二十五話 生まれる命
グガァァ・・・
私の前に降り立って、見下ろしてくるドラゴン。圧倒的な存在を前に銃と刀を持つ手が震えた。
目が合ってしまう。
巨大生物は住みかを荒らした私からーー視線をそらし後ろの卵を見た。
「おい、まさかあの卵は・・・」
端末を出し写す。画面が変化し卵とドラゴンが表示された。結果はーー
「どうやら、マジであのドラゴン子共みたいだな」
そこまで分かるのか と関心していると。ドラゴンが卵を大事そうに舌で舐めている。すると、ドラゴンと卵が光始める。
「何をしてるの・・・?」
私の疑問に答える人はいないが、代わりに手に持つ端末の中にいる相棒が答えてくれた。
「どうやら、卵にマナを送り混んでる見たいだな。生体反応が強くなってやがるが・・・まだ孵化するまでマナが足りないだな」
卵から離れ、今度は倒れた商人達の方にゆっくり近づく。まさか、マナを!?
「待って!!」
倒れた彼らの前に立ち両手を広げる。マナは生命エネルギーと話しを聞いていたから、何をしようとしていたのか予想はついた。
「ここを荒らしたのは本当にごめんなさい!! この人達は確かに悪い事はしたけど、命まではとったらいけない!! だから・・・私のマナをあげる!!」
「な!! 何言ってんだ!! おめぇ、死ぬぞ!!」
商人達に手を伸ばすのを止めて、手が私の方に行き捕まる。抵抗せずそのまま卵の方に近づけられた。
「やめろ!! コイツを孵化させんのにマナは全然たんねぇんだぞ!? そんな事したら、おまえの命が・・・」
「ゴメン、相棒・・・」
端末を強制に切る。念入りに電源が落ちるように念じ、機能しなくなる。
やがて、手が届く距離になりゆっくり、優しく卵に触れて体から光が出て卵に流れ始めた。
▲
「リーダー!! なんでいっちゃダメなんだよ!?」
暴れるレンを村人が止め、リーダーがレンの顔を見て話す。
「レン、山はもうじき噴火を起こす。そうなる前にここを出るんだ」
「けど、あいつが!! それに海には魔獣が!!」
レンが言いかけると、大きな鐘の音がなる。見張りの高台から
「船だ!! 船が来たぞ!!」
と声がした。
「う、嘘だろ!!」
「魔獣はどうなったんだよ!?」
「た、助かるのか?」
突然の希望に村人が喜びを表して急いで浜辺まで走る。
「これで・・・皆が助かる・・・」
「くっ!! ・・・新入り」
レンは悔しそうにし、手に持つ笛が目に入り口に近づけた。
▲
真っ赤な光を出し、鼓動の音を出し始める卵。私のマナを大分吸った事で今にも孵化しそうだった。
「はぁ・・・はあ・・・けど。まずいかな?」
体中から力が抜ける。息が苦しい、体から感覚がなくなっていく、目の前が霞んできた。
「まだ、もう少し」
念じて体中にある水を卵に流すイメージをし、さらに私から出る光が強くなる。すると、卵に異変が起こる。
パキッ
表面に一つのひびが入る。それからあちこちでパキパキと音が鳴りーー
バキン!!
卵の表面が完全に割れて、赤い何かが出て来るが。私はそこで意識が無くなった。
○
「お? どうした? 新しい遊びか?」
ベッドの上に、白い塊があった。シーツに包まって必死に外を遮断する銀の髪が少し見える。
呆れた顔をして父さんはシーツの端を掴んで引っ張た。
「出てこい!!」
大人の力ですぐさま、目を赤くし涙を流した私が床に叩きつけられた。
「まぁ、殺されかけたらそうなるが・・・」
父さんは私の頭をなでて、抱きしめてくれた。少し落ち着いたのか涙は引いている。
「その~なんだ・・・やっぱり俺といるのは嫌だ?」
その答えに必死に首を横にして答え、父さんを抱きしめる。ため息を吐いて、何か覚悟をして話しをする。
「なぁ・・・俺といたらまた同じような事になるぞ? 今回は何とか・・・まぁおまえの力でどうにかなったけど、次はないぞ? ・・・それでも、俺の娘に、なってくれるのか?」
最後は力なくつぶやいて、耳元だったのではっきりと聞こえ頷いて
「だった、ら。ずよく。なう……」
必死に声を上げ、何かを言う。聞き取りにくかったけど
「だったら、強くなる」
そう言った。
「ははは!! そいかい。そんじゃおまえ・・・いや。いつまでもおまえじゃ嫌だよな? だったら」
部屋を見渡し、やがて翼を生やした天使を見つけて
「アン」
そうつぶやいた。
▲
「う!!」
起き上がろうとしたけど体動かない・・・指一つさえまともに動かせず、目もはっきりしてこない。
また昔の夢がでてきたけど、今ほそれどころじゃ無い。
「た、まご・・・」
顔を上げてまだ視界が安定してないけど、アレがどうなったのか目を開けようとしたときだった。
ペロ
何か生暖かいものげ顔に当たる。同時に何か液体もついて気持ちが悪い。腕だけ動かしてそれに触れる。
キュ
そんな声が、まるで生き物のような・・・
どんどん目が覚めて来て、顔を横に動かすと。二つの翼、赤い皮膚そして鋭い牙と舌が間近にある。
「て、うお!!」
慌てて体を動かすが立てない。そして、私が見たのは小さな
キュイ!!
ちびドラゴンだった。何故か機嫌がよくて飛びつく。硬い皮膚が痛い!!
「ちょ!! パルト!! 」
相棒を呼ぶが返事がない。そうだ、電源消したんだった・・・と辺りを見ていたらちびが何かを加え私に差し出す。端末だった。
「あ、ありがとう・・・」
唾液で濡れた端末の電源を念じて起動させ、すぐにパルトが姿を出す。
「ばかやろう!! 生きてるか!?」
「まあ、何とかね?」
体に力が入らない事を言いと、マナがなくなってんだよ!! と大声で言われ何かがでた。栄養ドリンクと体力ぞ増強薬だった。
「マナをどうにかする奴はないが、気休めに飲んどけ」
「はぁ~い」
瓶を開けてドリンクと薬を飲む。するとちびは私の方を向いてドリンクに目を写す。もしかして飲みたいの? お腹壊さないかな? と思いつつ口に近づけ飲ませた。
ピギャ!!
うん、どうやら美味しいようだった。他のドリンクを開けて飲めせる。栄養剤を好むドラゴンなんて聞いた事ないけど、まぁ可愛いからいいか。
「餌付けしてどうする、その前に俺に言う事あるよな?」
うん無視。何か幻聴が聞こえるけど、無視だ。そういえば親はどこに行ったのかな?
「親ドラゴンならどこかに行きやがったぞ・・・反応を見たが地下の方に行って・・・今戻って来ている」
「え?」
聞き返そうとしたが、突風が起こり何かが降りてくる。ちびが声を上げてそっちの方に走って行く。
「あ、まず・・・」
今私は動けない。もしかしたら用済みで食われると思っていたら、口に何かをくわえて近づく。
赤く光る玉
「「赤のオーブ!! 」」
それを私の体の上に置くと、離れる。慎重にオーブを持ち天にかざした。
「ははは、これで・・・二つ目」
「いや、黒のを合わせて三つだ」
そういえば忘れてた。けど残りは 黄 青 白 でまだある。
「卵を返したお礼かな? ありがと」
礼をいい、手を振ると首を振る。どうやら言葉、分かる見たい。
「じゃ、ここからでよ 「バァン!!」 !?」
爆発が聞こえて体を起こす。そして気づいたら商人の男だけが姿がなかった。
○
「うはははは!! 何もかも、壊してやる!!」
男が溶岩に何かを投げ爆発が起こる。見れば、黒の石が下に落ちていった。
「やめろ!!」
フラフラになる体を壁につけながら、銃を向ける。確かに麻酔を撃ったはずなのに、どうして!?
「んあぁ!! てめ!! 」
男が私に気づいて、落ちていた石を持って襲ってくる。麻酔弾を撃とうとしたら石を投げられ手から落ちる。
「死ねぇ!!」
ナイフを取り出す男。武器を出す暇も立ちあがる力もないまま刃が迫り
「ピギャ!!」
そんな鳴き声がし、後ろから炎が飛んできて、男を焼いた。
「あああああ!!」
火が体に周り、消そうと転がり回る。後ろを見ようとしたら頭が重くなる。
「ピッ」
手をやるとゴツゴツしたのが当たる。下ろそうとしたら抵抗され頭を振ると降りてきた。
ウィッグをくわえて。
「ぴ? ぴ~?」
なんで私の髪が変わったのか分からず首をかしげる。あぁ、可愛い・・・今までペットを飼った事なかったから分からなかったけど、とんでもなく可愛い!!
「おい? お取り込み中悪いが・・・この山、噴火するぞ」
▲
「おい、急げ!!」
村人が船に乗り込む。慌てて逃げる人を騎士達が誘導していた。
「ファイ隊長!! どうやら山にもまだ人がいるようです!!」
「なんだと?」
クラーケンを撃退し、アンのおかげで助かったファイが眉をひそめる。手には弓を持ち今にも走りだそうな雰囲気を出す。
「ファイ」
青髪の男性がファイに声をかける。その傍にはテールも控えていた。
「今はドラゴンよりも人命救助だ・・・忘れるな」
「・・・はい」
二人が話ていると、再び火山が爆発して山から大きな影が飛ぶ。
「ど、ドラゴンだ!!」
兵士が叫び、全員がドラゴンの姿を見て騒ぎ出しパニックになる。村人が船に急いで乗ろうとし、混乱の中レンは走った
▲
「ありがと、みんなを助けてくれて」
ドラゴンの背から商人達の仲間が地面に落ちた。その中で包帯だらけの商人がいるが処置と麻酔をし、今度こそ黙らせる。どうしてコイツだけがすぐに目が覚めたのか疑問だけど・・・
「本当に・・・打つ手もないの?」
「無理だ、こいつらが刺激したせいで。もう止まらねぇよ・・・」
地震が起こり、山から地響きが起こる。ここにいたら私達までも危険だ。
「お~い!!」
とどこからか声がし、レンが近づいてくる。ドラゴンを見て立ち止まり。私も見て指を指す。
「うそ・・・銀の髪」
そうだった、赤のウィッグはちびにダメされたの忘れてた・・・
「まぁ、大丈夫だよ。このドラゴン人襲わないから・・・」
そう言うと恐る恐る近づく。普段は悪ガキみたいに振舞ってるけど、こうゆう姿をみるとちゃんとした女の子だって思い出したのは内緒だ。
「つか、あんた話しに聞いたエルフか?」
「いや。多分違うと思うけど・・・ひとまずここから離れよう?」
倒れている彼らをどうするか考える。体力は少しは回復したけど人を運ぶ余裕なんてない。こうなったら村の人を呼ぼうとレンにいうが。どうやら避難していてしかも騎士達が船を出しているようだった。
「まっずい・・・」
銀の髪を見られたたら一発で私だとばれる。できれば会いたくない、特に赤い髪の人と銀の人には。
「!? あんた、髪が光ってる!!」
え? 最初のオーブの時と同じようにまた光出したようだけど、今回は違った。レンの持つ笛が赤く光だし、変化していく。
木だった笛が光りから出て、目の前にいるドラゴンのように赤く鉄の笛に変わる。
「な、何これ・・っ!!」
今度はレンが頭が痛そうにかかえるが、すぐに頭を上げ呟く。
「大丈夫・・・アタシが何とかする!!」
変化した笛を構え、煙を出す火山に向い吹いた。
▲
人々がパニックを起こす中。一つの音が流れる。
力強く、それでも荒くもない音色
「これは? レンの・・・」
リーダーがいつも聞きなれた音を当てる。誰もが音に夢中にあり変化はそれだではない。
いつの間にか、地震が止まる。そして火山も鎮静して行く。
「この音は、一体・・・」
噴火しそうになった島を見つめ、ネロはただ笛の音を聞くしかなかった。
▲
「火山が・・・止まった?」
「・・・ふぅ」
レンは汗を流し、その場に倒れそうになり抱える。見ればレンの顔が満面の笑を浮かべている。
「どうだ新入り? これがアタシの力だ」
「・・・うん、すごいよ・・・」
関心しながら、活動をやめた火山を見て一息ついた。
▲
「で、ドラゴンはどこにったんだ?」
船の中でリーダーの威圧を受けながらレンは正座する。避難中に勝手にどこかに行った事で説教(夜中途中で抜け出して火山に行ったのも含めてだ)を受けていた。
「その、どこかに飛んでいきました・・・」
下を向いてありのままを伝えると頭をなでられた。
「たくっ、まぁ無事だったんだからいいか・・・」
説教が終わって、アタシはリーダーの膝に乗り顔を上げる。
「ところで、アンはどうしたんだ?」
「あぁ、あの新入りは・・・」
○
「え? 一緒にいかないのかよ?」
アタシがそう言いと、困ったような顔を浮かべる銀髪の新入り。詳しくは話てくれなかったけど、騎士と会いたくないって言ってた。
「まぁ、そういう訳だから・・・それと」
変な板を取り出して何かする。
「はい、これ何も食べてないでしょ?」
渡されたの変な銀だった。新入りは銀を破って中から黒い何かを渡して来る。
ど、どくじゃないよな?
「美味しいよこれ?」
新入りが一部食べて、私も口にする。あ、甘い!!
気がついたら、渡された一枚の板を食べていた。今までこんなの食べた事ない・・・
「まだ、あるから食べていいよ。もうこれで盗みはやめなさい」
「盗み?」
なんの事か聞くけど答えてくれない。私に背を向けて何か「記憶が」とか言ってるけど、食べるほうに集中する。うん、美味しい!!
「まぁ、その・・・短い間だったけど、ありがとうレン」
顔を上げると夕陽が銀の髪に当たって、輝く新入り。とても綺麗に思えて体が熱くなる。
「べ、別にアタシは・・・」
「それとさ、これは私の勝手だけど。リーダーとは例え血がつながってなくても。・・・家族だって思う心があれば、ちゃんとした家族になれるんだよ」
え? それがどういう意味か聞こうとしたけど。新入りはドラゴンに乗り飛んでいった。
後に残ったのは、今手にしている板が何個か置いてあるだけだった。
○
「おい、どうした?」
突然黙った私を見て、顔を覗き込む。息が荒くなる、もしこれを言ったら・・・
「リーダーあのさ・・・アタシ達って家族、だよね?」
「はぁ? あたり前だろうが・・・」
そう言うと、ポケットから何か取り出し首にかける。それは、貝殻や鉱石でできた飾りだった。
「今日は何の日か覚えてるか? ・・・おまえと俺がであった日だよ」
「あ・・・」
そういえば忘れてた・・・そうだった。私も何か贈ろうかと思ったけど、今手元にには何もない、なら
「ありがとう、これお返しだよ」
彼の顔に唇を当てる。かなり恥ずかしいけど、これが今できるアタシの精一杯の送りものだ。
「なぁ!! い、今?」
「これからもよろしくね? りー・・・アレン!!」
夕陽みたいに赤くなった兄の膝に乗りながら、島を助けてくれた恩人がくれた甘い物を口にした
▲
「・・・おい、この銀髪」
「何、いきなり口調喧嘩で?」
ドラゴンの背に乗り、景色を楽しんでいると端末から不機嫌な相棒が声をかけてくる。それがなんなのか予想はついていたため
「ゴメン、迷惑かけた」
素直に謝る。もしあの商人が狂ってなく、マグマに石を投げる前に私にナイフで襲っていたら・・・
今の私はここにはいない。
「まぁいいや・・・今まで同じ事何回もしてきたんだしな」
「ピィ?」
私の胸に抱きつくちび。首をかしげ不思議そうに見てくる。
「あぁ、癒される・・・」
「おい、聞いてのか?」
「聞いてるよ、あぁ相棒にするならこんな可愛いのがいいな」
「・・・分かった、今後二度と菓子は出さねぇ」
突然の死刑宣告!! え? あの、パルトさんもしかして怒ってますか?
「別に、その可愛いやつと戯れてろこの馬鹿」
「ちょ、なんだそうなるの!? 大体あんたも可愛い姿になればいいじゃないの? 怒るな!! 機械の癖に!!」
ドラゴンの上で不機嫌になった相棒と言い合いになる。夕陽をバックにして空をどんどん進んで行く。
次の目指す場所は西ーー