二十一話 島の魔獣
「待たんか!! こらぁ!!」
只今絶賛追いかけ中。森をさっそうと駆ける奴が私の方を見る。クソ!! とんでもなくすばしっこい!!
「へっへ~!! これはアタシのもんだ!!」
憎たらしい笑顔を浮かべ、アイツが持っている、白くて手の平サイズの物を見せてくる。
「端末返せ~~!!」
「嫌なこった!! これでたらふく食えるんだ!!」
レンに端末を取られ、追いかけているのだった。
○
数分前。
村を案内された時だった。
「水は川や地下水から、食料は森が豊かなんだが……家畜は少ないんだ」
リーダーが説明してくれる。一年以上も島に閉じ込められて生きるのに必要な物が揃っているのは幸いだった。
しかし、ドラゴンのせいで島の生態系が変化してしまい。一部の所に魔獣が住み着いてしまい、動物がいなくなったようだった。
時折魔獣を狩り、食料を調達していたが危険がかなりあるため回数を行うは少ない。
「あぁ!! 肉が食いたいよ!! リーダー!!」
「おまえは少しは黙れ、レン」
どうりで、さっきから見る人達の体型がみんな細いわけだ……こんままじゃ、健康に影響くるよね……
「ねえ、リーダー?」
彼を一言断りを入れ海岸のある所を聞き離れる。言われた方向に走り浜辺に到着し端末を出しパルトに栄養がある物と袋を用意させる。
まえの村では帝国に襲われてて緊急だったけど、極力端末を出す訳にはいかない。一応ロックはかけているが、もし銃器などが奪われればどんな事になるか分から無い。
「よし、これで旅人みたいに見えるかな?」
白い大きなバックを背負い、中にはすぐに食べれる栄養食品が入っている。急いで怪しまれる前にリーダー達の元に走るが……
この時、遠くから私を見る者に気づかずにーー
早速村の人に配り、どう食べればいいのか説明していく。みんな最初は知らない物でためらっていたけど、リーダーが率先して食べてくれたおかげで食べてくれている。
「中々いけるな? これは? 外の世界ではこんな物があるのか?」
まぁ、外と言うか異世界なんだけど……勿論そんな事を言わず相槌を打つ。みるみる内に大きなバックの中にあった食料はなくなり特に子共を中心に行き渡ったようだった。
ちなみに。これらは旅の荷物で、海に落ちてたのを偶然拾ったと言う設定だ。
「げ、もうないのかよ!?」
残念そうにレンが近づいてくる。手には棒を持ってーー私に襲ってきた。
「っ!!」
棒を避けると、今度は私にタックルしてきてポケットを触り
「もらい!!」
端末を手にして森に逃げるレンを
「え? こ、こら!!」
そして、私も急いで森に入り追いかけた。
○
「こらっ!! 泥棒!!」
もう追いかけて数分になるのに、レンは息を切らしてない。まだ私も体力はあるがこのままじゃラチがあかない。
「仕方ないけど!!」
腰に吊ってある小型銃「H&K p2000」を抜く。
弾は麻酔ではなく実弾だが、レンの方に銃口を向けーー
パン
銃声がし、同時にレンが倒れる。
「やっと、止まったか……」
倒れたレンに近づき、落ちていた端末を拾うと画面からパルトが出てきた。
「おい? 今銃声あったが……まさか?」
「まぁ、大丈夫だよ……一応ね?」
「う……あ、ぁ頭が」
傍に落ちている、ヤシの実のような木の実と頭を抑え倒れたレンを見た。
「大丈夫よ、人間はそう簡単には死なないのよ……多分」
「いや、そこ断定しろよ」
人の物と相棒を奪った罰だ、暫らくはそうしておこうか?
「っと、どうやらお客さんみたいだぜ?」
お客? っ!! 背後から何かの影が近づきレンを抱えて離れる。
「何あれ? ……ツル?」
緑の動くムチの先をみるとーー黄色の巨大な花が見え。さらにツルが襲い掛かってきた。
パン パン パン
銃で迫ってくるムチを打ち抜くが、数が多い。
「だったら全部打ち抜いてやる!! 」
箱のような形をし、銃口の下にも穴が空いたサブマシンガン「トミーガン」を二丁出し、放つ。
次次と襲いかかるツルを打ち抜き、その先にある大きな黄色にも弾丸が貫通した。
「これもどうよ!!」
銃口の下にある穴からグレネードが発射され、花に着弾し爆発。火に包まれ燃えて行った。
「なんなのよアレ?」
「今の花は……これだな」
フラワイータ
サイズ 小 中 大
ランク C (中 B) (大 A)
ツルで獲物を捕獲し花の中心に隠れた口で捕食する危険植物。強さで花の色が別れ
黄がランクc
赤がランクB
青が最大の大きさでランクがAで危険。
「さっきのが一番下って事は……」
がさ がさ
辺りの草から音がし、気づけば緑のツルに囲まれ
「ひ、ひやぁぁっぁ!!」
黄色や青の花を見てレンが叫び上げ私に抱きついてくる。体の震えがダイレクトに伝わり、涙を流し私を見上げる。
「い、いやだ!! 食われたくない!!」
ギュ!! と腕に力を入れ離れない、このままじゃ身動きができなのに!!
と連中は、そんな私の都合に合わせずツルが一斉に襲ってきた。
「あぁ!!もう!!」
二丁の銃を連射し弾幕を張り、時にはグレネードを放ち本体を狙い数を減らすがーー
カチン
先に片方銃が弾を切らし捨ててレンを落とさないように支え走る。後から残りがやってきて乱射をする。
「オイ!! そこの木に武器出すから受け取れ!!」
端末から大声が聞こえ、先にある木の前が光に手を伸ばすーー
ボォォォン!!!!!!
「オラオラオラ!!」
台に固定された六本の鉄の筒が高速に周り、銃身の上下にある爆弾が木々をなぎ倒し殲滅していく。
黄色や青の花びらが無残に散り、ツルも粉々に砕けて行く。
「ひ、ひやぁぁ!!」
後ろの木に隠れたレンが耳を必死に抑えている。残念ながらかまっている暇ないので無視。
そもそも、こうなったのはあの子が強盗したわけだし。
この跡、全ての弾が切れるまで嵐は止まず、終わる頃にはまるで戦争跡地のような悲惨な状況になっていた。