十六話 番人
入り口の傍にある階段を降り辿りついたのはーー
「うぁ……」
「ここは植物園か?」
木が沢山生えて、見た事もないような植物が壁や天井に咲き乱れる。天井には巨いくつもの電灯のおかげでこのフロア全体を照らしていた。
外にいるような錯覚がしたが気を取り直しフロアを進む。片手に銃と端末を出し倒れた大木を足場にして川を渡る。
「……誰もいないのかな?」
「そうみたいだぜ? 生体反応はない、完全に無人だな、どのくらい放置してたんだよここは?」
草木のあいだを飛ぶ虫をよく見るが、天井には鳥も一匹すら影もない……なんだか寂しよ、ここは……
やがて入り口から見えた、下に続く階段に着いて降りる。障害もなく進めたけど次のフロアはどうなのか分からない。
「相棒、銃を出しときな。それと端末をスコープにつないどけ……どうやら次からが本番みたいだぞ?」
降りている最中にそう言われ。ハンドガンタイプの銃の弾を見て、手榴弾が腰に吊ってあるのを確認した。念のためAK47も出し安全装置を外す。
それから、銀の淵をした眼鏡を取り出し装着する。起動音が流れ、片方のレンズに水色をした猫もどき、パルトが姿を現す。
「よし、接続完了だ。これで端末出さなくてもサポートできるぞ」
「OK……しっかりサポート頼んだよ? 相棒?」
この眼鏡はパルトにも私が見ている物が流れ、そこから彼に脱出ルートの索敵等を行ってもらう装置で、元に世界でも何度か使っており万全を期し降りる。
地下二階。
上の植物園と同じ草木で埋め尽くされていたが、それだけでは無かった。
四本足で歩く金属の体を持った狼。
体が小さく、草木の間を素早く動くトカゲ。
空を飛び回る鳥のような生き物。
それらが、うようよといたのだった。
「……今度は動物園って事?」
私がつぶやいた瞬間。それらの動物が動きを止めて階段にいる私を見る。そして、目の部分を赤く光らせさっきとは違う動きをする。
「どうやらこいつら、ガードロボ見たいだな? もう警戒モードに入りやがった、これ以上行けば攻撃されるぞ、どうする引き返すか?」
赤い光を出し、私を警戒してくるロボ達。奴らの先、部屋の奥には一つの台だけがあり他には階段どころか扉すらない。
となると……
「仕方ないけど……作戦Bよ!!」
Ak47を連射に切り替え引き金を引く、銃口から連射で火を出しつつ走る、走る走る!!
機械の狼が、生の狼みたいな声を出し口を近づく。他にも小さなトカゲは体から電気を出し走り、上にいた鳥(ワシみたいな、けど機械)が上から襲ってくる。
銃弾が金属体を打ち抜き、次次と倒れるがそれでも侵入者である私を追いかける。中には部位を破壊してもなお後ろからくる機械兵もいた。
「ウォォォォ!!」
雄叫びを上げながら、銃を乱射していたら突然銃が黙る。弾切れ、飛びかかる狼にライフルを構え、バッテングの要領で叩き飛ばし銃を捨てて走る。
バチバチバチ
嫌な音を立てて木上から落ちてくるトカゲをハンドガンで打ち抜き、当たらなかったのは避けて走る。
「シャァァ!!」
「上だ!! しゃがめ!!」
台まで後少しの所で、相棒の声がし鳥もどきが急降下してスライディングをして体をすべらせギリギリで避け、立ち上がってジャンプして台にある一つのボタンを強く叩く。
「これで!!」
腰につけてあった手榴弾の安全ピンを全て取り、追いかけてくる機械達に投げ爆発が起こる。爆風と熱風が私に迫ろうとした時。目の前に壁が現れ防がれ真っ暗になり眼鏡から光が出る。
「……やばかった」
本当……死ぬとこだったよ……
額の汗をぬぐい、肺に溜まった息出し切り。新しい武器を出すように言い調達する。すると足元が揺れて動き始めた。
「な、何?」
「どうやらこれはエレベータ見たいだな……暫らくはここで待機だな?」
「? なんでエレベーターってわかるの?」
「いや、実はよさっき相棒が突撃している時に、何故かこの神殿のマップが送られてきたんだが……」
何それ? 入った後に地図って遅すぎでしょうが!! まぁ、ここまで一本道だし、あったとしても意味無かったか……
片方のレンズにマップが表示され、今私がいるところが▲マークで表示されている。さらに、これから先に行くフロアには赤い○が、うようよと動き周っていた。
「この赤い○は?」
「さっきの奴らだ、奴らはこの神殿をガードする魔獣だ。ちなみにランクは全部C見たいだな」
なんでここにも魔獣が? と気になるがそれは後だ。今分かったのは地上にいたウルフはランクEで、今撃った奴らもCの魔獣って事はライフルだったら一撃って事だった、じゃあ……
「この間のでかいトカゲはランクってどのくらい?」
パルトに聞くと、レンズの表示が変わり巨大なトカゲが出る。余り見たくないな……て、ランクB!? バイクとか犠牲にしたのにあれで? てっきりAぐらと思ってたんだけど……
「ちなみにグランリザードは兵が百人いないと倒せないらしいぞ?」
あ、じゃウルフで苦戦していたあの人達弱いんだね? と内心で馬鹿に(牢屋に入れられたので)していたら、エレベーターが動きを止め、壁が動く。
目の前に現れた通路にもトカゲと機体の狼が赤い光を出し警戒し始める。
「……ねぇ、オーブってどこにあるの?」
「まぁ、RPGの定番でいえば、最新部じゃねぇか?」
定番ねぇ……それって、あれでしょ? ボスとか出るフラグでしょ?
「マップもあるから最短で行けるが……おい?」
「ねぇ、RPGならさ……もうRPGで行こうか?」
○
ドォォォン!!!!!!!
バァァン!!
ドカ!!
バン!!
「げほ!! げほ!!」
合金で造られ盾の後ろに隠れるが、大量の煙と粉塵で息苦しくなって口を抑える。辺りを見れば機械でできた魔獣体の残骸や瓦礫が大量に転がっていた。
「おいおい!! やりすぎだろうが!? こんな狭いとこでそんなん使うな!?」
相棒が言ったそれーー足元に置いてある大きく細長い筒「RPGロケットランチャー」を見る。
「だって、あのまま普通の銃でやってたら私がしんどいし……」
「こんな密閉空間でか!? この建物が頑丈だったからいいものの、普通だったら瓦礫に潰されて終わりだぞ!! 」
「だから!! ちゃんと計算したって!! それに、きちんと遮断物もおいたんだし!!」
「ざけんな!! 何がRPGで行こうだ!! だいたいおまえは……」
口やかましい相棒を無視しRPGの弾を詰め、穴を進んで行く。ここまで来る際に最短ルートで破壊してきたので、もうすぐ最深部だ。
「って、聞いてんのかよ?」
「うるさい!! さっさとナビする!! ほら、オーブの部屋はどこ?」
怒鳴って黙らせ、パルトは一度黙るがすぐにナビを開始した。こんなやりとりは既に何回も、何十回もしているので彼を黙らす方法は既に知っているのだ。
「俺もあめぇな……」
「ん何か言った?」
「別に……ほれ、そこ右でそこの扉の先だ」
言われた通り、右に曲がり一つの扉があるが錆ついて開かない。また爆発させたらうるさく説教されるので……
「たららったら~~対戦車チェンソ~~」
このチェンソーはただのチェンソーじゃないんだぞ? なんと、折りたたみができてしかも軽量!! いつでもどこでも持ち運びが可能で、消え味は……
キイィィィィ!! ズシャ!!
ご覧のとうり!! 十秒もかからず、錆び付いた扉がバラバラ!! これで入れなくなったご自宅にいつでも入れますよ!! しかも、新素材の刃でどんな硬い物でも切れ味は大丈夫!!
「なんて素敵な商品でしょうか? ねぇ、パルト?」
「とりあえず、それ電源切れ、うるさい」
冷たくあしらわれ、仕方なく電源を切り折りたたむ。あぁノリの悪い奴め……
「で、ここのどこかにオーブが?」
中はどでかい、まるでスポーツの大会で使われる体育館以上の広さと、でかい部屋に入る。部屋の中央には神殿の入り口に似た、巨大な甲羅があって。その奥には緑の光が見え近づくとーー
「あっ、あった!!」
それは小さく卵のように丸く、今持っている黒のオーブに似た玉だった。早速オーブを取りに走った時、地震が起こる。
「っ!? 相棒!! その甲羅から離れろ!!」
言われた通り離れ、甲羅に異変が起こる。四つの足部分から巨大な何かが出て、さらに、前後の穴からも何かが出てきてーー
「か、亀!?」
甲羅から出て着た亀は、地響きをたてながらオーブのところへ行き、首を伸ばし
「え?」
ぱくん
飲み込んでしまうのだった。
「え? え?」
突然の事で頭が追いつかないでいると、亀は私の方に体を変え赤い目をして私を睨んでくる。
「来るぞ!! 相棒!!」
亀はゆっくりと大きな地響きをたてて、私に近づくのだった。