十三話 孫娘
「怪我のある人はそっちへ!! 食料はまだあるから大丈夫ですよ!!」
レンガの家以外、全ての家が燃やされた村に幾つかのテントを張り、けが人には薬品を、空腹な人に食料を配り行く。もちろん、それらは端末で出した物だ。
「ありがとう……アン」
食料を子供に配っていたテレが私の前に来て言う。彼女の表情は少しだが笑顔が見えた。
「いいよ、今は村の人達を何とかしないとね?」
元気つけるため笑顔で言い、再び救済活動を再会する。幸い死人も重症な人もおらず、動ける人達の助けもあってテントもかなり張り(薬品の説明も)終えて日がくれ今唯一残った村長の家にいる。
「本当に助かった……礼を言うぞ、若者よ……」
「気にしないでください……それよりも。村の人が無事で良かったですね」
テーブルを挟んで、椅子に座り茶ヒゲの老人を見る。昨日大男に人質にされてたがどこも怪我をしてないようで安堵した。
「おじ……いえ。村長。お願いがあります」
村長の後ろに控えたテレが声をかけ、一端言葉を切り顔を上げ
「大地の神殿の事をアンさんに教えていただきたいのです……」
テレは視線を私に変えて、目線で何か伝えて来る。それがなんなのか分かり、赤毛のつけ毛をとる。
「!! なんと!! その髪は!!」
突如、さっきまでと違う様子で目を大きく開けて私の髪を見て動揺してくる。本当に、一体なんだというんですか?
「まさか……そなた……エルフの子孫……なのか?」
エルフ? エルフって、耳が尖ってて、ゲームとかで顔がとんでもなく綺麗に出て来る、あのエルフ?
「あの……エルフって何ですか?」
私が二人にそう聞くと、何故か驚いた顔をされ気まずくなる。テレからどこから来たのか言われ、「人との交流がすくない所から」とごまかす。二人は納得できない様子だったが、村長が話しを切り上げる。
「よろしい、ならばお話しましょう……エルフについて……」
エルフ
かつてこの世界に最初に生まれ、今では考え切れないような物を作り世界を手にしていたはるか古代の者。
彼らは皆、綺麗な銀髪をしており。それがこの世界で失われた力「魔法」を使用できる証でもあり、その力は世界をも動かしていた。
世界をその手に収め。彼らは永遠の安息を、平和 を約束されていた。
しかし、ある出来事により。それらは崩壊し彼らは滅んでしまい一度世界が滅ぶ。
残された僅かな……作りあげた力で生き延びたエルフは崩壊した世界を再生し、新たな種族「人」を創りだす。人はエルフと違い魔法が使えず、力もないが世界を滅ぼす事がなく、彼らを生み出してからエルフ達はこの世界を去り長い長いとても長い月日が経ち今に至る。
「そう、その銀髪はエルフの……魔法を使える者の証なのだ」
「……私が、エルフ?」
魔法 その言葉に見覚えがある。いつも危険になった時何かに使う。私が念じたりしたら起こるアレの事だ……
最初は病気か何かかと思い調べたけど、何も分からず超能力だとばかり思っていた……もしかすると……
「アンさん?」
テレが声をかけて来て思考を打ち切り、話しに集中する事にした。
「そしてだが……この村のそこににある大地の神殿はかつて存在した、エルフが残した建物と言われておる……だが、誰も中に入った者がいないのだ……」
それは危険だから入らないかったとからか? と聞こうとするとテレが首を横に振る。
「違うんです……誰も入らなかったのではなく……入れないんです……神殿には入口が見当たらないのです」
入口が、ない?
「左用。これまで王都からの学者等が調べたのですが……誰も入口の手がかりすら見つけられずにいたのです……ですが、その髪を持つあなたなら、もしや……」
その後、神殿の場所を聞いて。すぐにでも行こうとしたが、既に夜になってしまいそのまま村長の家に泊まる事になり、夕飯を済ませ軽く体を拭いき。二階の客室でベットに腰かけている。
「アンさん……今いいでしょうか?」
端末を操作していると、扉の方からテレの声が聞こえ大丈夫だと伝えると中に入ってくる。
今の彼女は、緑のパジャマに着替えておりさっき寝巻きだと言い渡し早速着替えたようだ(私は半袖のシャツと半ズボン。足にナイフを吊っている)
「すみません……その……」
何か言いにくそうなテレ。そして彼女の手には枕らしき物があった。と言うことはーー
「一緒に寝る?」
私が言うと、テレは黙って頷きベットに近づいた。
○
(全然眠れない……)
明かりを消し、夏の熱さのような中。一つのベットに二人も入ればそれはもう
(こんな熱い時にきて、もう!!)
傍で目を閉じるテレを起こさないように動き、端末を出しアイスノンとタオル。さらにスポーツドリンクを取り出した。
「……エルフね……」
村長の話しを思い出す。白髪は魔法を使える彼らの証ーー
私は確かに父さんに拾われて育てられた、けど実の娘ではない。
それじゃ、私は……
「ふぁ~」
と考えていたらベットからテレが起きて私を、正確には手に持っているドリンクをまじまじと見た。
「……飲む?」
私がそう聞くと、彼女はすぐに首を縦に振るのだった。
笑わわないようにして、ボトルでは飲みにくと思い、コップと新しいボトルを出して注いで渡す。
ゴクッ ゴクッ
「ぷはぁ~美味しい……」
どうやら完全に気に入ったらしく。一気飲みしてすぐにコップに移しこむ。そんなに飲んだら近くなるのに、トイレが。
「あの……これも、魔法ですか?」
「え? いや……これは……まぁ一応、そうかな?」
物を取り出したのは、別に私の力ではなく。この白いタブレットなのだが、何て説明したらいいのか分から無いため曖昧にしか答えきれない。
「すごいですね、私も魔法が使えれば……村長に恩返しもできるし、何り……
本当の両親だって探すこともでいるかもしれない……」
「本当の……両親?」
テレはコップをテーブルに置いて、窓まで歩き開ける。部屋に心地のいい風が入り空には綺麗な星空が輝いていた。
「実は私、おじいちゃんの本当の家族じゃないんです……村の人が話ているのを聞いたんですけど……
おじいちゃん、赤ん坊だった私を森で拾ったって言ってたんです。しかも、私を拾う前に、娘さんと婚約者さん、さらにお孫さんが事故で亡くなってすぐだったみたいで……」
私に背を向けて、淡々と話しテレ。気のせいか彼女の体が震えていた。
「だから、私。そのお孫さんの変わりなんです……あの人は、私に育てられて今まで笑顔も見た事ないんです……最低の孫ですね!!」
今度は私の方を向いて笑顔を向ける。けど、薄めになった目から小さな雫が一滴流れていた。
「だから、お願いがあるんです……明後日の夜、神殿の前で私が巫女になって行う儀式があるんです……その儀式が終わったら……」
次第に雫がこぼれ落ち、一度目を吹き上げて彼女はーー
「私も一緒に連れてってくれませんか?」
無理やりな笑顔を見せ、星空を背にし緑の髪が風に揺られたテレは私にそう伝えるのだった。
やがて時間が経ち太陽が上り、朝が始まるのだった。