二十九話 崩壊する帝国
再び夢の中。父さんから名前をもらい、天使の像を二人で見ている。
「アン・・・私の名前?」
「そうだ、天使みたいな名前でいいだろ?」
「・・・でも、私翼ないから天使じゃないよ・・・」
自分の背中を見たり触ったりしている幼い自分。それを見て父さんは笑い始めた。
「ははは、人間は天使でも悪魔でもないから翼はない、が絶対飛べないわけじゃない」
「?」
首を動かし、頭に? を浮かべる私。そして
「人間には自分の翼を持っているんだ、生きるための、やりたい事をやってすすむ力があるんだよ。」
頭に手を置いてなでる。この頃の私にはどうゆう意味なのか理解できてないが、それも理解して話しが続く。
「アン。もしおまえが迷ったり挫折しても、諦めなければ心の翼はどこまでも飛び続ける・・・・だから、諦めるな」
○
「ん・・・」
目を開けるとロウソクで照らされた薄くらい部屋にいた。昨日助けられてここにいるのを思い出し、ベッドに腰掛け枕元に手を伸ばす。
「忘れてた・・・」
端末は砦の中に置いてきてしまったのを思い出し、気分が落ちる。これからどうやって砦の方に行こうか考える。
ズーン!!
「!?」
いきなり地震が起きて危うくベッドから落ちそうになった。な、何今の?
「大丈夫か!?」
扉を開けてサウラが来て安否を聞いてくる。一応大丈夫なのを伝えると
「外に来てほしい!!」
と迫ってきて、理由を聞く暇もなく二人で部屋を出た。地下の道を走り、入ってきた小屋を上がる。雨が止んでいて曇りの中、近くの丘まで行くとーー砦から火が上がっていた
「砦が・・・」
「おい!! 砦に何かいるぞ!?」
誰かが叫び、目をこらす。遠くでよく見えないが煙から何かが出てくる
ガァァ!!
白い体を持った、巨大な四足の獣が雄叫びを上げる。離れているはずなのにこっちにまで聞こえ、周りにいる人間が驚き尻餅をつく。あんなの、どこから来たの?
と疑問に思っていたら、虎のような魔獣が動き出した。
バサッ
背に生えた翼を動かし、私達とは反対側の方向に飛んで行った。
「あの方向は・・・帝国の・・・」
隣にいたサウロがつぶやいて、嫌な予感がする。燃え盛る砦、そして巨大魔獣。
いづいたら走って、砦まで行こうとしていた。
「待て、アン!!」
後ろから声が聞こえるが、無視して一人で進む。
「パルト!!」
▲
「マーレ!! 無事か!! っ!!」
瓦礫の下敷きになったマーレを助け声をかける、血を流すガイ。声に反応したのかマーレも額から血を流し、目を開ける。
「やぁ、ガイ・・・無事、じゃない、ですね?」
「あたりまえだ!! くそ、なんだったんだ!? あの魔獣は!!」
ガイは地震が起こる前の事を思いだす。
マーレが扉を魔法具で破壊し、中に入る。広大で何もない空間、そして奥には黄色に輝く何かがあった。部屋に入ると獣の声が聞こえ、気づけば上から何かが下りきた。
白い体を持ち、ウルフにどこか近い姿をした魔獣だった。魔獣はガイ達を見ると体を光らせ、気づけば砦が破壊され火の海だった。
「とにかく、こっから逃げるぞ!!」
「ガイ、貴方だって傷を・・・」
うるせっ!! 一喝し黙らせマーレを背負い歩く。進む度に二人の血が地面に落ちる。
「俺の任務はお前の護衛だ!! だから、こんなところで死ぬな!!」
大声を出し、歩く速度を早くして瓦礫が落ちている階段を登る。上の建物と違い地下の方が丈夫にできているようで階段は崩れない。
「後、少し・・・」
ガイがかすれた声を出し、地上への階段を上がりきるとそこは火の海だった。既に二人の体力は限界でここから先進むのに無理があった。
「ちくしょう・・・」
ガイが膝をついく。マーレが彼と火の海を見て乾いた笑い声を出しながら、銀のないかを大事に持つ。
「すみません、ね・・・持っていた魔法具が、瓦礫の下で・・・力になれなくて?」
「馬鹿言うな!! ま、だ・・・あきら、めんな・・・」
意識が遠くなる。煙で息苦しくなり二人は幻覚を見始める。赤い服をきた誰かが火を消しながら近づく。そして、銀の髪を揺らし自分達の前まできた。
「天使で、すか・・・」
マーレが呟き地面に倒れた。ガイが気絶し支えきれなくなったからだった。
「・・・誰が天使よ?」
▲
「誰が天使よ?」
外にあった防火の水を全身に浴びてずぶ濡れになって走っていたら、階段の前で
倒れた二人の男・・・村を襲った男達を見る。
マーレの方から、最後に天使なんて言われたけど、コイツには言われるなんて。頭から血を流したマーレを見ると、手に何かを持っていて・・・
「なんで端末持ってんのよ?」
私の端末を何故か持っていた。なんで? と思ったけど、今は考えてる暇はない。
「よう、一日ぶりだな? 元気だったか?」
「そんな事より、こいつら!! 早く!!」
ここも時期に崩れる!! 二人をどうにかしないといけないけど、もうひとりが大きすぎて運べきれない。
「アン!!」
「大丈夫!?」
後ろから声がし、サウラとニヤが全身を濡らして近づいてくる。
「!! 帝国の士官!!」
倒れている二人に気づき、警戒するサウロとニヤ。
「待って!! 今はここから出ないと!!」
と、また地響きが起きて上から瓦礫がーー
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紅い旗を飾る城が崩れ去る。いくつもの雷が城や街を遅い人々が逃げ惑う。
ガァァァ!!
白き雷獣が空を駆け吠える。額の二本の白い角が光り空が怪しく輝く。
地上の方から矢が飛び、高い建物からは魔法具らしい物を装備した兵が炎や水を飛ばすが届かない。
かつて最大の軍力を持ち、戦争を起こしていた国に繁栄した姿はもう存在しなかった。
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「・・・助かった・・・」
階段に座りこみ、後ろを見る。瓦礫でさっきまでいた入り口はふさがり。幸いにも火や煙は来ていない。
「二人とも、ありがとう・・・」
前にいる二人にお礼を言うが、サウラもニヤも納得出来ない顔をし包帯が巻かれたん帝国士官を睨む。
「なんで、こんなやつら助けたの?」
恨みごとを吐くように呟く彼女になんて声をかければいいのか分から無い。異世界から来た私が関わっていいものじゃない。
けど・・・
「ここで二人が復讐をしたら、同じになる。だからダメ」
瓦礫にうもれた下へと続く道を見るて端末を出す。このまま上に戻ることも可能だけどマップを見たら下に大きな部屋があって、そこに黄色い玉のマークがある。
後ろにいる四人をそのままにする訳にはいかないため、端末を操作し
車体の前に、巨大な丸形のカッターが二つ装備したされた採掘機を出す。
○
ドォン!!
階段を下りながら、瓦礫を破壊して降りていく。かなり揺れて始めて乗るサウラとニヤは必死で手すりに捕まる。
「お、おい!! これ大丈夫なのか?」
「き、きゅあ!!」
大分揺れて騒ぎ出し(気絶した二人を除いては)運転に集中できない。
「落ち着いてよ!! もう、これじゃ・・・」
と声を出した時、光が見えてくる。さらに速度を上げて瓦礫を砕き進むと広いところにつき、さらに扉を進むと広大な広場に辿りついた。
「あれは・・・」
奥に黄色に光る何かを見て急いで降りる。台座の上にり黄色の光を出すオーブ。私が近づくと後ろから声がし、車から出たニヤの髪が光っていて、気づけば私の髪も光る。
そしてオーブがゆっくりと近づき。差し出した私の手に収まる。
「これで四つ目だね・・・」
オーブを端末に入れ、採掘機に戻るが二人は離れたところでぐったりしている。仕方なく酔い止め(既に遅いけど)と水を渡し、後ろに横にしている包帯の二人を治療等し、暫らくしてから上に戻るのだった。