十八話 海の魔もの
「海だ!!」
バイクから降りて靴を脱ぎながら走り、青く綺麗で波を打つ海に足をつけると、冷たくて気持ちよかった。
「あはは!! パルト!! 気持いよ?」
「見れば分かるって……つか、俺落とすなよ?」
片手に端末を持ち、空や海。ここから見える港街を写真で撮る。どうせなら、テレ達と記念写真でもすればよかったな……
「で、次の目的地は……ここからさらに南みたいだな?」
画面にダルマを横にしたような地図が浮かび、大きな胴体部分が今いるガイスト王国が治める領地。そして、左にあるダルマの小さな頭部の大地がグリーディア帝国だ。
「帝国って事は……」
「村を襲ったのはこいつらだな、どうやら連中もエルフについて何かしているようだな」
頭の中に、炎を出し不気味な殺気を出す男を思い出し、二度と会いたくないと強く思った。あと筋肉の男にも。
「だったら……さっさとした方がいいかな?」
マップを操作し、今いる海からさらに南。いくつもの孤島が並び、その中にある島の一つ「火の山」と書かれ、赤いオーブの絵もあった。
「それじゃ、港に行って異世界の船の旅でも楽しもうかな?」
足を拭いて靴を持ち、バイクの所に戻る。その際「船出していけよ」って突っ込まれたが、まぁいいじゃないか!!
○
「はぁ!? 船が出ない!?」
船乗りらしき人に船はいつ出るのか聞くと、いきなり予定が崩れてしまってテンションが落ちた。一応理由を聞くと
「最近、魔獣の動きが活発になっていて、何時の間にか海に見た事のないような巨大な魔獣が出たから……だってさ……」
「はー、そんじゃ、今日はここで泊まりか」
既に日が上り、仕方ないため街の宿に泊まる(お金も端末から出せた、下手したら経済混乱させちゃいそうで怖い)
バイクは流石に街に入れる訳にはいかないのでパルトに直させた。
「んで、明日討伐作戦が行われるから、出せる船は全てそれに使うんだと……これならボートでも出して行けば良かった……」
「いや、自分で船乗るって言った癖にそれか?」
「あのね、バイクばかり使ってたらお尻がいたいの、しかも操作は私がしないといけないから、景色を楽しめないわよ……」
ベッドにゴロゴロしお菓子を食べる。現代食を口にしたのは久ぶりで何年も口にしてなかったような懐かしさがあった。
「ならよ、海のバケモンにわざわざ出会わなくてもいいように、空から行けばいいんじゃないか?」
「あ、それ無理っぱいよ?」
空からの移動がダメなのについて聞いてくるパルト。実は船乗りの話しには続きがあって……
「出る見たいなの……海の魔獣とは違う……」
▲
「ドラゴンだと?」
ガイスト王国城、会議部屋。
青髪の男、ネロが隣に立つテールに目を細め報告を受けていた。
「はい……どうやら海の魔獣の他にも、火山島からドラゴンを見たと言う報告が多数あります」
テールの発言に、席に座る者達が騒ぎ始めるがすぐネロが静める。
「皆落ち着け……確かにその話しが本当なら見過ごせないだが、今は帝国の動きもあって下手に動けない……そこで、ファイ」
ネロの傍に立つ赤髪の女性が返事をし、前に出る。既に彼女の顔は緊張でかたまり、声も少し小さかった。
「ファイ副騎士長。この件を任せるがいいか?」
「っ!? は、はい。お受けいたします!!」
背筋を整え、綺麗な礼をするファイ。彼女にとってネロは憧れで彼直々の命令を受けて内心興奮していた。
「そこで、この任の間。魔法具を貸し出す」
部屋の隅に置かれた箱を見張りの兵が取り出し、ファイの前で開く。
中には赤い色をした弓が入っており、慎重に手の震えを抑えながらファイは受け取った。
「その魔法具は火の力を宿している弓だ。海の魔獣に出くわした際……例え討伐が成功しなくても、必ず戻ってこい、いいな?」
ネロの言葉を受けて、彼女は深々と頭を下げ。その場の会議は終了し解散。そして討伐の兵がファイを中心に結成され動き出す。
目指すはとある港街……アンがいる街だった。
▲
「さて、どうやって火山の島に行くか……」
翌日。宿を出て、浜辺に立って海を眺めながらどう行くか考える。今の所プランは
① 船を待たずボートを出して行く。
② 海の魔獣を撃退して島に行く。
③ 別のオーブの所に行く。ここは、パス。
④ 空から行くか……
「ここでうだっても仕方ないよね?」
ドラゴンが出ないのを信じ、空にしようか……と考えていたら。同じように海をみる人が何人かいた。
「? なんだ、あいつら? どこ見てんだ?」
「さぁ……聞いてみるかな?」
海を見ている人の中で、私より一回り小さな男の子と女の子に話しをかけ、どうしてみんなが海を見ているのか聞く。何故か悲し顔を浮かべゆっくりと話てくれた。
「ここからずっと先にある島。昔僕らそこに住んでたんだ……けど島におっきなやつが暴れだしてから住めなくなって……この島に逃げてきたんだ……」
「だけど……そこにも人がいて……私の兄弟がそこに……取り残されたんです……」
次第に顔に影を出し涙をためる二人を親らしき人物が慰め連れて行った。
「ねぇ……これって」
「ドラゴンが島で暴れて、海の奴のせいで故郷に帰れねぇんだな……で、どうする?」
パルトは画面一杯に ? のマークを出し聞いてくる。分かってる癖に……
「ねぇ、その端末って魔獣のデータとか見れるんだよねだったら……」
早速作戦を立てつつ、街からから出ようとするが入り口の方が何か騒がしかった。
▲
入り口にはいくつもの馬車が並び、王国の兵が整列していた。先頭ではファイがこの街のリーダーらしき人物と何か話すが雲行きが怪しい。
「ですが……まずは準備が……」
「それならできている、この街の兵と我が騎士の力……そしてこの魔法具があれば……」
赤い弓を手にファイが呟き周りから驚きの声がでるが気にして無いようだった。そして、リーダーや街の兵を集めどこかに移動するのだった。
「あれが魔道具……」
「始めてみた……」
「騎士の中で一部の者にか使えない武具……」
後に残った街の人は魔道具を持った彼女を見て、彼らなら何とかしてくれる と希望を抱き笑を浮かべるのだった。
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「危なかった……」
前に牢屋で倒した女性が街に入って来たのにびっくりし、急いで道を引き返し適当な建物に入ってやり過ごす。
「いや~まさかあの女に出くわすなんてよ? 運悪いな? おい?」
「そうだね~ ところでさ、魔法具って何?」
建物から出て人気のない小道を歩く、一応話しは少しだが聞こえ(唇読んで)その中で、赤い弓を見て周りの人が驚いたのを見て普通じゃなかった。
「あぁ……魔法具……出たぞほれ」
魔法具。
かつて古代に生きたエルフが作り出した武具。形状や能力は様々で、使用した者は魔法を使う事ができ、さらに失われた技術で作られ生産ができない為国宝扱いされ一般での所持は禁止されている。
「それが、あの弓ねぇ……」
そんな武器を出したって事は、海の魔獣の討伐で来たのだろけど……さてどうしたものか?
先に手を出して、途中で邪魔される可能性はある。かと言ってあの騎士の数で殺れると言い難い。
「仕方ない様子みよ……」
ドォォン!!
突然、街が揺れ急いで小道を出る。
「な、何あれ!?」
港の方から、巨大な何かが出て建物を破壊し海から白い体を持った
「い、イカ!?」
そう、いくつもの足を持ったとんでもない程大きなイカが海から出て来るのだった。