十九話 最強生物
巨大イカの足が街に迫り来て、住人達は悲鳴を上げながら逃げ、騎士や街の兵が誘導して、進行を食い止めるため矢を放つ人もいるが効果は見られない。
「まさか、こいつが海の魔獣?」
街を見渡せる塔に上るり端末を見るとデータが表示された
クラーケン
サイズ 大
ランク A
海に住む魔獣の中で最強の部類。九本の足はあらゆるものに巻き付き、鋭い牙で食す。
海で出くわしたら最後、命はない。
クラーケンって、本当にファンタジーな世界なのは嬉しいけど、こんな気色悪いイカはやめてよ……なんで海の奴が地上に出て来るのよ?
こうなったら!! 奴をまる焼きにすべく、火炎放射でも出そうとしたらパルトに止められる。気づいたら、クラーケンから離れた所に何かが動いていた。
双眼鏡でみたら、あの赤い髪の人とその後ろには武器を持った集団が集結していた。
「おいおい? 何する気だ? あの騎士女さん?」
「何だろ……嫌な予感しかしない……ん?」
妙な胸騒ぎがし、急いで塔を降り始めようとした時。クラーケンを改めて見てある事に気づいた。
「1……2、なんで七本しかないの?」
▲
「来たな……魔獣め!!」
ファイはクラーケンを睨みつけ、弓を構える。その隙に構えていた兵達は小さな瓶を投げつけ、中にある液体が付着していく。
ギリギリ!!
弓の絃を限界一杯まで引き、液体を大分被ったクラーケンに狙いを定めた。次第に弓全体が赤く光りやがて、矢が炎に包まれた。
炎の矢を持っても熱さでやけどもせず、力一杯引いた絃を離した。
「ハァ!!」
炎の矢が高速に、確実にクラーケンを貫き、体表にかかった液体が引火して燃え盛る。
グァァァ!!
激しく巨体を揺らし苦し始める海の魔獣。火がどんどん強さをまし全身を焦がす。
「や、やった!!」
「た、倒した!!」
焼かれる姿を見て兵達は喜び、避難していた丘の上から見ていた住人達も大喜びし涙を浮かべていた。
「ふぅ……」
弓を下ろして、額の汗をぬぐい歓声を聞き頬を緩める女騎士。貸し出されたといえど、自分達で民を苦しめていた魔獣を退治でき任務が終わったと力を緩めた時。クラーケンに大きな影が映る。
グガァァ!!
突風。台風が来たのかと思う程の強風が建物を揺らし人を吹き飛ばす。そして巨大な耳に響く生き物の声。
全体が赤く、翼や尻尾を生やし強風を生みだした存在ーー
「ど、ドラゴン……」
力強く翼を羽ばたかせ、燃えるクラーケンを鋭い爪で掴む紅いドラゴンを見て誰も動かない、嫌動けない。
赤い目に恐怖に恐怖してただ一人を残して、皆立てないでいた。
「この!! くらぇ!!」
赤い弓を構え、ドラゴンに向け再び炎の矢を放つ。ドラゴンの翼から生まれる風で矢の早さが遅くなり、体に当たるが傷もつけれてない。
矢に当たった事に気づき、二つの目がクラーケンから赤い矢を放ったファイに変わる。
「あ、あぁぁ……」
睨まれてその場に座り込む彼女には、もはや弓を持つどころか立って逃げる事すら出来ない。
フィアを睨みつけたのに気づき、周りの騎士や兵は一目散に逃げ誰も彼女を助けない。そして、ドラゴンが口を開く。
嫌だ……嫌だ!!
任務を与えられ意気揚々になり、先頭に立ち弓を構える姿もなく。今の彼女はだた涙を流し
「助けて!!」
そう叫びしかできず、燃え盛る炎が確実に迫りーー
「たく、変にカッコつけるからそうなるのよ……」
緑の光を放ちながら、目の前に誰かが立ち。炎が直撃するが消える。
そこにいたのはーー
「さて、ドラゴン狩りと行きますか?」
赤毛で、銀の眼鏡をつけ緑の盾を持った女性が笑を浮かべ立っていた。
▲
数秒前
「七本? 何がだ?」
塔を降りて街中を走りながら、レンズに映る相棒に説明する。塔の上からみたクラーケンには何故か九本あるはずの足が少ない、しかも上から見て気づいたが頭や背には何か大きな傷が、まるで大きな爪でやられたような跡があって……まるで手負いの獣だった。
「おい!! なんかでかい反応が近づいて来るぞ!!」
グァァ!!
空からとてつもない大声が聞こえ、クラーケンの真上に一つの影が
「ドラゴン!?」
真っ赤なドラゴンが飛んでいて、しかも一つ炎の矢が当たる。クラーケンが見える道に入ると赤髪の女騎士が座り込んで動かない。そしてドラゴンは何度目になるか大きく口を開ける動作をブレス攻撃の動作に入る。
ドラゴンに怯え動けない人達がまだおり、このままじゃ焼かれる!!
端末から火気を出そうとしても間に合わないと思った時、緑の光が私を包こんだ。
これは……大地の神殿と同じ……
今回は黒ではなく緑のオーブが目の前に出て形を変える。
中央が銀色で、その周りには緑色をした盾になり女性の前に出る。
カァ!!
強烈な火炎が来るが、盾から緑の巨大な膜が出て炎を抑え込み消す。
座りこんだ女騎士の方を見て
「たく、変にカッコつけるからそうなるのよ……」
そう言って、今度は空にいるドラゴンを見る。
「さて、ドラゴン狩りと行きますか」
片手に重火器を持ち、盾を構えドラゴンを睨みつけた。
ボルケーノドラゴン
サイズ 大
ランク S
溶岩を食べ傷を癒す事ができ火山に住む。時折、獲物を探しに長い眠りから一度起きる。
眼鏡から出てきた情報を見て舌打ちする。コイツもランクがSかぁ……
神殿にいた亀はどんなに爆薬を使っても、高性能の刃物でも傷は付けきれなかった。倒せたのは、いきなり現れた黒いオーブのおかげだ。けど……
「どうやって出すの?」
端末にはオーブを取り出す機能なんて無い。さっきから念じて見たが黒い剣どころか、光も出ない。
ガァァ!!
ドラゴンはブレスが効かなかったのか、今度は私達の方に近づいて来た!!
手に持つRPGを構え撃つ。
ドォン!!
直撃させ、バズーカを捨て女性を立たせる。その場から急いで離れると後ろから奴の声が聞こえた。
「は、離せ!!」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょが!!」
何故か私から離れたたがるが、私の方がそうしたい。けど、放置すれば危険なため離す訳にはいかない。
「少しは周りを見なさいよ!! 海の魔獣を燃やした時だって、街に火が回る事考えてやったの!? 」
クラーケンにぶつけたいた瓶の中身。火花程度でも引火しやすい液体で、ルナ達を助けた際に引火したやつと同じだった、
そんなのが大量に掛かって火を使えば手負いの魔獣でも無事では済まないし、もし風向きが悪かったりしたら家に燃え移り被害が拡大する所だった。
「貴様には関係ない!!」
「関係ないじゃない!! 貴方騎士でしょうが!! 魔獣を倒すだけじゃなくて、民間人の事も考えてやりなさいよ!!」
一喝して黙らせ、二人で角を曲がり建物の影に隠れる。
撒けたか? と思ったらドラゴンの反応が近づいてきた。これは……上!!
「伏せて!!」
二人で地面に伏せると、建物が音を立てて粉砕し大きな爪があった。
グルルル……
唸り声を上げ、私達を睨む。そして腕を伸ばしてくる。マズイ!!
「逃げなさい!!」
彼女を押して逃がし、代わりにドラゴンの手が私の体を掴み、動けない。
「ぐっ!!」
どんなに暴れても逃れられず、しかも手もふさがり武器も出せない。
そして、ドラゴンは大きく唸り声を上げ私を掴んだまま空を飛んだーー