三十話 過去
採掘機で今度は来た道を上る。時間をかけて休んだので後ろで休んでいる二人。一応薬とか出したので効いているようだ。
「ねぇ・・・」
ニヤが生気が少し見えない顔を上げて声を上げる。袋は渡してあるけど、やめてね? 隣にいるサウラは既に目を閉じていた。
「あなた、何者なの・・・その髪といいさ?」
「あぁ、まあ・・・便利屋としか言い様はないかな?」
「便利屋?」
この世界にはそんなのはないのかな? まぁ、この世界には探偵とかはいなさそうだし。
便利屋とは、人から以来を受けていろんな仕事を行う と答えると何かを考えているのか、顔を一度下げて。
「だったらお願い、していいかな?」
「はい?」
顔を上げて何かを決意した目をしてーー
「ボスの・・・サウラの妹を探して欲しいんだ」
「い、妹? あ」
そういえば彼とあった時、私をみて「妹に似ている」とか言ってたけど。
「彼の妹さん、帝国の軍に村を襲われた時行方がわからなくなったのよ、それで
でさ」
「やめろ」
突然彼が起き出し、ニヤの肩を掴み睨みつけた。
「今のは忘れてくれ、ニヤ。何余計なことを・・・」
「だ、だって!! ボス・・・」
「それに、そんな事はしなくていい・・・妹は既に死んでるんだよ」
死んだ
車内で沈黙が起きる中、サウラが話しを続ける。
「妹は・・・燃えた家の中に取り残されたんだ。助けに行こうにも帝国のやつらが来ていて助けけれなかったんだ・・・そして、いまそこにいる奴が俺の村を焼いた奴だ」
なんだって!! ミラーで後ろを見て今だ意識の無いマーレを見る。まさかこんなところで敵と合うなんて・・・
「本当は、いまここで奴を殺したい!! けど・・・」
彼の目から一つの涙が出る。隣にいるニヤが拭いて寄り添うけど彼の心の傷は私達では癒せない。
「い、や・・・・そうで、ない」
かすれた声がし、最後部座席に横になっていたマーレが起きてきた。サウロは今にでも飛びかかりそうで、こんなところでは私も手が出せない。
「そうか、あのむら、の生き残りだったのか・・・」
「てめぇ」
「ここで暴れたら、降ろすわよ?」
釘を刺して、二人は黙る。いい加減運転する私の身にもなって欲しいよ、全く・・・
「さてと、起きたんなら聞かせてくれないかな? なんで彼の村を焼いたのか?」
「ふふ、まさか君に助けられるとはね・・・今の君はまるで天使のようだ
・・・」
さっさと話なさい と強めに言いうと、察して無駄口を出さなくなった。また何か変な事言ってきたら、本当に置いて行こうかな?
「・・・アレは、私が今の地位になる前の事だった。古代のエルフに関する調査をしていて我々帝国は、それらに関係するものを手当たり次第漁った」
「もしかして、魔法具を?」
ニヤが何かを答えマーレは頷く。そういえば魔法具はエルフにしか創る事ができないで結構重要物扱いって聞いたね・・・
「そして、彼の村も該当し調査した。結局それらしい物は無かった・・・だが火を放ったのは私ではない。当時、指揮官と一部の者が独断で行ったんだ・・・止めようとしたが遅く、私にできたのはその男の首を・・・」
「言うな!!」
耳を塞ぎ叫ぶサウラ。復讐する人間が死んで、今目の前にいる男が代わりに仇討ちをして混乱している。
「ボス・・・」
彼の鳴き声が車内に響き、やがて目の前が明るくなる。
ドッン!!!!
入り口の瓦礫を破壊し、火の海を進む。防弾のガラスで割る心配はなく壁を破壊して進む。
「行っけ!!」
四枚目の壁を破壊すると、空が見えるブレーキをかけ体に衝撃が来るがすぐに止まった。
「な、なんだアレは!!」
採掘機から下り、消火活動をしている人が集まって来る。慌ててウィッグを出し被って、生気がないサウラは彼らを一度見るが、すぐに後ろの席にいる帝国兵を見る。
「・・・なぁ、俺はあいつらを殺したら、ダメなのか?」
復讐が果たせなくなって不抜けて力なく呟く。そんな彼を見て私は
「ダメよ、今貴方はみんなに必要とされてる・・・そんな貴方が手を汚した姿は誰も見たくはない」
説得しかできない。復讐したい気持ちなんて、ましてや大事な人を失った悲しみはまだ私は知らないから・・・
黙って近づき、彼の頭をなでる。すると彼は私に強く抱き返した。
「・・・今だけ、甘えていいよ」
「すまない・・・本当に・・・」
ニヤが配慮して他の人達を下がらせ、けが人を仲間達に運ばせる。車内で二人になり暫らく彼と二人だけで過ごした。
○
その後、火は消火され砦は崩壊。帝国兵達は多数が負傷し彼らに戦い力は残されていなかった。
「で、私達を、どうするつもりですか?」
簡易のテント内で横になり、大分落ち着いた様子のマーレ。私とサウラ、ニヤが前に立ち、これからの事を話すため集まった。
「俺は、正直おまえも帝国も許していない」
はっきり言いい、手の拳には力が握られていた。もしも、ここで暴れるようであればコートの下にある麻酔銃で・・・
「けども、ここでおまえらを見捨てれば。俺もおんなじ人殺しになってしまう・・・罪は償ってもらうぞ」
後ろを向いてテントから出ようとする、呼び止めようとしたら
「待ってください・・・本当に私をここで殺さないのですか? あなたの村を守れなかった、私を?」
「妹の頼みに従っただけだ・・・」
それだけいい、外に出る。ニヤが彼を追いかける。
「ねぇ、聞きたいんだけど・・・どうして神殿のあった村を焼いたの? あれはあなたの指示?」
「いや、前の指揮官の部下が私の私の所にいてね、話し合いだけで済ますつもりったんだ」
「ねぇ、もしかして金髪の男? それ?」
驚いた顔をして、確信した。狙撃した際最初に足を撃ったあいつが原因だったんだ。確か村のどこかに閉じ込めていたはずだった。
「・・・まぁ、とにかく貴方がしてなくても、人を傷つけたのは変わりはないから、しっかり罪を償いなさい」
「待ってくれ・・・一つだけ頼みを聞いてくれないか?」
外に出ようとして、呼び止められる。手にはナイフを持ち、私の方に伸ばしまっすぐ私を見て
「これは返します、ですから・・・最後に、その銀の髪を見せてくれませんか?」
「・・・嫌よ」
ナイフを受け取らず、彼の頼みを無視し私はそのまま外にて行く。後ろで「冷たいな」と小声で聞こえが特に気にせずその場から立ち去る。
○
「いいのかよ? アイツもしかしたら自殺すんじゃねぇのか?」
「大丈夫、あんだけ言えるんだから死なないでしょう」
テント郡を抜け砦の後ろ側を、帝国方面を見る。何故かあっちの方だけ真っ黒な雲に覆われて、光っていた。
「今、帝国方にやばいのがいる見たいだな? オーブも回収したし、次行くか?」
「馬鹿」
冗談を抜かし相棒を罵倒し、マップを開いて距離を見ようとすると突然コールがなる。これは・・・
「久ぶりだねアン?」
「E・・・」
機械で声を変えている相手に多少イラときたが抑えて話しを聞く。
「この世界に来てオーブを三つも手に入れたとは、予想以上に早いね? さすがだ」
「どれはどうも・・・で、要件は何なの?」
いますぐにでも切りたい、がEは私の気を察する事なく話しを続けた。
「君は帝国の方に行こうとしているが、今の君では勝てる確率は低いだろう」
「何? 止めるつもり?」
「いや、別に止めるつもりはないが、わざわざ死に行くことはなかろうに?」
うっさい と一言だけいい電話を切る。そして、画面を変え今まで集めたオーブが画面に出現する。
「悪いけどね、これ以上誰も死なせる訳には行かないよ」
「そんじゃ、行くか。相棒!!」
四つのオーブが画面を飛び出し、私の前に宙に浮かぶ。そしてそれらわ形を変え
黒のオーブは剣。
緑のオーブは盾に
赤のオーブは弓へと
そして、黄色のオーブは私の背中に大きな翼が生まれ、その場を立ち去る。
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復旧や救済活動をする者が何か気づき空を見る。黄色の閃光が飛んで暗黒の空に覆われた帝国へと高速に向かっていった。
「・・・また、どこかで会おう。妹に似た旅人」
反逆者の主は閃光を見て呟き、彼の目は既に涙は無かった。