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便利屋の異世界出張!!  作者: 未来
五部 凍の山
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三十三話 夢の姉妹

 

 「ふ~ん? あちこち旅をしてたんだ?」


 クッションを出し電光の前で二人で寝そべる。保温するシートを羽織り飲み物や食べ物を敷いて雪山だと言うのに快適に過ごす。

 内容は、これまで私が行ってきた。この世界で旅をした事だ。流石に異世界から来たことは伏せて(後王国に捕まった事等も)次第に彼女の表情も柔らかくなる。


 「外の世界っておもしろそうね・・・私、この山から降りた事ないからわかんない・・・」

 「え? ここにって? どのくらい住んでるの?」 

 「わかんない、気がついたらここにいたもん・・・」


 そこから口を閉ざし、何も話さない。本当に何も分から無い様子だったから追求をするのをやめる。


 「記憶喪失か? なら、一撃頭にどうだ?」

 

 二人の間に置いた端末からパルトがバッドを持ちスイングする。イースは冷ややかな目で、コップを傾けようとし、必死な声を出す。


 「わりぃ!! 冗談だって!! 」

 

 女の子にそんな冗談するなんて、こいつはなんてデリカシーがないのかな? 相棒している私が恥ずかしいよ、全く。


 「やっぱり、可愛くないねこれ?」

 「やっぱりそう思うよね・・・ねぇ、普通の猫に姿変えれば?」


 私達の注文を聞かず、野郎は画面を切り無視した。もしかしたら気にしていたのかな? まぁ、いいや。

 一度あくびをして隣りを見ると、イースも眠たそうにしていたため明かりを消して、布団潜る。

 昼間に登った疲れもあってすぐに眠る事ができた。


                  ○


 「・・・・・ここどこ?」


 恐らくまた夢だと思うけど、なんだかいつもと違う。立っているのはどこか見覚えがある山と村で草木が綺麗に生えている。


 「今度の儀式は私も行く!!」


 女の子の声がし、目の前の家から飛び出してきた。さらに追いかけるように女の子と同じ青く長い髪をした女性が出て来る。


 「こら!! イース!! もう・・・」


 呆れたように肩を落とし、泣きそうになるイースと呼んだ子に近づき頭を撫で同じ視線になるように座る。


 「村の儀式はね、あの山の頂上までいかないといけないのよ? それに、貴方はまだ小さいからダメ、大人になってからね?」


 微笑んでたしねめる女性。今度は頬を膨らめせ涙目になり抱きつく。


 「もう、あれを聞かせてあげるから許してね?」


 二人が家に入り、私も入る。さっきから思ったけど、どうやら私の存在は気づいてない見たい、この二人。


 「じゃ、いくわよ?」


 女性が両手に巫女鈴を持ち、鳴らす。


 リン


 無駄な音がない、凛とした綺麗な鈴音がなり続く。時には片方だけ使い、両方でリズムよく音を鳴らし、いつの間にか集中して耳を傾けていた。


 「おねいちゃん・・・」


 はっきりとその呟きが聞こえ、どんどん二人から距離が遠くなり。やがて消えた。


                ○

  

 「・・・今度は何なのよ?」


 目が覚めて、隣りに今だ寝ているイースを見る。話している時は無表情だったけど寝顔は可愛く、やはり夢で見た小さな子にどこか似ていた。


 「これって・・・」


 イースが手にしっかりと持つ鈴を見つける。これも夢で見たのと同じ形をしていたけど、片方しかない。確か儀式で使うとか言ってたけど・・・


 「まぁ、起きてから聞くとして・・・」


 今だ目を閉じる彼女を起こさないように、布団から出て端末を起動する。こっちに背を向けていじけているパルトが私を睨む。


 「おはよう」

 「・・・」


 無視か!! そんなに気にしてるなら変えろよ!! もう、誰がコイツつくったのよ!!


 「なぁ、おまえ忘れてねえか? 俺のこの姿を作ったのおまえなんだが?」


 え? うそ!! 私がそんなブサイクなのを・・・あ


 「そう、でした・・・け?」

 「・・・忘れやすいおまえさんの為に、俺からプレゼントだ・・・貯めておいた菓子返却しておいた」


 あぁ!? ぶち!!

 

 その後、イースが起きるまで私は生意気なAIと言い争いになり「うるさい」と鶴の一声(威圧含めて)で止められ、気まずい状況になった事だけ伝えておこう。


                   

                   ○


 「「 眠りの邪魔をしてしまい、すみでした!!   」」


 二人で謝り、イースのご機嫌をとる。一向に無表情な彼女はまるで凍みたいだ。


 「・・・許して欲しい?」

 「はい」

 「嘘、許さない」


 ぐぅ!! 昨日まで寝る前まで仲よくなってたのに!! これじゃ、何も聞き出せないじゃない!! 


 「けど・・・私の手伝いをしてくれるなら許して上げる」


 そう言うと、巫女鈴を出し見せてくる。それがどうしたのか聞くと


 「これの・・・もう一つを探して欲しい・・・ここから山頂に行く方法を教えて上げるから」


 真剣な目で、鈴と私を見つめる彼女の目には、確かな決心の火が灯っていた。


 

 

 

 


   


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