に手を伸ばすイース。だが、手は鈴を掴む事が出来ずすり抜ける。


 「え? え、え!!」


 何度も触れる、両手でどう救ってもすり抜ける。さらに、口に加えようとしても結果は同じだった。


 「ど、どうして・・・」


 絶望して鈴を睨み付け、今度は服からもう片方の鈴を出し鳴らし始めた。


 リン リン リン 


 持っていた鈴を鳴らしたら、何故か床に落ちた鈴も鳴り始め演奏し続ける。


 「!! 相棒!! 今すぐ、そいつを止めろ!! その鈴が、奴の!!」


 話しが途切れる。突然神殿が揺れ始めて変化が起こる。ピキ!! 大きなひび割れ音が聞こえ、巨大鳥を包んだ凍にひびが入る。


 「まさか!!」


 急いで床に落ちた鈴を拾うと、両方とも演奏が止まる。そして、氷塊のひびが広がりーー


 ガシャン!!


 巨大な翼を広げ、古代の兵器が目覚め始めたーー 

 


 



 


 


 



 

 


 

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