三十一話 雷の魔獣
嵐の中。燃え盛る帝国は地獄そのものだった。
人が血を流し倒れ、叫び。魔獣から逃れるため瓦礫や建物の中に身を震えさえ隠れる。
地上にはもう、武器を持ち戦う者はいない。魔法具を持って戦っていた兵もいない。
誰ももはや、天空を支配する獣を倒す事など出来ない と絶望をかかえた時だった。
バン!!
突然、何かの爆発が聞こえる。天空の魔獣から煙が上がりひるんでおり、どこからか光の翼を生やした何かが近づいていたーー
▲
「ひどい・・・」
遠距離から炎の矢を撃ち帝国に近づくと、下は砦よりも無残な事になっていた。端末を出し、こっちを睨む魔獣を確認した
ブリッツタイガー
サイズ 大
ランク S
砦に封印されていた魔獣。天空を支配し、巨大な翼は嵐をも呼び災いを起こす。
角からエネルギーを出し、雷を操る。
今度の魔獣は天気まで支配できるのか なれない飛行に集中していると、叫び声を出し、タイガーが牙を出しこっちに飛んで来た。
く!! 右に飛んで躱しバランスを整える。突進して私に背を向けた奴に炎の弓を放ち突き刺さる。が、直ぐに炎が消え落ちる。
「余り効いてない見たいだな?」
「けど、近づくのは・・・・!!」
タイガーが私の方を向いて額の角を光らす。雲が怪しく輝き轟音が鳴る、さっき見た情報の中を思い出し、急いで緑の盾を出した時
ピカッ!!
眩しい光がなり、私に稲妻が迫るが盾から出る緑の光が体を包んだ。
「あ、危ない!!」
雷が収まり緑の光が消える。盾を構え、大きく翼を動かす奴がまだ角を光らせる
奴を見た。
同じ空の上だとしても、状況は奴の方が有利。銃器を乱発しても回避されれば意味はない。赤いオーブからできた弓でも致命傷は与え切れない。ならーー
「これが、頼みの綱か・・・」
弓矢を端末に入れ、代わりに黒の剣を取り出す。この剣なら例え相手がオリハルコンだろうが切れる。
黄色の翼を動かし、接近し剣を振る。黒い衝撃が生まれ奴に迫るが、間一髪でよけられ右の角と羽を少し切った。
ウガァァ!!
赤い血を流し、激怒したのか角を光らせ雷が雨のように降り注いで来た!! 盾を出して防御したけど数が多すぎる!!
「っ!! お、落ちる!!」
何重の雷を防ぎ、眩しくなり目を閉じると体に衝撃が来て気づいたら落ちていた。クソ!! 私の視線の先には腕を振り落とした体勢を睨みつけてくる魔獣。そのまま体勢を整える暇もなく、建物に激突して意識がなくなった。
○
再び回想の中
「天使だって翼が折れる時があるんだ」
夕立で傘をさして街を二人で歩いていると、突然父さんがそんな事を言い出す。
「天使だって完全じゃない、まして人間なんか天気に左右されて生きているんだ。雨がなければ畑が育たない、太陽の日があって人は生きてられるんだ」
話しながら、雨が降っているのに傘を閉じる。慌てて幼い私が傘を差し出すが受け取らない。
「太陽無しじゃ生きられない俺たちだがな、それでも太陽はこの雲の上にある」
次第に雨が弱くなって、雲が消えて行く。傘を下ろして顔を上げると父さんが頭をなでる。
「アン、もしおまえが天使のように飛べるようになって、落ちても諦めな・・・雲の上には必ず太陽はあるんだから」
徐々に夕陽が出て、日に垂らされる二人。光が強くなって目を開けると太陽はなく怪しい雲が見えた。
「ぐっ!!」
体中が痛く起き上がれない。ポケットから端末を出し壊れてないか見る。
「無事か!?」
「なんと、かね?」
パルトに痛み止めをもらい、倒れたまま空を見る。どこかの建物らしく私が落ちてきたせいで、あちこちに木材が落ちていた。
「あの雲厄介だぞ? あれがある限り、空だろうが地上だろうが奴の領土だ。ここっちの攻撃は剣が頼り・・・」
「空・・・」
頭の中を必死に探り、さっき見た夢を思い出す。
あの雲の上には太陽が必ずある
雲の上・・・!!
「行ける!!」
黄色のオーブを出し、翼が私の背中に生える。マナを集中させ動かして空を飛ぶ。
「おい!! 下手に動いたらまた・・・」
「大丈夫!! 」
思いつきだけどこれしかない!! 上に上がっていると奴が気づいて追って来る。
そのままどんどん雲の方に上へ、上へと飛び続ける。時々くる雷を盾の力で防ぎ進むと・・・青空が見えた。
「よし!! ここなら!!」
雲を突き抜ける下を見ると、やつも追いついて来る。剣を出し構え、爪の攻撃
を躱し、振る。
スパン
刃先が片方の足を切り落とし、落ちる。さらに血を流し叫ぶタイガーは角を光らせるが雷は来ない。
「そうか!! ここなら、あいつも雲を操れない!!」
「そうゆうこと!! さぁ、反撃だ!!」
そこから剣の攻撃を始まった。爪や牙を切り、額の角二本も切り落とした。怒り狂ったのか、大きく息を飲み込む動作をするが
「それはもう、知ってるって!!」
ブレス攻撃の動作になり無防備になった胴体を横に真っ二つに切る。だが奴は私の方に顔を動かし、口を開こうとしてーー
「いい加減にしろ!!」
顔面を縦一文字に切る。口に溜まっていた黄色のブレスが爆発し奴は落ちて行く。
「・・・はぁ、はぁ・・・」
剣と盾をしまい息を整える。急激マナを使ったせいで体に疲労がたまって息苦しい。
「見ろ!! 雲が!!」
下を見ると、雷雲がみるみるうちに消えて行く。どうやら奴が死んだ事で維持できなくなった見たいだ、このまま消えなかったらどうしようかと思ったけど、心配ないようだった。
「終わったんだ・・・」
「あぁ、おまえさんの勝ちだな。見ろ太陽が」
顔を上げると日が地上を明るくする。既に夕陽なっていて、間近で見ると綺麗だった。まるで勝利を祝福されている見たいで暫らく見つめていた。
▲
「ーー以上で、帝国はほとんど壊滅状態。皇帝も魔獣にやられ戦争を続ける力はないよです」
ガイスト王国の城内。
大臣等、国の重役が集められた会部屋に緊張が走る。戦争状態である相手国が突然大型の魔獣にやられた事により、誰もが混乱しつつ報告を受けている。
「それで、その魔獣なのですが・・・何故か死亡しており、現在調査中です」
「なんだと!! それはどうゆう事だ!!」
ひとりの大臣が大声を上げる。魔獣がこの国にくる驚異が無くなった事に対する安心があるが、なぜ死んだのか? と報告する者に問いただす。
報告の続きでは魔獣は全身がバラバラになり、街中に落ちて来たと。そして、魔獣の傍で黄色の翼を生えた何かがいた事を伝えられた。
「まさか・・・天使だというのか?」
魔獣の話しから、今度は翼を生やした何かの話しなり騒ぎ出すが、ひとりだけ違っていた。
奥の椅子で默して目を閉じる、銀髪の女性。
ガイスト王国 王女 ティア・シエル・ガイスト だ
「静めれ」
凛とした声が部屋に行き届き、喧騒が消える。大臣達から緊張の汗が流れ、その様子だけでも彼女がどれだけ力を持っているのか察しがつく。
「その天使とやらはいずれ調査するとして、まずは帝国へ遣いを出し話しを調節しろ、やつらが降伏をすれば受け入れ、それから国民に知らせろ・・・戦争は終わったと」
そこからは、方針の話しになり数時間後に皆が退出する。ティアはひとり、城の奥にある宝物庫まで歩く。
「ネロはいるか」
「は、ここに」
すぐ後ろからネロが現れ頭を下げついて行く、扉を兵士が開けて明かりがつく。
「例の女はどうだ?」
「は、火山島と国境の砦で目撃がありましたが、また行方が不明に・・・」
「よい、これではっきりしたな、奴の目的が」
宝物庫の奥、台座に置かれた光輝く物があって、掴む。すると、白い宝石は形を変えて一本の持ち手が少し飾りがある白杖となった。
「理由は不明だが、やつはこれを狙っている。なら待っていれば必ず来るその時まで準備を進めろ、いいな?」
ネロは綺麗な敬礼をし二人は宝物庫を出て、扉が閉じられた。
▲
「はっ、ハックシュン!!」
「おいおい、雨に打たれて風邪引いたか?」
夜の森の中でテントを張り、湯を沸かしていたら大きなくしゃみが出る。少し寒気もしてきたから、本当にそうかもしれない・・・あぁ寒い。
「それに、しても無茶しやがって。虎叩き落とした後次のオーブの近くまでいきやがってよ?」
「仕方ないでしょうが。あのまま帝国にいる訳にはいかないし、かと言って砦に戻る理由もないんだもん・・・は、クシュン!!」
鼻がグズグズし、ポットのお湯をコップについでコーヒを飲む。うん、淹れたてが美味しい!!
「最初はどうなるかと、思ったが・・・ なぁ、このワンピースはなんだ?」
「あぁ、それ・・・着替えなかったからもらった」
画面には赤いワンピースが写っていた。「ついに、おまえも女らしくなったか」と意味深に呟く声がしたが無視だ、私だって女だ。
顔を上げ、空を見ると。満月が見え星が沢山が輝いていた。
「星の海・・・」
そう思える程、広大で輝く空を見続け、その先の方向は調度次のオーブのある
場所だった。 目指すのはーー北